応用化学科・専攻

日本化学会秋季事業 第14回CSJ化学フェスタ2024 において、優秀ポスター発表賞をトリプル受賞

2024年12月03日

 理工学研究科応用化学専攻 小澤二千夏 さん・住吉 剛 さん・元木 康平 さんが、日本化学会秋季事業 第14回CSJ化学フェスタ2024 において、優秀ポスター発表賞を受賞しました(ポスター発表 1089 件中 199 件が表彰)。
 

■学会名
第14回CSJ化学フェスタ2024

 

■受賞テーマ
QM/MM法のための活性領域定義ーフラグメント化による高速高精度手法ー
○小澤 二千夏1・黒木 菜保子2,3・森 寛敏1
(中央大学1、お茶の水女子大学2、JST ACT-X3

 生体分子間の相互作用解析による分子認識機構解明は、生化学の深化や創薬化学の発展に役立ちます。希薄なイオン水溶液中に存在する生体系は、分子の分極や電荷移動を伴った相互作用ネットワークを形成しています。QM/MM 法は、適切に活性領域(QM領域)を定義することができれば、その相互作用を高精度かつ効率的に考慮できる強力な手段ですが、その実施には、計算者に高度な事前知識が求められることが課題でした。
 本研究で小澤さんは、QM/MM計算における重要な生体分子間相互作用領域(QM領域)を、迅速に評価できるフラグメント分子の電子論から一意に決める方法を確立しました。開発した手法は、癌に関わるヒトカテプシンLや、新型コロナウイルスの機能を阻害する阻害剤の活性評価に応用できることまで示されており、今後の生物化学・創薬科学研究への応用に期待が持たれます。

■受賞テーマ
相対論的量子化学計算とベイズ最適化によるマイナーアクチニド分離配位子のパーツ設計
○住吉 剛・森 寛敏
(中央大学)

原子力発電所から取り出される大量の放射性廃棄物の処理は、現在社会が解決すべき緊急課題の一つです。放射性廃液中のマイナーアクチニド(An)とランタニド(Ln)の錯形成分離では、HSAB(hard & soft acids & bases)則を考慮した配位子へのヘテロ元素導入による分離能向上が試みられてきました。しかし、リスクとコストの観点から、配位子構造を網羅的な放射化学実験により検討することは適切ではありません。
 本研究で住吉さんは、相対論的量子化学計算と機械学習法の一つであるベイズ最適化により、高い {Ln/An} 分離能を実現するN,N,N',N'-tetrakis(2-pyridinylmethyl)-1,2-ethanediamine)系配位子の設計法を確立しました。本課題では、f-ブロック元素を中心とした放射化学分野への応用を実施しましたが、開発された手法(錯体電子状態インフォマティクス)は、あらゆる金属種が関わる分離錯体化学・超分子化学に展開することができます。

 

■受賞テーマ
核量子効果が分子間相互作用および化学結合に与える影響

○元木 康平・森 寛敏
(中央大学)

 水素の安定同位体である重水素は、機能性分子の性能を向上させるため、近年、材料設計や創薬分野において注目されています。しかし、原子核を古典的に取り扱う BO (Born-Oppenheimer)近似では、ある分子の水素を重水素に置換しても(電子状態に基づく)分子物性の差異を表現することが不可能なことが課題でした。
 本研究では、原子核も量子的に取り扱う制約付き原子核 - 電子軌道法を基盤に、自然結合軌道法、非共有結合相互作用解析法を組み合わせることで、水素・重水素の量子性が、化学結合、分子間相互作用に与える影響を定量可視化する手段を確立しました。この手法は、重水素の置換による分子物性・化学反応経路変化に対する定量解釈を与えるため、前述の重水素を利用した材料・創薬設計への展開が期待されます。

 

ご興味をお持ちの方は、以下のリンク先をご覧ください。

理論化学研究室(森研)