学生相談室新着ニュース

2020年12月01日

学生の皆さんへ【学生相談室からのメッセージ Vol.7】

 

学生の皆さんへ

「あるがままの自分でいられるように」

 

 後期授業が開始されて、通常の対面授業の実現に期待を寄せていた学生は、がっかりされたのではないでしょうか。実は私も同じです。先日大学へ出向いた際、「老,你好!(先生、こんにちは!)」と声をかけられて振り向くと、オンライン授業でしか「会った」ことのない学生がいました。実際に会えたことの喜びはひとしおでした。人間が生きるために必要なぎりぎりの土台の1つ「人と人が幸せな関係を結ぶこと」「世界でいちばん貧しい大統領」ホセ・ヒムカ氏の言葉)が断たれてはいけないと改めて実感したところです。

 

 前期はオンデマンド主体だった先生が、後期はオンライン授業へ切り替えたと聞くと、少しでも学生とつながりたいという思いを感じます。人と会わない生活はどうしても自分の価値が見えにくく、「不安」の感情が生まれやすい。そして厄介なのは、不安の感情はなかなか消えないもの。さらに不安な感情を抱いたままでも、日常生活は継続します。授業に出る、ご飯を食べる、音楽を聴くといった具体的な活動の中で、もし不安の感情が少しでも薄らいだ(忘れた)時があれば、それを大事にしてみませんか。その時にはきっと、不安を抱えたままの自分を受け入れる一歩を踏み出していることでしょう。

 ここで少し、この4月から私に寄せられた学生相談の一部を紹介したいと思います。

 

・「コロナで希望していた企業が採用を辞めてしまった。突然目標を奪われて、すべての事に対するやる気を失くしてしまった」(4年)

・「予定していた留学を断念したことのダメージが大きい」(4年)

・「どうしても留学したいけれど、どうしたらよいか」(2年)

・「セクシャルマイノリティである自分と付き合う時間を持つことができて、信頼できる友人にそのことを打ち明けることができた。でも今度は、『~らしさ』を求められて相変わらず窮屈な思いがする」(3年)

・「コロナで知らず知らず心を病んでしまい、画面越しの授業に出るのがつらい」(1年)

 

 皆さんも同じような思いを抱えたことはありませんか。どれも切実なものですね。彼らのその後の状況はというと、好転した場合(別の目標を見つけた、紹介した民間業者経由で留学を実現させた、親がサポートしてくれた)もあれば、なお一緒にどうしたらよいのか、と模索中の場合もあります。でも声がけしてくれたことで、私と学生は「つながる」ことができました。

 

 そんな学生の一人から勧められて、最近見た映画の中に『ラビング 愛という名前の二人』(2016年)というものがあります。今からわずか60年ほど前、アメリカでは異人種間の結婚が禁止されている州がまだありました。その1つバージニア州で、1人の白人男性と黒人女性が共に生きる選択をしたことで、2人は郷里を追われてしまいます。たえず不安を抱えて生きていく中で、妻がアメリカ合衆国司法長官ロバート・F・ケネディに宛てた一通の手紙が歴史を動かしていきます。2人の「故郷で一緒に過ごしたい」というたった一つの願いが、法律(国)を変えていく原動力となったのです(実話)。この映画を見て、Black lives matter問題に思いを馳せる人がいるかも知れません。映画を紹介してくれた学生は、「根深い差別や、他人を差異化しては安堵する人の存在を感じるのがつらい」という胸の内を明かしてくれました。私と学生は同じ悩みを持っているわけではありませんが、一つの映画を通じて互いの思いを打ち明け、自分以外の存在を想像するきっかけを得ました。こうした人と人との「つながり」は個々に、様々に拡がる可能性を秘めていると感じる瞬間です。これこそが、ヒムカ氏の言う「幸せな関係」なのかも知れません。

 

 言うまでもありませんが、皆さんが思い描いていたキャンパスライフとは程遠いものになっているのは事実です。そんな中にあっても、授業はどんどん進んでいき、後期授業の関門ともいえる試験の時期がまもなくやってきます。できることを一つずつ、目の前のことを一つずつ、時には取捨選択の判断も入れながら、乗り切って欲しいと思います。人とつながりたいと思ったら、家族、友達、先生はきっと声をかけてもらうことを待っていますよ。

 

学生相談員 経済学部教授 ダイバーシティセンター運営委員会委員 子安加余子