キャリアセンター(文系)

すべての経験はつながる

厚生労働省 子ども家庭局保育課 
井上 彩音

井上 彩音

学生時代

 学生時代は、決して公務員試験の勉強ばかりというわけではなく、白門祭実行委員会で活動したり、塾の学生スタッフや食品販売のアルバイトをしたり、ゼミ活動に取り組んだりと、毎日朝から晩まで忙しく過ごしていました。
 白門祭実行委員会では企画部に所属し、企画の発案から準備、当日の見回りや実際の運営まで担いました。裏方的な仕事が非常に多かったですが、「どうしたら学生が企画に参加してくれるか」「どんな企画がどのような層にニーズがあるか」などについて、限られた予算の中でより良い企画を実現するために話し合いを重ねた経験は、今の仕事にも通ずるものがあると感じています。
 ゼミでは、韓国の学生と交流したり、班ごとにテーマを決めて学内のプレゼン大会等に参加したりしていました。中でも、大学3年次のプレゼン大会では苦労した記憶があります。平日はもちろん、土日や夏休み中も、毎日朝から晩まで、大学で班員とともにプレゼン内容について議論していました。当初は、プレゼンテーマを幼児教育の格差に設定して取り組んでいたものの、紆余曲折あり、最終的には日本の公的年金制度について発表しました。テーマ変更に困難はありましたが、結果としてどちらも現在の就職先に関連する内容だったため、官庁訪問(厚労省の採用面接のようなもの)の際にもその知識が非常に役立ちました。

公務員をめざした経緯についてなど

 公務員に興味をもち始めたのは、高校生の時でした。高校では吹奏楽部に入部し、アルトサックスを担当すると同時に定期演奏会企画係にも所属していました。この係では、吹奏楽部の定期演奏会などの演奏会の演目や照明、ポスターの作成や掲示、使用する会場との打ち合わせ等を担当しました。定期演奏会の時期になると、日が暮れるまで打ち合わせや準備を行う毎日でとても忙しかったですが、今振り返っても、とても楽しく充実した毎日でした。定期演奏会を開催する際には、地域の方々にも来ていただかないと会場は埋まらないので、地域の掲示板や役所に案内を掲示させていただくなど、周知にご協力いただきました。このようなやり取りの中で、初めて公務員の方と関わる機会があり、それ以来、自然と公務員に憧れを抱くようになっていました。
 大学を選ぶ際はまだ公務員になると決めてはいなかったものの、公務員をめざす人が多く、学内の公務員試験講座等の体制も整っている中央大学を受験しました。大学2年次の冬頃から公務員試験講座を受講し始めましたが、ゼミ活動等が忙しくて欠席してしまうことも多く、正直なところ予習復習がしっかりできていたという自信はありません。大学3年次になってからも相変わらずゼミ活動等が忙しかったものの、興味のあるイベントには合間を縫って積極的に参加していました。たとえば、ゼミで財政関係の内容について学んでいるときには、財務省のワークショップに参加したり、当時憧れていた税関の羽田空港でのオープンセミナーに参加したりと、就職活動をしているというよりは、楽しんでイベントに参加するような感覚でした。
 公務員試験の勉強に集中して取り組み始めたのは、ゼミ活動が落ち着いた3年次の夏以降です。大学の図書館や地元の図書館、予備校の自習室、カフェなど場所を変え、集中力が途切れないように朝から晩までとにかく毎日勉強していました。勉強を始めたころは辛いこともありましたが、科目が多いので飽きることなく取り組むことができました。ひたすら問題集を繰り返しこなし、苦手な科目の問題集は12周ほど解いた記憶があります。

社会人生活のはじまり

 社会人生活の始まりを振り返ると、新型コロナウイルス感染症の影響により卒業式は中止、入省式も縮小、研修はすべてオンラインとなり、不安だらけの幕開けでした。特に、配属前の研修がすべてオンラインだったため、同期や職員と会う機会もなく、日に日に不安な気持ちが増していきました。初めて登庁した日に配属先が伝えられ、そのまま自席に着いて業務を開始したので、なかなか気持ちが追いつかない部分もありました。配属先は、子ども家庭局保育課。現在も同部署で勤務しています。入省当初は、緊急事態宣言の関係でテレワーク体制が求められており、質問したくても質問できなかったり、登庁しても直属の先輩がコロナ本部に派遣されており質問できなかったりと、大変苦労した記憶があります。
 1年目であっても、それなりに自分自身で考え、判断していかなければならない仕事は多いです(もちろん先輩は見守ってくださっていますが)。さまざまな案件に触れ、その度に周囲の方々に色々なことを教えてもらう毎日を過ごし、あっという間に1年が過ぎていったような気がします。

現在の仕事について

 「子ども家庭局保育課」というと、どのような業務をイメージされますでしょうか。日々の通常業務に加え、国会の会期期間中はいつ何時に発生するかわからない追加の業務に対応したり、関係各所への説明等の対応や調整、一般の方からの電話対応を行ったりしなければならず、これだけの人数でこの量の業務をこなしているのかと、入省当初は正直言って驚きました。また、現在は保育所の新型コロナウイルス感染症関連の対応もあり、突発的な案件が発生することも多々あります。気が付くと忙殺されてしまいがちですが、厚生労働省の業務は人々の生活に身近なものや、生活そのものに大きく影響を与えるものが大半です。そのため、ただ大変な業務をこなすのではなく、その業務の先にいる人々のことを思って行動することが必要だと感じています。親しい友人に保育士がいますが、実際の業務の様子を聞くと非常に勉強になりますし、生活に密着する業務が多いからこそ、常にさまざまな視点で物事を考えなければならないと思っています。
 また、もう少し大きな動きについてもお話させていただきます。これまでの保育行政というと、「待機児童対策」を主にイメージされる方が多いのではないでしょうか。もちろん、地域の状況によってはいまだ待機児童が発生しており、保育の受け皿整備が必要な場合もあります。しかし、近年では少子高齢化や人口減少が進んでおり、地域における保育所の役割や在り方についても検討・対応していくべき転換期にきています。入省2年目には、「地域における保育所・保育士等の在り方検討会」という検討会に関わることができました。現在まだ3年目ではありますが、このように政府の意思決定に少しでも携わることができるのは、非常に貴重なことだと感じていますし、政策の動きを肌で感じることは普通ではなかなかできない経験だと思っています。

中央大学の皆さんに伝えたいこと

 中央大学での学生生活は一度きりです。公務員をめざしている方も、そうでない方も、学生生活に悔いのないよう過ごしていただきたいです。公務員試験の勉強も非常に重要ですが、学生生活がそれだけにならないよう、メリハリをつけることが大切だと思います。就職が決してゴールではありませんので、その先の未来まで思い描いて、自分自身の興味が持てること、輝けることを探す時間にできればよいのではないかと思います。

Profile

1997年生まれ。

2020年、経済学部公共環境経済学科を卒業。

厚生労働省に入省後、子ども家庭局保育課企画調整係にて勤務。忙しい日々の中でも、休日にはちょっとした旅行やカフェ巡り、趣味のカメラなどで息抜きすることを心掛けています。

OB・OGからのMessages Vol.38
(学内広報誌『草のみどり』2022年7月号掲載)