中村 栄輔株式会社モスフードサービス 代表取締役社長

1958年、福岡県生まれ。熊本マリスト学園高等学校出身。1982年、中央大学法学部卒業。
1988年、株式会社モスフードサービスに入社。法務部長、社長室長、店舗開発本部長を経て、2005年、執行役員 営業企画本部長に就任する。
その後、取締役執行役員 開発本部長、同 国内モスバーガー事業 営業本部長、常務取締役事業統括執行役員を経て、2016年、代表取締役社長に就任。

大学生活は物事を深く考え、本質を理解する貴重な機会。培った基盤が、変革に挑む原動力

2019年の春、私はモスバーガー加盟店オーナーをはじめとする約600名の前でタップダンスを披露しました。前年の食中毒事故による業績不振から復活する上で、説明会の冒頭で「トップが率先して変わろうとしている」とその姿を示すためです。大変な時に人前で踊るという大胆な提案に最初はかなり躊躇しましたが、やらない理由ばかり探している自分に気づいたとき迷いは消えました。なぜなら、私自身もこれまで常に変革に挑んできたからです。振り返ると入社7日目にして、法学部出身で司法試験に臨んだ経歴を買われて株主総会の書記係を任されました。その後に自ら円滑な議事進行のためのチェックリストを考案したことを皮切りに、どの部署においても業務の定性化や効率化を中心に改革を進めてきました。これは言い換えると業務の再現性を高める「科学」の部分です。当社の素晴らしさは創業以来のDNAとして「心」を大切にしていることですが、「食を通じて人を幸せにすること」という経営ビジョンを広く実現するには、価値観の共有はもちろんのこと、人の心に訴えて行動を喚起する「創造的な仕事」に注力できるシステムづくりも必要です。したがって社長就任後は、全社的に仕事の進め方や効率的な仕組みを考えるといった、科学の部分の強化・変革をさらに推進しています。

科学的態度とは現状の課題を正しく認識し、提案・実行・検証を繰り返す作業ですが、私がそれを培ったのは、間違いなく中央大学で学んだ4年間です。例えば法学部では判例の検討などを通して、事実をもとに問題の本質がどこにあるかを追究します。原告と被告、裁判官それぞれの立場を理解することも重要です。そうした思考習慣が身についたことは、現在の仕事でいえば自社の舵取りに留まらず、常にお客さまや加盟店さんの立場になって問題の本質と論点を考え、バランスのいい結論を出すことに繋がっています。法曹界には行けなかった私ですが、法学部で学んだ知識は社会人として物事を判断する際に大いに活かされています。

中村 栄輔

また学部の学びに限らず、大学時代は物事の本質を考えるかけがえのない機会です。手当たり次第にさまざまな本を読み耽り、友人と夜を徹して青臭い議論を交わした日々は、心の栄養となって今も私の中に息づいています。特にひとりの空間が増えている今は、自由に考えをめぐらす時間が潤沢です。生きるとはどういうことか、仕事とは、幸福とは――。抽象的な思索でも漠然とした夢でもいい、ひたすら考え抜く一見無為な時間もかならず将来の糧になるはずです。質実剛健な校風のもと、奇をてらわず本質を求める学生が多いのも中央大学の魅力のひとつ。私も実業家として、食を通じた幸せという本質を追求し続けていきます。
中村 栄輔

学生時代の私

サッカー同好会の活動に熱中。当時のメンバーをはじめ同級生とも人生論や恋愛論、政治や将来の夢をさまざまに語り合いました。彼らとは今でも友情が続いています。