2025.03.28

やり投げをとことん強化、 苦手種目を克服しインカレ優勝
目指すはオリンピック出場
七種競技 女子陸上競技部・松下美咲選手(文4)

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女子陸上競技部の松下美咲選手(文4)が、2024年秋の日本インカレ(第93回日本学生陸上競技対校選手権)の女子七種競技で優勝した。前年の日本インカレで2位だった悔しさを胸に、苦手のやり投げを徹底して強化し、ついに学生日本一となった。左ひざのけがや優勝への重圧を感じる中で、最終学年でつかんだ栄冠に「インカレの雰囲気を楽しむつもりで挑みました。本当にうれしい」と笑顔で語っている。(記事中の写真はすべて、女子陸上競技部OGの服部由美子さん提供)

日本インカレでやり投げに挑む松下美咲選手

最終種目の800メートルを走り切るまでわからない僅差(きんさ)の争い。2位の水谷佳歩選手(中京大)との総合得点の差はわずか12点だった。応援席からの「美咲、おめでとう!」の声で、やっと優勝を確信できた。

 

勝因を尋ねると、38メートル98を投げて前年より4メートル53も記録を伸ばしたやり投げを挙げた。種目ごとの独自の数式による計算では、前年から87得点を加算した。やり投げの強化が実り、勝利を決定づけたといえる。

 

七種競技のうち苦手なやり投げ、砲丸投げの克服が、勝利に近づく道と考えていた。2位で悔しい思いをした関東インカレ(2024年5月)の後、やり投げを強化しようと、男子十種競技の日本記録保持者、右代(うしろ)啓祐選手(国士舘大准教授)の指導を仰ぎ、夏場に1カ月間、投てき種目が強いことで知られる同大で“武者修行”に臨んだ。

 

右代選手の作った練習メニューをもとに、やり投げが得意な同大の岡泰我(たいが)選手(2024年日本インカレ十種競技2位)の動きをつぶさに観察し、岡選手からも、やりを遠くへ飛ばす体の動かし方などをマンツーマンで指導された。

ライバルも驚く記録の伸び

けがをしている左ひざの痛みもあり、夏場は走る練習を控えめにして、やり投げの“特訓”に集中的に取り組み、効果はてきめんだった。体脂肪率は下がり、筋力が3、4%アップした。やりが風に負けない良い軌道を描いて飛ぶようになったという。

 

日本インカレで前年を大幅に上回る記録を出したとき、ほかの大学の選手たちも「どうしてそんなに(遠くまで)投げられるの?」と驚いたり、記録の伸びを褒めたりしてくれた。やり投げで逆転を狙っていたライバル選手も脱帽するほど、やりは高く弧を描いて飛んでいった。

 

もう一つ、勝因として、走り幅跳びで踏み切る足を変えたことが挙がる。中学時代から左足で踏み切ってきたが、2024 年5 月の関東インカレから右足で踏み切るようにした。理由は左ひざへの負担を軽くするためだ。

 

練習不足から関東インカレではうまくいかなかったものの、公式戦の初日の走り高跳びを左足、2日目の走り幅跳びを右足で踏み切ることで、「足への負担を考えると、練習を含めてプラス材料」と判断している。踏み切りの変更は、アスリートにとってもちろん一大事であり、「今後、もっとトレーニングが必要」とも話す。

「五輪選手にも負けない」

卒業後も競技は続ける。目標は七種競技でのオリンピック出場だ。走力、跳躍力の向上と、やり投げと砲丸投げの投てき2種目の記録向上のための筋力アップを課題に挙げる。

 

2024 年1~2月は前年に続き、米国サンディエゴに滞在し、七種競技のトップアスリートを多く育成しているクリス・マック・コーチの指導を受けた。その後のパリ五輪に出場した米国代表の選手とも一緒に練習し、並走した中長距離走のタイムで上回ったり、砲丸もより遠くに飛ばせたりして自信がついた。「オリンピック選手にも負けない。自分も目指せる」と背中を押されたという。

 

「ロス五輪(2028 年)もその次も目指して頑張りたい」と将来を見据えている。

◎第93回日本学生陸上競技対校選手権大会 女子七種競技成績

( 2024年9月21~22日、川崎市・Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu)

 

順位 選手名               100mH             走高跳び       砲丸投げ        200m              走幅跳び       やり投げ                 800m           総合点

① 松下 美咲(中央大) 13秒67(1026) 1m67(818) 10m38(554) 25秒38(852) 5m34(654) 38m98 (648)2分24秒27(766) 5318点

② 水谷 佳歩(中京大) 13秒85(1000) 1m67(818) 10m64(571) 25秒74(820) 5m23(623) 38m77(644) 2分19秒52(830) 5306点

 

 

 

◎第92回日本学生陸上競技対校選手権大会 女子七種競技成績

( 2023年9月16~17日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)

 

順位 選手名      100mH              走高跳び         砲丸投げ          200m                走幅跳び         やり投げ                    800m           総合点

① 田中 友梨(至学館大) 14秒35(929) 1m55(678) 11m83(650) 25秒95(802) 5m39(668) 49m61(853) 2分20秒93(811) 5391点

② 松下 美咲(中央大) 13秒70(1021) 1m60(736) 10m54(565) 25秒34(856) 5m55(715) 34m45(561) 2分24秒16(768) 5222点

 

(注)上位2選手。カッコ内は種目別の点数。記録は日本陸連サイトより抜粋

☆ 松下美咲選手

 

まつした・みさき。兵庫・滝川二高卒、文学部4年。身長162 センチ。七種競技の選手の中では小柄。日本インカレは2024 年優勝、2023 年2 位、2022 年3位。七種競技の学生記録保持者で卒業生のヘンプヒル恵選手を追いかけ、「強くなりたい」という思いから中大に進学した。尊敬する人は両親。両親と兄が日本インカレ優勝を試合会場で見届けたという。

 


 

☆ 七種競技

 

日目が100メートルハードル、走り高跳び、砲丸投げ、200メートルの4種目、2日目は走り幅跳び、やり投げ、800 メートルの3種目で競う女子選手の混成種目。英語名はヘプタスロン。独自の数式で各種目を得点化し、総合点を争う。10 種目で競う男子の十種競技の勝者が「キング・オブ・アスリート」と呼ばれるのに対し、七種競技の勝者は「クイーン・オブ・アスリート」と称される。

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