ビジネススクール新着ニュース

2020年03月26日

研究科長から令和2年3月修了生へのお祝いメッセージ

 みなさん、修了おめでとうございます。みなさんをお支えくださったご家族・ご友人・関係者のみなさまにも、心からのお慶びを申し上げます。
 2年前の入学式の日を思い出してみてください。あの時のご自分の思い、何が起こるかという期待や、本当に続けられるかという不安などが入り混じった、それでいて、前向きで明るいワクワクした気持ちを。それから2年が経ちました。アッという間だったと思う方も、長かったなと思う方もいらっしゃると思います。たぶん、みなさんに共通しているのは、本当に大変だったという思いと、やり切ったという充実感であり、2年前には想像しなかった新しい自分との出会いだと思います。
 いろいろな人との出会いを通して、自分とは異なる意見や経験を持つ人がたくさんいることを発見し、驚き、時には反発し、時には落ち込み、そして励まされ。社会人として仕事をするなかで、知らず知らずに身についた仮面を捨てて、年の差や境遇の差を超えて向き合えた経験は、これからのみなさんの宝になると思います。
 さて、世界では新型コロナウイルスの話題で持ち切りです。社会自体が新型コロナウイルスに感染してしまったかのようです。もちろん、未知のウイルスですから人々が怖がるのは当たり前のことですが、不思議なことに、ウイルスに感染しないように外出を自粛したり、手洗いを励行したり、マスクを着用したりすることは盛んにいわれているのに、どうやってウイルスに打ち勝つための免疫力を高めるかについては、あまり話題になりません。この状況で感染しないためには、全く外出しないか人がいないところで暮らすしかなく、それは現実的ではありません。この未知のウイルスと戦うのは人の免疫システムであり、治療薬やワクチンがない以上、それぞれが免疫力をあげることが、感染したときのリスクを最小限にするための唯一の方策です。
 同じように、社会人として今の状況を乗り切るためには、企業や組織における「免疫力」をあげることが不可欠でしょう。それでは組織や企業における免疫力とは何か?企業では自然災害が起こった時のためにBCP(事業継続計画)を作っているところがあります。しかし、感染症対策のためのBCPを作っている会社がどのくらいあるか?たとえBCPがあったとしても、その計画通りに物事が進むわけではありません。状況はその時その時によって異なり、常に予測できないことが起こるのが現実だからです。それでは、あらためて組織や企業における免疫システムとは何か?
 このような時こそ、本当の組織力が問われます。従来のルーティンが通用しなくなった時にこそ、「ことが起こっている最前線」で考え、実行し、前に進む力が必要です。日々変わる状況に適切に対応するには、トップダウンの判断だけではうまくいきません。現場での柔軟性と適応力が必要です。しかし、それぞれがバラバラに判断して動いてしまっては、逆に混乱することもあります。その時に必要となるのが判断の「軸」となるものです。それがビジョンやミッションであり、中長期的の戦略です。かみ砕いで言えば、ビジョンやミッションや戦略がどのくらい、組織のメンバーひとりひとりに浸透しているか?具体的に腹落ちしているのか?それが今問われています。日ごろ顧客志向とうたっていても、今のような状況になったときに顧客の立場に立って考えることができなければ、立派なビジョンやミッションも絵にかいた餅でしかありません。
 それでは逆に、みなさんは、この特殊な状況をどのようにチャンスとして生かせるでしょうか?よく言われるように、今回のコロナウイルスで、テレワークが急速に普及しました。なかなか進まなかった働き方改革が皮肉にも実践されたのです。それで実際やってみて、テレワークでできること、できないこと、不都合なことが具体的に見えてきたと思います。
 同様に、このような状況だからこそ、従来は見えてこない組織の優れた側面や、逆にシステムの問題点も見えてきます。平時には見えない組織の底力や欠陥があぶりだされます。そして、今は普段は隠れていて見えないけれども、組織が抱えるさまざまな課題を改善していくチャンスでもあるのです。そこに切り込んでいくのが、二年間CBSで学んだチェンジリーダーとしてのみなさんの使命だと思います。
 新型コロナウイルスによる社会不安は、これからも続くと思いますが、その不安は自分たちがどのように生きたいかという「意志」でしか乗り越えることはできません。怖れる気持ちは「行動」でしか克服できません。状況に適応していくだけではチャンスはないのです。
「正しく怖れる」という言葉を感染症の専門家がよく口にしていますが、まさに、その通り。日本では、社会の目を恐れて「やる選択よりもやらない選択」をすることが多く、それが日本社会の文化的な特徴でもあります。しかし、安易に無難な選択をするよりも、「誰のために」、「何のために」をよく考えたうえで、自分の意志で決定する。慎重かつ大胆な態度が、この難局を乗り越えるためには必要だと私は思います。
 修了の日はみなさんにとっての通過点でありゴールではありません。「行動する知性」、チェンジリーダーとしてのスタートの日です。われわれは、チェンジリーダーとして、みなさんが飛躍されることを心から信じています。そして、これからも、みなさんが迷った時や羽を休めたくなった時に、いつでも気軽に帰ってこられる学びの場として、お支えしたいと思います。
 みなさん、修了おめでとうございます。
 

  令和2年3月21日
  中央大学大学院戦略経営研究科 研究科長 露木恵美子