インターナショナル・ウィークオープニング講演会

オープニング講演会「新生ドイツ」開催(2012.6.16 15:00~16:30)

「ドイツ・ウィーク」の幕開けに際し、東京ドイツ文化センター所長が来校した。日本とドイツとの文化交流に力を注ぐこの巨大な組織を2010年以来統括、率いているのが代表のライムント・ヴェルデマン氏である。ドイツを象徴する最新の画像とポップな音楽で始まった講演会には、土曜日の午後遅い時間にもかかわらず学生や教職員のみならず、外部からもたくさんの聴衆がつめかけ、会場には多くの立ち見がでた。

この講演の中でヴェルデマン氏は、ドイツ人がこれまでの古いイメージとは異なり、新しい姿に変貌しつつあることを強調した。曰く「組織偏重から個人尊重へ」「権威的なスタイルから格式張らないスタイルへ」、「義務や職責にではなく喜びや満足感に基づく行動」を重視しつつある等々。そしてその好例が最近のワールドカップやユーロ2012におけるドイツ・ナショナルチームの活躍であるそうだ。このあたりの「ドイツ人像」の落差に多くのオールド・ファンは戸惑いを見せていたが、若い学生たちは素直にその主張を受け入れ、所長とともに来場し、もっぱらドイツの若者文化の紹介を担当していた助手レベッカ・オーピッツ氏に多くの拍手を送っていた。

ところで今回の基調講演のタイトル「新生ドイツ」には大きな秘密が隠されていた。それはこの演題が講演者のオリジナルではなく、1946年に創刊され1989年の壁崩壊まで「ドイツ社会主義統一党」の機関誌であり、東ドイツの国民にひろく読まれていた日刊紙『新生ドイツ』からとられているということだ。ファシズム崩壊の後、多くの夢と希望を託して誕生した「新生ドイツ」(ドイツ民主共和国)だが、結局は一握りの党幹部に牛耳られ、その誤謬をただすことができず、やがては国家全体の衰退と消滅を招いてしまった。

もちろんこの種の「他人任せ」の危険が2012年のドイツにおいて消えたわけではないだろう。それでも80年代の「緑の党」や最近の「海賊党」の躍進に見られるように、ドイツにはその根底から声をあげ、つねに土台から民主主義を再検討する用意がある、と新たなドイツの可能性に言及し講演を結んだ。

このような真の意味での「新生ドイツ」が、今問われている。ヴェルデマン所長のオープニング講演はまさにこのドイツの最新の姿をスケッチし、鳥瞰するチャンスを参加者にあたえてくれた。7月10日13:20~14:50(8304号室)の駐日ドイツ大使の講演会とその後で行われる大使と学生とによる意見交換会では、この問題をさらに深く掘りさげ、両国の理解がより深まることを期待したい。