「中大スポーツ」新聞部ニュース

2016年11月09日

陸上競技部・全日本インカレ4連覇記念特別連載(川上拓也)

「もう一度自分に可能性を感じた」3年ぶり全国表彰台

 霞んでいた未来が一気に澄んだ瞬間だった。10月8日、北上総合運動公園陸上競技場で行われた2016希望郷いわて国体。成年男子100㍍決勝、川上拓也(法3=東海大浦安)はスタートで出遅れたものの、中盤から伸びのある走りを見せ10秒37(+0.8)の2位でフィニッシュ。表彰式では多くのフラッシュを浴び緊張した様子を見せるも、笑顔で賞状を受け取った。14年2月の日本ジュニア室内60㍍で3位に入った以来、約3年ぶりに全国大会で表彰台に上がった。

▲今年の全日本インカレでは400㍍4連覇に大きく貢献

 「ずっと全日本インカレも日本選手権も決勝に行けなくて、色々考えて苦しい時間を過ごしてた。それが一気に報われるような達成感みたいなものを感じられた。久々にその気持ちを味わって、『また味わいたいな』って」(川上)。

 シーズン入り直後はいきなり出鼻をくじかれた。今年4月の日体大対校戦で10秒48(-0.5)をマークし、上々の仕上がりを見せるもその直後に右ハムストリングを故障。あちこちの病院を廻り、検査を受けるほど症状は悪かった。「 決勝進出は最低条件」と挑んだ6月の日本選手権は100㍍に出場し準決勝敗退。「戦える位置にいるなと思ったので、そこに関しては成長を感じた。決勝に残れなかったのは素直に悔しかった」。

 9月の全日本インカレ100㍍でも決勝に進めなかった川上は並々ならぬ覚悟で国体に臨んでいた。「インカレでまさかの準決落ちをしてショックだった。気持ちを切り替えて今度は『大学のため』じゃなくて『千葉県のために頑張ろう』と。国体までは『大学4年で陸上を辞めよう』って決めてた」。その言葉通り、故郷の地に大きな恩返しを果たした。

▲入学直後の関東インカレでは1走として400㍍リレー連覇に貢献。桐生(東洋大・写真上段の中央)らと共に笑顔を見せた。

 鳴り物入りで中大に入学したのは2年前。泉谷中3年次に10秒86をマークし、当時からライバルだった同級生・桐生祥秀(当時彦根南中・現東洋大)の自己記録を0秒01上回った。高校入学後も3年連続で国体入賞、2年連続でインターハイ入賞を果たすなど常に世代トップを争ってきた川上。同じく中学時代からしのぎを削ってきた日吉克実(文3=韮山)らと共に、将来を担う中心メンバーとして大きな期待を寄せられていた。

 大学1年次から圧巻の走りを見せる。6月のアジアジュニア100㍍で金メダルを獲得し、続く7月の世界ジュニアも日本代表として出場。桐生らと共に戦った400㍍リレーでは1走を任され、ジュニア・アジア記録に迫る39秒02を記録し、過去最高の銀メダルを獲得した。

 苦難はここからだった。9月の全日本インカレから大学3年までコンスタントに二つのインカレ(関東インカレと全日本インカレ)に出場するも、決勝進出を果たしたのは一度のみ。高校時代、当たり前のように突破してきた決勝進出の壁は想像以上に分厚かった。

▲3年間で唯一入賞を果たした昨年の全日本インカレ。しかし同級生の桐生、小池祐貴(慶大)に先着され、「いつも高校時代から桐生、小池、自分という順位。いつも何とかしたいと思ってるんですけど」と唇を噛んだ。

 今年8月のリオ五輪、2年前の世界ジュニアを共に戦ったメンバーのうち、6人が日本代表として出場していた。その中心が400㍍リレーで銀メダルを獲得した桐生。気が付けば中学時代から切磋琢磨してきたライバルとはとてつもない差が開いていた。「(リオ五輪を見て)『離されているな』と思って悔しかった。桐生が銀メダルを取って、祝福の気持ちもあったけど、素直に喜べなかった」。

 背水の陣で臨んだ国体前には自身の持ち味でもあったスタートダッシュの解体に着手した。以前は最初の10㍍に100%の力を注ぎ込んでいたが、国体からは30㍍から60㍍付近にピークを持っていくイメージに変更。「スタートがあまり出れなかった時の方が記録が良かったりした。今年のインカレも準決はスタートで凄い前に出て、後半60㍍以降は力が尽きてそこから抜かされた。逆に予選はスタートちょっと失敗しちゃって、そこからの加速が良かった」。

 自信を取り戻し、一時は自ら閉ざした東京五輪出場の夢は再び視線の先にあらわれた。「国体で2番に入ってまだ自分に可能性を感じた。『陸上続けたいな』と思った。来年GPシリーズだったり、日本選手権だったり、ユニバーシアードだったり、もちろん世界陸上もある。そこで結果を残すのが陸上を続けるために必要なこと。続けられたらもちろん東京五輪で戦えるようになりたい」。

▲10月某日、同級生の藤井啓輔と共に取材に応じてくれた川上

 私生活ではご飯に行くほど仲が良い桐生とは「陸上よりプライベートの話が多い。『一緒に東京目指そう』とかって話はしない」。笑っておどけたが言葉には出さなくても通じ合ってるものがあるはずだ。来季で最上級生となり、チームを支える立場となる。大好きな陸上競技を続けるために、決死の覚悟で学生最後のシーズンに挑んでいく。(手塚健太)

・川上拓也(かわかみ・たくや)プロフィール

1995年6月8日生まれ、千葉県出身。169㌢58㌔。千葉市立泉谷中→東海大浦安→中大。10年全日中準決勝進出。11年国体少年B6位。12年インターハイ8位、国体少年A8位、日本ユース6位。13年インターハイ6位、国体少年A4位。14年アジアジュニア優勝、世界ジュニア準決勝進出。15年全日本インカレ7位。(上記全て100㍍での成績)。100㍍自己ベスト10秒33。

※次回は藤井啓輔(文3=城北埼玉)の特集をお送りします。

記事・写真:「中大スポーツ」新聞部