卒業生
インタビュー

日本放送協会 NHK

森渕 靖隆さん

2013年 商学部経営学科卒業
私立世田谷学園中学校・高等学校出身

多様な価値観を受け入れ尊重することが


近年の社会において重要視されている

知らないことを知ること
知らないことを知らないと言えること

高校生までの私は受け身の性格で、大学の授業では高校の授業のように自分の席が決まっていないことに戸惑いました。でも大学にはいろいろな人がいて、思い切って自分から声をかけていくと、次第に留学生の友達が増え、自分から動けば視野が広がることを知りました。マスメディアを志望したのは、自分が知らないことを知っている人に出会って刺激を受ける面白さに目覚めたからです。
在学中からマスコミ業界に就職したいと考えておりNHKが第一志望でした。卒業後、ディレクターとして2013年に入局。NHKはADという制度がなく、入局したときから自分で番組を担当します。私の最初の勤務地は仙台放送局でした。東日本大震災で被災された方々のインタビューを担当したのですが、その取材をする中で私が「わかったふり」をして取材先の方を傷つけ、怒らせてしまったことがありました。結果としてこの番組は放送されませんでした。わからないこと、知らないことに対してわかったふりをしながら話を聞いてしまったことは、思いを伝えようとしてくださっている相手に対して大変失礼なことで、この経験が今の私の社会との向き合い方の原点になっています。

マスメディアの基本となるのは
人と人とのコミュニケーション

現在は本部に異動し、報道局スポーツ番組部でメジャーリーガーや大相撲の力士など、各競技のトップアスリートの密着取材を行っています。取材対象となるアスリートの「今」を記録し、率直な気持ちや思いを聞くことが仕事です。
生身の人間と直に向き合うので、話を引き出せなかったり、怒らせてしまったりすることもあります。このときに思い出すのが新人の頃の失敗です。「わかったふり」をしてその場をやり過ごすことはできますが、それではアスリートの本心が伝わらないどころか、関係も壊れてしまう。失敗しそうなときこそ必要なのは、真摯なコミュニケーションです。
相手をリスペクトして、自分自身も本心をさらけ出しながら信頼関係を築いていく。そうすると相手の内側にあったものが、言葉や表情として表に出てきます。そうして自分が制作に携わった番組で世界中の人とコミュニケーションできることは、番組ディレクターのやりがいの一つです。 基本は個々のコミュニケーションである。これはどんな社会になっても、言えることなのではないでしょうか。 

情報を選択できてしまう社会は
自分の世界に閉じこもってしまう

今、コミュニケーションのあり方が急激に変化しています。知りたいことに直接アクセスできるインターネットは便利ですし、メインメディアとなっていくでしょう。ただ、そこには情報細分化という問題点があります。
自分で情報を選択できるということは、自分にとって都合のいい情報しか目にする機会がなく、物事の本質を見失う可能性があります。そんな情報社会の中で、自分の価値観とは違う情報に触れるきっかけになるのが、社会のつながりであり、マスコミなどの多くの人へ情報を届けることを目的としているメディアやコミュニケーションツールだと思います。インプットする情報が偏るとアウトプットする情報も偏ってしまいます。私も日頃から、いろいろな情報に触れたうえで自分の考えを構築することを意識しています。