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2019年09月11日

2019年度連続公開講座「LGBTをめぐる社会の諸相」第二回「LGBTと歴史―歴史研究の重要性」を開催いたしました

 2019年7月13日(土)、本学後楽園キャンパスにて、2019年度連続公開講座の第二回、「LGBTと歴史―歴史研究の重要性」(司会進行 谷口洋幸氏、登壇者 石田仁氏、赤枝香奈子氏)を開催いたしました。当日は、あいにく雨模様の天気にも関わらず、初回を上回る約120名の方々にご来場いただきました。

 講座は第一回と同様、二人の登壇者による短い講演と、休憩を挟んで会場からの質問を受けたクロストークのセッションという形式で行われました。

 まず、石田氏より、「ブルーボーイ裁判はどのように歴史語りされ、何が語られなかったか」と題して、1960年代に「性転換手術」を行なった医師が優生保護法違反で有罪となった「ブルーボーイ裁判」について、ご自身の論文2本を紹介する形でお話いただきました。判決文以外に存在する、医学誌と一般雑誌における記述、尋問速記録、裁判を素材にした小説など多様な資料について、どの範囲の言説を取り上げどのような方法論で分析するかによって異なる研究ができることや、複数の研究結果を更にあわせ考えることで見えてくる個々の研究の意義と限界など、非常に多層的な内容を明快に解説いただきました。 

 続いて赤枝氏が、「レズビアンの歴史を研究するということ」のタイトルで、同じく1960年代に活躍した写真家の清岡純子に関するご研究をお話くださいました。「レズビアンの不可視化」という問題を「レズビアンの歴史の不可視化」と捉え直し、20世紀初頭にはむしろ女性同士の精神的なつながりと理解されていた同性愛の社会的な認識が変遷していったこと、1950年代以降登場した「レズビアン」が性的なものと結び付けられていく過程、その中で重要な役割を果たしたと思われる清岡純子の生涯と著作について、興味深い情報を盛り込んだご報告でした。

 後半のクロストークでは、会場からの質問を受け、ブルーボーイ裁判のさらなる詳細や時代背景についての補足説明、文献資料と口述資料それぞれの重要性、インターネット時代の資料を歴史研究がどう扱うか、アーカイブづくりの重要性と困難など、講師お二人から更に幅広くご意見を伺うことができました。海外では過去の社会を知るために非常に幅広い資料を収集してアーカイブ化が進んでいること、著名人以外も対象とした学術的なオーラルヒストリーの聞き取りが重要であることなど、今後日本での歴史研究を充実させるための重要な指摘もありました。

 最後に、私たちは歴史についてどのように学んでいくことができるのか、という会場からの問いかけに対し、石田氏からは、歴史研究者だけでなく多くの人に学術的な文章を読んでもらいたい、そのためには学者ももっと工夫して発信をしていく必要があるという意見をいただきました。赤枝氏からは、複雑なものを複雑なまま伝え受け取ることが忌避される風潮への危惧と、批評的精神を持って複雑さに取り組んでほしいという希望が示されました。

 最初の石田氏のご講演の中で、「歴史から教訓を引き出そう」という期待は歴史研究を歪めてしまうという指摘がありましたが、講師お二人ともに、近視眼的な有用性に左右されず、真摯に学術的な探求を続ける姿勢が強く伝わる講座となりました。終了後のアンケートでは、1960年代の社会状況について知識を得られてよかったというコメントや、研究者として研究手法やプレゼンテーションの方法を参考にしたいなど、様々な感想やご意見をいただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。今後の講座へのご参加もお待ちしております。(次回講座は9月28日(土)「LGBTと防災」です。)

 今後の連続講座の予定はこちらでご確認ください。

 なお、今回の講座は資料、動画ともに非公開とさせていただきます。