GO GLOBAL
【理工学部(他学部履修可)】グローバル・アントレプレナーシップ入門/演習の紹介
アントレプレナーシップが注目されている理由
近年、地球規模で起こる環境問題、国内における少子高齢化や地域経済社会の疲弊、自然災害、新型コロナウィルス感染症の拡大、など既存の枠組みや従来では対応できない課題が顕著化してきました。このように今まで経験したことがない急激な社会環境の変化を受容し、進むべき方向を見定め、自ら行動していくには、新たな価値を生み出していく精神、すなわちアントレプレナーシップを備えた人材の重要性がますます高まってきています。
残念ながら、日本は、他国と比較すると起業率やアントレプレナーシップの素養を持った人材が少ないことが国際的な調査結果で指摘されており、その大きな要因として、学校教育での学習経験の少なさが上げられています。アントレプレナーシップは、働く上でもキャリア発達の中でも重要な能力であるにも関わらず、日本の学校教育では今まで殆ど実践されてこなかったのです。
中央大学のグローバル・アントレプレナーシップ教育を牽引する理工学部 特任教授 藤井 真也 ~ラテンアメリカを基盤とするスタートアップ・コンサルティング企業Hub BOGにて
私が、母校である中央大学に戻る前は、民間企業で15年超、政府系機関で20年超ビジネスに携わり、その間に世界40ヵ国・地域を超えるスタートアップ・エコシステム(起業家が周辺環境と協調・共存しながら成長していく環境)を巡って参りましたが、社会人になってからゼロベースでこのようなマインドセットを養うことは遅きに失してしまいます。
近年、デジタル社会が到来するにつれ、日本の競争力低下に歯止めがかからない状況下、グローバル目線を持ち、かつアントレプレナーシップを備えた人材は社会で高い期待をもって歓迎されるようになっています。
しかしながら、全国(大学・大学院)のアントレプレナーシップ教育の受講者数は、 約3万人/300万人(1%)と、他の先進国(20~30%)に比べて著しく低い状況となっています。そこで文部科学省は、「我が国全体でアントレプレナーシップを備えた人材を育成するための土台作りをより一層進めることが必要不可欠である」との見解を打ち出し数々の政策を施行して参りました。その成果もあり、ここ数年日本でも、イノベーションの潮流を興し、新しい価値を生み出す思考・行動要素として、各教育機関でアントレプレナーシップのコースが設置されつつあるのは喜ばしいことです。
そして、このような人材は、最適なエコシステム(自身の飛躍を支援してくれる環境)を求めて国境を越えて、世界の潮流に乗ることから、国際頭脳循環が巻き起こります。
そこで、理工学部ではこのような潮流に乗れる人材を養成するために、グローバル×アントレプレナーシップ、双方を兼ね備えた人材を輩出するために2022年度から新カリキュラムを開始しました。
グローバル・アントレプレナーシップ入門/演習
「グローバル・アントレプレナーシップ入門」科目の目的・到達目標
- 社会、経済、産業、人口構造が激変する中、社会が求める人材が何かを理解した上で、自身が辿って来たキャリアを振り返り、大学時代に必要な知識・体験を個人で考察し、社会のスタートラインで必要なスキルを身に着けることを目指します。
- 社会、経済、産業、人口構造が激変、技術の発展により第4次産業革命が起こりイノベーション牽引するスタートアップが創出、その原動力となるエコシステムがシリコンバレーを中心とする世界の産業集積地で発展するなど旧来型の産業モデルが転換してきています。本講義ではそのベースとなるアントレプレナーシップを学び、イノベーションの現状とメカニズムを理解します。
具体的な授業の内容
- 我が国の少子高齢化、新興国の台頭で地球規模の社会、経済、産業、人口構造変化が起きているなかビジネスにはグローバル化が余儀なくされています。それに応ずるための企業の国際化と市場・産業を理解、グローバル人材(ニーズ)を理解した上で、個人のキャリアを振り返り、異文化コミュニケーション、多文化理解を学びます。
- 地球規模で巻き起こる不確実性社会の到来において、急激な社会変化を受容し、社会、経済、産業、人口構造変化などを見極め、新たなる価値を生み出していく人材の輩出が求められている中で、授業前半では、第4次産業革命、世界のイノベーション、スタートアップ、エコシステムを理解し、アントレプレナーシップの基礎を習得します。授業後半では演習・プレゼンテーションを平行して取り入れビジネスプランを作成する能力を養しないます。(将来起業する、就職するいずれの場合にも必要な基礎知識)。
【グローバル・アントレプレナーシップ入門の授業例】
- 第1回 今世界で何が起きているのか(日本社会・経済の現状と今後)
- 第2回 貿易・投資の基礎知識
- 第3回 日本企業の国際化
- 第4回 世界市場動向(社会・経済・産業・イノベーション)
- 第5回 キャリアデザイン~自分自身の軌跡を振り返る~
- 第6回 グローバル人材とは、異文化コミュニケーション、多文化理解
- 第7回 企業が求めるグローバル人材とは
- 第8回 今世界で何が起きているのか(第4次産業革命)
- 第9回 世界市場動向(社会・経済・産業・イノベーション)
- 第10回 スタートアップとは
- 第11回 エコシステムとは
- 第12回 アントレプレナーシップとは
- 第13回 ビジネスプランの基礎知識
- 第14回 ピッチング演習
後期には、前期で習得したスキルを実践する「グローバル・アントレプレナーシップ演習」を準備しています。
具体的には、グローバル・アントレプレナーシップ概論で習得した基礎知識を踏まえて、グローバルビジネスプラン作成、そのベースとなるイノベーションの現状とメカニズムを理解し、世界で通じるピッチング(プレゼンテーション)手法を身に着ける演習を繰り返すことで、ボーングローバルな起業家になるためのスキルを習得します。
履修学生に期待すること
今まで私たち日本人が育んできた教育は、どちらかと言うと、組織で行動することを主眼に置いた適合性を身に付けてきたものだったと思います。一方で、米国などは個性を伸ばす教育が行われています。
今一度、授業を通して今まで歩んできた道のりを振り返り、キャリアプランを考え、今後伸ばすべきスキル、具体的には個性を磨く手法を身に付け、日本人が得意とするチームワークにみなさんの個性をプラスしてほしいと思います。
前述のとおり、これから社会に出る学生の皆さんには、在学中に身に付けてほしいスキルです。そして、一緒に「グローバルを舞台に活躍する高度人材の輩出」を目指したいと思います。卒業後には、今後の社会において必要とされる人材となり、遅れている日本企業のグローバルにも貢献しましょう。
一方で、国内においても少子高齢化社会が進行するため、社会基盤を維持するために政府は外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切りました。いわば内なる国際化も進んでいきます。日本の外国人比率はわずか2%程度、それに比較して、イノベーションが勃興するシリコンバレーのそれは40%程度となっており、異文化コミュニケーションにより複眼的視座で物事を捉えることで新しいビジネスモデルが生まれます。春夏の長期休暇を活かし海外に飛び出し(別途、短期留学プログラムも準備しています)、授業で身に付けた基礎知識を、実践でチャレンジして欲しいと思います。また、外国人学生と共に、定められたプロジェクトを行うことで、様々なアイディア、意見が存在することを理解し、それらを共同で取り纏めていくgPBL(Global・Project・Based・Learning)を体験することも有益です。
このように、何事にも積極的にチャレンジしていく方にはぜひ履修してもらいたいと思っています。当然のことながら、学生時代或いは卒業後に起業を考えている方も大歓迎することは言うまでもありません。
さあ、みなさん、まずは授業をのぞいてみてください!
できれば早い段階で基礎知識を身に付けてグローバルの潮流に乗りましょう。そこで出会う海外の学生たちはこのようなスキルを持っています。そして、社会が期待する人材となり、就職戦線を優位に乗り切りましょう。その先には、皆さんが希望する新しい未来が待っています。その扉を開けるのは自分自身です。授業でお会いできること期待しています。私は、全面的にサポートをします。
▲深圳市(中国・広東省)にて。世界的なハイテクの街で、「未来都市」「最先端都市」とも呼ばれている
(写真:藤井教授が視察した世界のエコシステムより)