広報・広聴活動

カーボンナノチューブを使った半導体メモリNRAMの高速、低電力、高信頼な基本動作を実証

2014年06月12日

<概要>
 カーボンナノチューブを用いた半導体メモリ(NRAM)に最適な書き込み方法を提案し、140ナノメートルサイズの単体の素子の測定を行い、高速、低電力、大容量、高信頼な基本的な動作を世界で初めて実証しました。20ナノ秒の短い書き込みパルスで、20マイクロアンペア以下という高速かつ低電力な書き換えが可能です。書き換え時には100倍以上の大きな抵抗の変化が得られ、1つのメモリセルに複数のビットを記憶する、大容量なMLC(多値記憶)動作の可能性を示しました。また、信頼性に関してはフラッシュメモリの1000万倍に相当する、1000億(10の11乗)回の書き換えが可能であることを示しました。今後は10ナノメートルまで微細化し、ギガビット以上の統計データを評価することが必要ですが、以上の結果は将来NRAMが「ユニバーサルメモリ」としてメインメモリ(DRAM)からストレージ(HDDやSSD)まで様々なメモリを置き換え、スマートフォンから企業向けサーバーまで、幅広いIT機器の高速化、低電力化、高信頼化に貢献する潜在力があることを示しています。

【研究者】
竹内 健   中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)

【発表(雑誌・学会)】
本研究成果は、2014年6月9日から12日(米国ハワイ時間)に米国・ハワイで開催される「VLSIテクノロジシンポジウム」で発表されます。論文名:23% Faster Program and 40% Energy Reduction of Carbon Nanotube Non-Volatile Memory with Over 1011 Endurance

【研究内容】
 中央大学 理工学部 教授 竹内 健のグループは米Nantero社と共同で、カーボンナノチューブを用いた半導体メモリ(NRAM)に最適な書き込み方法を提案し、140ナノメートルサイズの単体の素子の測定を行い、高速、低電力、大容量、高信頼な基本動作を実証しました。NRAMはNantero社が提案した新しい半導体メモリで、電圧印加や微小な電流を流すことで、カーボンナノチューブが接触(低抵抗化)、分離(高抵抗化)することで、データを記憶します(図1)。今回、NRAM素子で構成されるメモリセルアレイ(図2)におけるばらつきや揺らぎに対して、メモリセルに印加する電圧を段階的に増加させることで安定に書き換える手法を提案し、20ナノ秒の短い書き込みパルスで、20マイクロアンペア以下という高速かつ低電力な書き換えを示しました(図3)。また、書き換え時には100倍以上の大きな抵抗の変化が得られました(図4)。大きな信号変化を得られたことで、1つのメモリセルに複数のビットを記憶する、大容量なMLC(多値記憶)動作が可能になると考えられます。さらに、信頼性に関しては1000億(10の11乗)回の書き換えが可能であることを示しました(図4)。従来のフラッシュメモリは書き換え回数が1万回程度という制約があり、用途はデータを長期間保存するストレージに限られていました。今回のNRAMの書き換え回数は、フラッシュメモリの1000万倍に相当し、NRAMがストレージのみならず、メインメモリとしてDRAMを置き換える可能性を示唆しています。
 今回の評価結果は、140ナノメートルという大きなサイズで、単体の素子を測定したもので、NRAMをLSIとして実用化するためにはごく初期段階の結果にすぎません。実用化に向けては素子を10ナノメートルまで微細化し、ギガビット以上の統計データを評価することが必要になります。今回の実験結果は開発のごく初期段階のものですが、将来NRAMが「ユニバーサルメモリ」としてメインメモリ(DRAM)からストレージ(HDDやSSD)まで様々なメモリを置き換え、スマートフォンから企業向けサーバーまで、幅広いIT機器の高速化、低電力化、高信頼化に貢献する大きな潜在力があることを示しています。

*詳細は下記PDFをご覧ください。
 
【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
竹内 健 (タケウチ ケン) 
中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)
TEL: 03-3817-7374
E-mail: takeuchi☆takeuchi-lab.org
(☆を@に変えて送信してください。)
 
<広報に関すること>
加藤 裕幹  (カトウ ユウキ)
中央大学 研究支援室 
TEL 03-3817-1603,FAX 03-3817-1677
E-mail: k-shien☆tamajs.chuo-u.ac.jp
(☆を@に変えて送信してください。)