2025.04.10

自動車部が女子団体、個人で学生日本一
武内結選手(法4)、古川佳愛選手(法4)が快挙
2024年度全日本学生自動車運転競技選手権大会

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自動車部の武内結選手(法4=大会優勝時3年)、古川佳愛(かえ)選手(同)が2024年度全日本学生自動車運転競技選手権大会(11月17日、三重・鈴鹿サーキット)の女子団体、個人を制覇した。団体優勝は2017年以来7年ぶり。2人は「一年の集大成の大会で勝ててうれしい。ほっとしました」と振り返っている。

全日本学生自動車運転競技選手権を団体、個人とも制覇した武内結選手(右)と古川佳愛選手=多摩キャンパス

☆ モータースポーツ「フィギュア」

 

一辺が5~6メートルの正方形エリア(ボックス)内での転回や切り返しの技量、クランクやS字路、狭路のスラロームなどでの運転技術の正確さを競い、複数のボックスがある周回コースでの走破タイムを争う。

 

コース上では、たとえば「ボックスに車両のフロントから進入し、この位置にリアから止め、リアからボックスを出る」などの規定通りに走行し、タイヤがエリアを仕切るラインを踏んだり、障害物として疑似に設けられた缶を倒したりすると減点。各校の選手が同一の車両を使って順に走行する。

 

図形や形を意味する「フィギュア」と呼ばれ、舗装路のコースを競技車両が単独で走行するタイムを競う「ジムカーナ」、未舗装のダート路でタイムを競う「ダートトライアル」との計3種目の総合点を争うのが、全日本学生自動車連盟年間総合杯(全日本総合杯)である。

前年のリベンジ果たす

大会で行われたのはフィギュア(別稿参照)と呼ばれる種目。中央大学は武内選手が女子・乗用の部、古川選手が女子・貨物の部でともに1位となり、ポイント制の団体でも優勝を飾った。

 

2人は2023年大会で団体2位(個人は武内選手4位、古川選手2位)に終わった悔しさを忘れていなかった。「(前年は)小差で負けた。今度こそ」(古川選手)と挑み、見事に雪辱を果たした。武内選手も、「(前年の大会では)ゴール間際で缶(障害物)に触れ、30点減点という自分のミスで負けた。リベンジしたかった」と期するものがあった。

 

実は武内選手は今回も、ゴール付近に置かれた缶を過ぎる際、「危ない瞬間があった。去年のことが頭をよぎった」という。斜めの車体まっすぐに修正し、タイムはロスしたものの、慎重にゴールした。「去年の自分なら強行突破して缶に当たっていた」と話す。さらに「ひたすらタイヤとミラーを見てハンドルを回すフィギュアは、一つのミスが響くスポーツ。今回はノーミスで行けたことが一番大きかった」と勝因を分析した。

継続は力「やればやるほど上達」

武内結選手(写真提供:自動車部)

乗用の部の車両は、左前方が見えず、運転席からの光景とアクセルの踏み具合によって車を自在に操れるよう、ひたすら体にしみ込ませるように覚える。加えて、貨物の部の車両はハンドル操作にパワーと持久力が一層必要となる。いずれにしろ、どちらも練習あるのみで、「継続は力。誰でもやればやるほど上達する」(古川選手)というスポーツだ。

 

公式戦では、審判が競技車両に同乗し、観客からの声による指示の有無、急ブレーキやタイヤの空転の有無のほか、ハンドルやブレーキ操作を手順通りに行っているかなどを細かく判定するという。武内選手は「ボックス内で規定通りに一発でピタリと止められたとき、気持ちよい達成感を覚えます」と、競技の魅力、醍醐味を話している。

 

自動車部の女性部員は現在2人だけ。中央大学附属高校時代も同じハンドボール部で活動し、「大学では何か新しいことで日本一になりたい」と希望を抱いていた古川選手が、武内選手を誘って入部したという。古川選手は父親が車好き、武内選手は自身が幼い頃から車好きで、自動車部との出会いは必然だったのかもしれない。

学生最後の年「全日本総合杯の獲得を」

古川佳愛選手(写真提供:自動車部)

アスリートとしてのお互いの持ち味、特長を尋ねると、武内選手は「本番に強いタイプ。私なら怖くて躊躇(ちゅうちょ)してしまうような場面でも(アクセルを)踏んでいける」と、古川選手を評価。古川選手は「丁寧で慎重なハンドルさばきは私と真逆だなと思って見ています」と、武内選手への信頼感を語った。

 

2人とも、課題は「練習での走りを本番でしっかり再現すること」と、さらに高みを目指すつもりだ。「指導してくれた先輩方に恩返ししたい」(古川選手)、「自動車部のために結果を残したい」(武内選手)と、責任感をもって部活動に打ち込んでいる。

 

武内選手は「大学生になってこんなに部活動に熱中できると思わなかった。フィギュアは地味なスポーツかもしれないが、奥深さを感じる」という。古川選手は「学生最後の年は、全日本総合杯を自動車部で男女とも取りたい」と、2025年度の目標を掲げている。

古川佳愛選手、武内結選手(前列左の2人)の団体、個人の優勝を喜ぶ自動車部員ら=2024年11月17日三重・鈴鹿サーキット(写真提供:自動車部)

〈取材後記〉自動車部でともに歩み、育んだ信頼の絆
学生記者 合志瑠夏(経済4)

自動車部の武内結選手と古川佳愛選手は、中央大学附属高校時代からハンドボール部でともに切磋琢磨した仲間であり、友人同士だった。競技は異なるものの、スポーツを通じて培った絆は今も深く、互いを大切に思い、信頼し合っている様子を感じることができた。

 

武内選手は、「本番に強い」と古川選手を評価し、さらに「自分なら(アクセルを)踏み込めない場面でも、しっかりと踏み込める」と、強さと勝負度胸に感心していた。一方、古川選手は、「一生懸命に取り組み、自分なら焦ってしまうところでも、丁寧に走ることができる」と武内選手の良さを語った。互いに照れくさそうに顔を合わせながらも、気の置けない関係であることを感じられた。

 

武内選手の「乗用の部」では、車両の左前方が見えず、練習中から目の前の景色とアクセルの感覚を体に繰り返し、しみ込ませていくという。今回は「練習よりタイムが少し遅いと感じていた」と振り返ったが、それでも自動車部に貢献したいという責任感から、最後まで落ち着いてハンドルを操作したという。

 

古川選手の「貨物の部」は、ハンドル動作に一層のパワーと持久力を求められる。周囲の勝利への期待から来るプレッシャーで、2人とも緊張する瞬間はあったものの、古川選手は「車に乗れば平常心に戻ることができた」と話した。自動車部で指導してくれた先輩たちの期待に応え、「恩返ししたい」という強い気持ちで競技に挑んでいるそうだ。

 

部活動で培われた経験は、2人の日々の行動や考え方にもよい影響を与えている。武内選手は「周囲をよく見て行動することを心がけてきた。それが部活動以外の環境でも役立っていて、きびきびと行動できるようになった」と明かし、古川選手は「物事の先を読んで考える力が身についた。たとえばアルバイト先で、自分の勤務時間後のスタッフのことを考えて、準備や業務に当たれるようになった」と話している。

 

ふだんはなかなか経験できないことに挑戦できるのが自動車部の魅力だと思った。「何かに熱中する楽しさを実感してみたい人」「大学で新しいことに挑戦したい人」は、ぜひ自動車部へとアクセルを踏み込んでみてほしい。

〈取材後記〉「大学から新しいことに挑戦」 フィギュアはぴったり
学生記者 松岡響紀(経済2)

ドライブが好きな私にとって、自動車部の取材は非常に興味深いものとなった。多摩キャンパスの自動車部ガレージは、本格的な整備場や、取材をしたその奥の室内から、どこか車を連想する香りを感じた。なるほど、洗車待ちの際のガソリンスタンドの待合室の香りに似ていると思いながら、取材が始まった。

 

今回、自動車部の武内結さんと古川佳愛さんは、カーレースのようにスピードを競うのではなく、「フィギュア」と呼ばれる運転技術の正確さを競う種目で優勝を勝ち取った。どのような種目かを聞いて、自動車教習所で練習した「クランク」「縦列駐車」を連想した。一見すると、「地味」なスポーツに思えてしまうかもしれない。しかし、2人の話からその魅力に迫ることができ、非常に興味深かった。

 

中でも印象的だったのは、ポテンシャルや経験値が結果に出るラリーと違い、誰でも練習すればするほど上達し、短期間で結果が出やすいというフィギュアの特徴、性質だった。2人とも結果を出すために日々、試行錯誤の連続だという。好不調の波が運転に表れやすいといい、自分の技術とメンタル面をいかにコントロールして戦えるかが勝敗を左右する。

 

体力面も精神面も重要なスポーツは数多いが、「大学から新しいことを経験したい」と考えている人にとって、フィギュアはぴったりだと思った。現に2人も同じ高校のハンドボール部で活動し、中大入学後に自動車競技を始めたそうだ。チャンスは誰にも平等に与えられているといえるだろう。

 

2人は練習での取り組み、大会での心構えなども教えてくれた。活動のモチベーションについて「部のために結果を残さないといけない」(武内選手)という言葉から、自動車部や仲間への責任感の強さが垣間見えた。言葉の端々から、お世話になっているOB、先輩方に対する尊敬の気持ちが感じられ、自動車部の団結力の強さも認識することができた。

 

自動車部はアットホームな雰囲気で、なおかつ礼儀やマナーを徹底する環境が保たれているのも良さであり、強みといえるのではないだろうか。

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