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概要
微細藻は、チッソとリンと太陽光で増えることができる、植物の10倍以上の速度で増殖する、海域でも増殖できるため、土地の制約がない、細胞内に脂肪を溜める種類もあり、脂肪を燃料に変換できる、タンパク質など、大豆並の栄養があるため、栄養食品としても有望視されている、などなど、今後の利活用が大変期待されています。石油由来のジェット燃料代替物として、バイオ燃料が注目されており、すでに実用化されています。これまでは、パーム油を使っていましたが、持続可能な方法とは言えません。

そこで注目されているのが微細藻類です。パーム油が第2世代のバイオ燃料と呼ばれているのに対し、微細藻類は第3世代のバイオ燃料と呼ばれています。微細藻類を培養し、そこから油脂を抽出して、ジェット燃料に変換する技術を国が中心となって開発を進めています。

微細藻類由来のジェット燃料生産に向けた開発では、3つの重要な要素があります。一番大事なのは、「どの藻類を使うか」ということです。一番早く育って、一番多く油脂を蓄積して、他の生物に捕食されない藻を探す必要があります。特に、屋外で大規模に藻を培養しようと思うと、「他の生物に捕食されない」ということが重要になります。(ほとんどのプロジェクトでは、他の生物に捕食されて失敗に終わっています)
2番目に重要なのは、二酸化炭素の供給方法です。ガスを水に溶かすのは、とても大変です。ここで使用するCO2は、工場などから排出されたガスを使用することを考えていますが、このガスを供給するだけでも、たくさんのエネルギーがかかってしまいます。
3番目に重要なのは、水中から藻を回収する技術です。油を抽出するためには、藻を回収する必要があります。ただし、藻が小さいので、ほっといても沈みません。回収するために、ろ過したり、遠心分離したりと、大変な作業が必要となります。小規模な培養(100Lくらい)だと、遠心分離でも大丈夫ですが、水田のような大規模な培養になると、遠心分離での回収は到底追いつきません。簡単に、高濃度に、安く、水中から微細藻類を回収する技術の開発が求められています。

2013年から2017年まで、我々の研究室と、DENSO、出光との共同で、微細藻類を培養-回収-燃料化するまでのプロセス開発を実施しました。石油と同定度のコストでジェット燃料を作らないといけないので、大変、困窮を極める研究でしたが、膜を使って、世界で一番安く、簡単に、微細藻類を高濃度に回収できる技術の開発に成功しました。

この技術が認められ、2020年(今年)から、経産省の支援のもと、Euglena社、中央大学、三菱商事、三菱ケミカル、DENSOが共同で、海外に大規模なEuglena培養・回収プラントを作ることになりました。実証にあたって、これまでとは段違いの規模になります。また、雨風天気の変更などに対しても、安定した性能が求められます。Euglena社の大規模池で培養した微細藻類を使って、大規模な膜ろ過装置で回収試験を実施する予定です。
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