情報工学科・専攻

2019年度 情報工学科 情報工学専攻 電気・情報系専攻 入学式を挙行

2019年04月03日

式辞

2019年4月3日

情報工学科・情報工学専攻主任 牧野光則

 情報工学科に入学された112名の皆さん、皆さんの入学に心よりお祝いを申し上げます。また、ご出席のご家族の皆様にも心よりお慶び申し上げます。情報工学科教職員を代表して新入生の皆さんにお祝いと激励の言葉を送ります。

 先程学長、学部長、理事長より話があった通り、130年を超える歴史を有する中央大学において、理工学部は70年前の1949年に工学部として土木、精密機械、電気、応用化学の4学科でスタートしました。その後、数学・物理を加えて理工学部となり、学科を順調に増やし、1992年4月に情報工学科が8番目の学科として設立されました。すなわち、情報工学科は27年の歴史を有し、皆さんの在学中に30周年を迎えます。理工学部70周年、オリンピック・パラリンピック2020、情報工学科30周年と、皆さんの在学中に次々と節目が到来します。この貴重な時代に中央大学の一員である幸運をただ受け止めるだけでなく、これらの節目に何かを得て欲しいと期待しています。
 情報工学科ができた1992年、間もなく令和に交代する平成で言えば4年、東海道新幹線でのぞみが運転を開始し、山形新幹線が開業した年です。スマホはおろか携帯電話も限られた人が音声通話をするためだけに持ち歩く時代でした。SNSはもちろん影も形もなく、GAFAと称される四大企業のうち存在していたのはAppleのみです。Amazonは1994年7月にアメリカ・ワシントン州・シアトルで、Googleは1998年9月にアメリカ・カリフォルニア州・メンローパークで、Facebookは2004年2月にマサチューセッツ州ケンブリッジでそれぞれ設立されました。スマホ、クラウド、IoT、さらにはバーチャルリアリティやAIなど、我々が便利に利用している、もしくは、近い将来にもっと便利に利用できると予想されているICT技術やそれらを活用する産業の多くは、情報工学科と同時期であり、学科の卒業生と共に世に表れた、とも言えます。
 この情報化はますます進んでいます。皆さんは「Society 5.0」とか「デジタルトランスフォーメーション」という言葉を耳にした機会はどれほどあるでしょうか?Society 5.0は日本政府が提唱している用語で、狩猟社会を1.0、農耕社会を2.0、工業社会を3.0、情報社会を4.0と位置付け、それらに変わる「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、新たな未来社会」と定義されています。この定義に従えば、情報工学科はSociety 4.0の出現と発展と共にあったと言えましょう。次の時代として期待されているSociety 5.0では、我々がより便利になるだけではなく、2030年までの実現を目標として世界中で取り組まれているSDGs(持続可能な開発目標)にも有益でなければなりません。このSociety 5.0を実現するためのキーテクノロジーとして、経済産業省はIoT、ビッグデータ、人工知能、ロボットを挙げています。また、サイバー空間であるコンピュータ内部とフィジカル空間である現実のこの社会を高度に融合させるためには、現実社会のできるだけ多くのものや情報をディジタル化し、それらを活用することが必要です。このディジタル化とその効果的な活用を意味するのがデジタルトランスフォーメーションです。
 我が国の独立行政法人の一つである情報処理推進機構が昨年まとめたIT人材白書2018では、「Society 5.0の主役たれ」と関連業界、そして個人に対して呼びかけています。この白書の中で、Society 5.0実現を担うIT人材を2つのタイプに定義しています。1つは課題解決型、もう1つは価値創造型で、どちらも大幅に不足していることが指摘されています。
 課題解決型人材は効率化やコスト削減という、眼の前にある現実の課題を解決・改善するための方向性を示し、それを具体化し、実際に提供するタイプです。幅広く学んだ知識や過去の事例をもとに、課題解決に向けてチーム一丸となって進むことが求められます。但し、社会は急速に変化していることから、過去の事例にあまりとらわれると考案する課題解決策は時代遅れになる恐れがあるため、常に最新情報に接していることが必要でしょう。
 一方、価値創造型人材は、これまでにない何かを生み出し、所属企業だけでなく社会全体や地球環境にも有益な結果をもたらすことが求められます。いわゆる「イノベーション」をIT技術で生み出す人です。こちらのタイプにも幅広く学んだ知識や過去事例を知っていることが求められますが、それ以上に独創性・創造性、新しい技術への好奇心や適用力、探索能力や全体像を作り上げるデザイン力を身につけていることが求められます。Society 5.0を実現するためには、この価値創造型人材をより多く輩出し、その人達が活躍できる社会を作る必要がありますし、そのような価値創造型人材をより多くの人が目指してもらう必要があると考えます。
 以上より、情報工学科で学ぶ皆さんには、これまで以上にその知識・能力を社会で活用することが期待されていると言えましょう。自らが生み出したモノ・コトが社会に貢献する姿を見て達成感を得ることは、情報に限らず工学分野に携わる人達の大きな目標です。そのような達成感を実際に得るためには、まずは情報工学科で基盤となる知識、および、知識を応用する能力やノウハウを確実に獲得してください。加えて、与えられるものだけで決して満足せず、自らが調べ、問いを立て、考え、確認し、気付き、ステップアップすることを心がけてください。その際には、情報工学が社会に与える光と影の両面を忘れずに、できるだけ光を増やし、かつ、影を減らすためには何をどうすべきかを考え抜いてください。情報工学科では論理的思考能力や問題解決能力を含む「コンピテンシー」の育成をカリキュラムに組み込んでいます。是非そのような場や教職員との交流を活用して、自らの人間力を高め、将来自らの手で変革させた社会に流されたり、埋没したりせず、主役として生き抜くための素地を磨いて下さい。
 皆さんの大学生活が実り多きものであることをお祈りいたします。入学おめでとうございます。