情報工学科・専攻

経産省「社会人基礎力を育成する授業 30 選」にコンピテンシー育成「画像・映像コンテンツ演習」が選定

2014年03月01日

大学教育における「社会人基礎力」育成を推進する観点から、効果的な育成を実践する大学のグッドプラクティスを表彰し、広く情報発信を行うことを目的とする「社会人基礎力を育成する授業 30 選」(経済産業省主催) において、189 件の応募から中央大学の「画像・映像コンテンツ演習 (段階別コンピテンシー育成教育プログラム情報工学科主対応科目群)」が選定され、2014 年 3 月 3 日(月) に経済産業省よりニュースリリース、10 日(日) に表彰式・特別シンポジウムが開催されました。

中央大学は建学の精神「實地應用ノ素ヲ養フ」の現代的な解釈として、グローバル社会において継続的に高業績を達成している人々に共通した後天的に修得可能な行動特性すなわちコンピテンシー(competency) を精査し特に本学の学生に求められるコンピテンシー項目を明示したうえで、「知性×行動特性」学修プログラムとして総称する一連の正課授業および課外活動を通じて「専門性」を含むコンピテンシー育成を組織的に進めており、こうした数々の取組は文部科学省による競争的な支援事業(グッドプラクティス) に選定されています。

プロジェクト形式の演習「画像・映像コンテンツ演習 1~4」

中央大学における数々の取組への動機付けとなった「段階別コンピテンシー育成教育システム」の中核として、情報工学科はコンピュータグラフィックス(CG)、バーチャルリアリティ(VR)、画像処理、情報セキュリティなどに強い「映像系コンテンツエンジニア」を育成するための「映像系コンテンツエンジニアプログラム」を 2009 年度に新設し、2 年次の後期、3 年次の前・後期、4 年次の前期を対象とするプロジェクト形式の「画像・映像コンテンツ演習 1~4」を実施しています。

例えば「画像・映像コンテンツ演習 4」では、裸眼 3D ディスプレイ・ウォール上などで効果的にプレイできる近未来ゲームを自ら企画し OpenGL を利用した実際のコーディングまでを一通り体験します (プロモーション動画)。ゲームの内容やプログラムの仕様などは、5 人程度からなる各チームにおいてブレインストーミングなどにより相談して決めます (過去の作品例)。「こういうゲームにしたい」「こういう機能を追加したい」といった意見がどんどん出て議論は進み、例年どのチームも大いに盛り上がっています。詳しくは、公開資料の本文 41 頁(PDF 上 56/148 頁) をご覧ください。
 

社会人基礎力を育成する授業 30 選

経済産業省はこのたび、大学教育における「社会人基礎力」育成を推進する観点から、効果的な育成を実践する大学のグッドプラクティスを表彰し広く情報発信を行うことを目的として「社会人基礎力を育成する授業 30 選」を実施しているものです。この事業のもとで、189 件の応募から上記「画像・映像コンテンツ演習 (段階別コンピテンシー育成教育プログラム情報工学科主対応科目群)」が、東京工業大学(機械宇宙プロジェクト A)、大阪大学大学院(インターンシップ・オン・キャンパス)、日本大学(学生と地域住民との協働による道づくり&橋守プログラム) その他と共に選定されました。

【基礎力 30 選表彰】 公募要領より抜粋
今回の「社会人基礎力を育成する授業 30 選」では、審査項目を社会人基礎力の 3 つの能力、12 の能力要素だけに限定せず、各大学が実施する「社会で活躍していくために必要な力」を育成する取組を幅広く募集します。特に、グローバル化が進む昨今、グローバル社会の中で生き抜く能力を育成する取組も積極的に募集します。

過年度の受賞等歴

「社会人基礎力を育成する授業 30 選」に先立ち、中央大学が推進する「段階別コンピテンシー育成システム」は「特に優れており波及効果が見込まれると判断される取組」(いわゆる GP の中の GP) として選定されており、さらに日本工学教育協会より平成 24 年度工学教育賞(業績部門) も受賞しています。
 

文部科学省「学士力」および経済産業省「社会人基礎力」への上位互換性

情報工学科および情報工学専攻(大学院) は、文部科学省「学士力」(文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会が答申した「学士課程教育の構築に向けて」の本文において 12 頁に記載)経済産業省「社会人基礎力」(経済産業政策局長の私的研究会である社会人基礎力に関する研究会が報告した「中間とりまとめ」の本文において 12~14 頁に記載) を充足するためのコンピテンシー各項目のレベルを提示しており、すべての授業にコンピテンシーを計画的に育成するための工夫を緻密に埋め込んでいます。

中央大学の推進するグローバル人材育成において想定されている人材像の一つ「グローバル・スペシャリスト」に求められるコンピテンシーと、「学士力」「社会人基礎力」との関係については


をご覧ください。

この表から推察されるように、「学士力」「社会人基礎力」が言及している概念に加えて、中央大学はグローバル化の本質的な要件である「多様性創発力」を明示しており、この新たな視点は「【基礎力 30 選表彰】公募要領」に記載ある「審査項目を社会人基礎力…だけに限定せず…グローバル化が進む昨今、グローバル社会の中で生き抜く能力を育成する取組も積極的に募集します」にも暗示されています。

留学生も含めた各チームが、各自の背景に由来する多様性をただ受容するという考え方ではなく、むしろ多様性を活かして新たな価値観を創り出し、科学技術に携わる者に相応しく自らの手で実現していくプロジェクト形式の授業「画像・映像コンテンツ演習 1~4」は、国内外の教育関係者だけでなく企業人事の方々へも公開しています。
 

「多様性創発力」について

グローバル化の本質的な要件である「多様性創発力」は、「自確力」「融合力」「協創力」から構成されます (次節参照)。たとえ個人の表層的なスペックが優れていても、グローバル社会において、もし「自確力」に乏しければ「世界一になる理由は何があるんでしょうか?」と後向きの思考になってしまうかもしれません。また、もし「融合力」に乏しければ、鎖国や、悪い意味でのナショナリズムに陥ってしまうかもしれません。また、もし「協創力」に乏しければビジネスにおける Win-Win の関係は期待できないし、世界の平和、地球環境の維持も絵空事となるでしょう。多様性創発力を大切にする情報工学科および情報工学専攻(大学院) のコンピテンシー育成教育は、常に世界を意識しています。

多様性創発力 (Diversity)

定義: 多様性(文化・習慣・価値観等) に適切に対応しつつ、自らの存在感を高め、その協同から、相乗効果を生み出すことにより、新たな価値を得る。
 レベル 0  問題行動: 多様性(文化・習慣・価値観等) を意識していない。
 レベル 1  指示待ち行動 (一年夏想定レベル): 多様性(文化・習慣・価値観等) を意識し、理解しようとしている。
 レベル 2  通常行動: 多様性(文化・習慣・価値観等) を理解し、受け入れ、複数人の協同により、人数相応の成果は得られていないが、一定の成果がある。
 レベル 3  自主的行動 (卒業時想定レベル): 多様性(文化・習慣・価値観等) を理解し、受け入れるとともに、自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を伝えている。複数人の協同により、人数相応の成果を得ている。
 レベル 4  独創的行動: 多様性(文化・習慣・価値観等) の相互理解を得て適切に対応しつつ、自分が何を望むか、まわりが自分に何を望んでいるのかを総合的に判断し、行動している。複数人の協同により、相乗効果を生み出している。
 レベル 5  創発的行動 (院了以降想定レベル): 多様性(文化・習慣・価値観等) に適切に対応しつつ、自らの存在感を高め、その協同から、相乗効果を生み出すことにより、新たな価値を得ている。

自確力 (Identity)

定義: 自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を正しく理解したうえで、自分が何を望むか、かつ、まわりが自分に何を望んでいるのかを判断し、行動する。
 レベル 0  問題行動: 異なる文化・習慣・価値観等に接したときに、自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を意識しない。
 レベル 1  指示待ち行動 (一年夏想定レベル): 自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を意識し、理解しようとしている。
 レベル 2  通常行動: 自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を正しく理解している。
 レベル 3  自主的行動 (卒業時想定レベル): 自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を正しく理解し、自分が望む行動、あるいはまわりが自分に望む行動をしている。
 レベル 4  独創的行動: 自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を正しく理解したうえで、自分が何を望むか、かつ、まわりが自分に何を望んでいるのかを判断し、行動している。
 レベル 5  創発的行動 (院了以降想定レベル): 自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を正しく理解したうえで、自分が何を望むか、かつ、まわりが自分に何を望んでいるのかを判断し、行動することにより存在感を高めている。

融合力 (Harmonization)

定義: 異なる文化・習慣・価値観等の相互理解を得て適切に対応し、互いに学び続けている。
 レベル 0  問題行動: 異なる文化・習慣・価値観等の存在を意識していない。
 レベル 1  指示待ち行動 (一年夏想定レベル): 異なる文化・習慣・価値観等の存在を意識し、理解しようとしている。
 レベル 2  通常行動: 異なる文化・習慣・価値観等を理解し、受け入れている。
 レベル 3  自主的行動 (卒業時想定レベル): 異なる文化・習慣・価値観等を理解し、受け入れるとともに、自らの慣れ親しんだ文化・習慣・価値観等を伝えている。
 レベル 4  独創的行動: 異なる文化・習慣・価値観等の相互理解を得て適切に対応している。
 レベル 5  創発的行動 (院了以降想定レベル): 異なる文化・習慣・価値観等の相互理解を得て、適切に対応し、互いに学び続けている。

協創力 (Synergy)

定義: 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人が協同して、相乗効果を生み出すことにより、新たな価値を得る。
 レベル 0  問題行動: 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人の協同にもかかわらず、むしろマイナスの成果となっている。
 レベル 1  指示待ち行動 (一年夏想定レベル): 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人の協同にもかかわらず成果が得られない。
 レベル 2  通常行動: 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人の協同により、人数相応の成果は得られていないが、一定の成果がある。
 レベル 3  自主的行動 (卒業時想定レベル): 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人が協同して、人数相応の成果を得ている。
 レベル 4  独創的行動: 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人が協同して、相乗効果を生み出している。
 レベル 5  創発的行動 (院了以降想定レベル): 多様性(文化・習慣・価値観等) のある複数人が協同して、相乗効果を生み出すことにより、新たな価値を得ている。

その他のコンピテンシーについては、コンピテンシーの紹介ページをご覧ください。