学生相談室

学生の皆さんへ【2022学生相談室からのメッセージ Vol.5】

2022年11月01日

学生の皆さんへ

 

 理工学部の西田治文です。“植物系統進化学”という研究室を、2008年設立の生命科学科に置いています。ただ、私が理工学部に赴任したのは1997年で、それまでは一般教育の地学・生物学教室に在籍していました。当時の後楽園遊園地には温泉施設La Quaもなく、理工学部の佇まいや学生の気質、あるいは言葉さえもずいぶんと違っていました。学部には夜間部があり、夜のクラスには勤労学生も少なからずおりました。想像もできないでしょうが、教室前の廊下すら喫煙可能で、床のリノリウムは吸い殻の焦げ跡だらけでした。学生諸君との“対話”のなりゆきで、胸ぐらを掴まれたことさえあります。もちろん逆もありきで、そういう互いの渾身のやりとりが、ハラスメントなどの単純な表現の中にただ押し込められてしまう今の風潮には、淋しさと将来への不安を禁じえません。

 

 私の専門は、古植物学といって、植物化石を材料にした生物学、あるいは自然史科学です。現在の生物同士の系統、すなわち家系図は遺伝子を比較することでかなりわかります。しかし、化石なしには、たとえば恐竜の存在やその姿は想像すらできません。植物の歴史も同様です。私達の日常を支えている被子植物は、恐竜が登場した中生代の初めには世界にありませんでした。今から約1億5千万年前に被子植物が地球に出現したおかげで、私たちがあるのです。そういう植物と、生態系の歴史を証拠付ける化石を探して、これまでマダガスカルやパタゴニア、南極にまで出向いて採集調査をしてきました。そういう、時間と空間を超えた研究と旅の経験が、私の世界観のもとになっています。また、その延長として、私なりの人生観、大学観、学生観を築いてきたつもりです。

 

 教員や研究者としての肩書ではなく、大学人として最も重視しているのは、自由と自治です。認識してほしいのは、自治を行うのは学生だということです。加えて、学生の自治は大学にとどまらず、諸君自身のあり方や、あるべき世界の理想像にまで拡大すべきものだというのが私の持論です。諸君は自由であるからこそ、悩み、主張することができます。私もそうです。私は一人の大学人として、またこの時代に生を受けたヒトの一個体として、諸君と語り合うことができることを心待ちにしています。

 

学生相談員:西田治文(理工学部教授)