インターナショナル・ウィーク駐日ドイツ大使講演会

批判力を養おう~駐日ドイツ・シュタンツェル大使、中大生へ提言~

【ドイツウィークの集大成――ドイツ大使講演会終わる】

ドイツを見つめ、日本を見つめ直す「中央大学インターナショナルウィーク・ドイツ」の最終日は、7月10日、中大多摩キャンパスに駐日ドイツ大使、フォルカー・シュタンツェル氏を招いての「特別企画・講演会」で締めくくられました。親日家で知られる同大使は講演後、茶の湯を楽しみ、合気道道場で合気道部の師範と学生の稽古に参加しました。
大使は1972年に京都大学に留学。この時合気道部に入り、この日の講演も日本語でした。

【150年にも及ぶ日独関係――その共通点と歴史観】

今回の講演のテーマは「私たちは150年の日独関係から何を学べるか」。
シュタンツェル大使はフランフルト大学に通う20歳のころ、日本学、中国学、政治学を専攻。日独、ドイツとアジア関係に精通しています。
大使は、ビール、ベンツ(車)、ベートーベン(音楽家)、サッカーなど、日本人がもつドイツのイメージを学生ら聴衆に聞きながら講演を始めました。一方でドイツ人がもつ日本人のイメージを、すし、漫画、アニメ、福島原発事故、と列挙しました。
日本とドイツはお互い相手への関心が高く、価値観も似ている。性格も互いに勤勉で戦略を同じように考えられるなど、共通点が多いことから親交が深まった――と、150年に及ぶ日独の歴史観について話しました。

【判断力の重要性と観察眼】

大型スクリーンに映し出されたのは、サッカーの代表チームGKのオリバー・カーン、川島永嗣両選手の真剣な表情。これら選手の顔をアップにして、大使は、「大切なのは判断力です。GKはボールがどこに来るか考えている。皆さんも考える力を養おう」と呼びかけました。
ドイツは東日本大震災後、国内エネルギーの供給を脱原発、代替エネルギーへの転換政策として打ち出し、国民の5分の4がこれに賛成しました。大使は「この判断は正しかったのか」と疑問を投げかけ、判断力の重要性を訴えました。判断力を養うにはしっかり観察すること。大使は、作家・森鴎外を例に挙げて、医学を学ぶための留学中、ドイツをつぶさに観察して書いた小説「舞姫」には、当時のドイツ、日本人留学生の暮らしぶりが如実に表れていると絶賛しました。
続いて大使は、「先生の言ったことを自分で判断してみましょう。判断力は習ったことや模倣で身に付くものではありません。自分で判断する、これは日常生活、大学生活、就職してからも大切なことです」と、学生への言葉に力を込めました。
質疑応答では中大生8人の質問に答え、「日本とドイツはよく似ているものの、相違点として日本は島国、ドイツは欧州の中心にあるため国際的意識が強い」と分析しました。
講演後は、中大生から花束とベートーベンを歌った混成合唱団のCDがプレゼントされ、大教室を埋め尽くした学生たちに見送られながら、大使は会場を後にしました。

【中央大学で「日本文化」を体験】

シュタンツェル大使は福原紀彦総長・学長らと茶室「虚白庵」で茶道部による茶の湯のもてなしを受けました。その後は第一体育館・合気道部で約30分、合気道部より贈られた道着に着替えて部員とともに稽古に励みました。京都大学留学中、習った合気道は堂に入っていて、真剣を持つ相手と戦う稽古でも、判断力のよさで相手に付け入るスキを与えませんでした。最後に木刀を贈呈され「今日の稽古は忘れません。ありがとうございました」と一礼。
大使の講演や合気道は、中大生にとっても忘れられないものとなりました。

<略歴> 1948年クロンベルグ生まれ。1968年からフランクフルト大学で日本学、中国学、政治学を専攻した。 1972年から京都大学に留学。1979年に外務省入省、1980年にケルン大学にて哲学博士号取得。その後、イタリア大使館、南イエメン大使館、社会民 主党、ドイツ連邦議会会派外交担当、外務省原子力平和利用・不拡散政策担当課長、外務省政策局長(アジア・アフリカ・中南米担当)、中国大使を経て、 2009年12月から現職。休日の東京・柴又散策を計画中。ブログはドイツ大使館HPから「大使日記」(URLは下記参照)。

【6月20日に実施した特別講演会について】

インターナショナル・ウィーク(ドイツ)では6月20日に「ドイツの経済と企業」と題する特別講演会を開催しました。
講師は3人。在日ドイツ大使館公使・ベアーテ・メーダー=メトカルフ氏が「現在の日独経済関係における論点」をテーマにマイクを握りました。東日本大震災後、ドイツは世界の工業国では初めて脱原発を決定。電力を再生可能エネルギーでまかなう方針に転換した経緯と効果などを力説しました。時節柄、最大関心事のテーマだけに会場には身を乗り出して聞き入る学生の姿が目立ちました。
続いて解熱・鎮痛薬"アスピリン"の発明で知られる世界的総合製薬グローバル企業のバイエルホールディング社・代表取締役社長ハンスディーター・ハウスナー氏が「ドイツ企業の魅力~バイエル社の場合~」について、生活の質の向上を目指す同社の社会貢献活動を中心に説明しました。ヘルスケア、農薬関連、先端素材の領域を中核とする同社の現状や同社が150年余の歴史を有し、2010年に125周年を迎えた本学より"お兄さん"であるなどといった身近な例えを交えて講演しました。
ここまでは同時通訳でしたが、3番目に登壇したドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW州)日本事務所長のゲオルグ・K・ロエル氏は流ちょうな日本語で周囲をびっくりさせました。テーマは「ドイツNRW州~日本企業の欧州ビジネス・ハブ~」。講演会の中でロエル氏は、日本人がビジネスや学問・研究に励む快適な暮らしぶりと、さらなる日本企業の誘致を訴えました。
3人の講演は各20分間。大型スクリーンに各種の貴重なデータが写し出され、参加した学生が真剣に聞き入っている姿が印象的でした。