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受賞論文【優秀賞】本当に環境に良い地産地消とは

お茶の水女子大学附属高等学校 2年 小野田 千寛

以前授業中に先生が、「地産地消は必ずしも環境に良いわけじゃない」とおっしゃっていたことがあった。その時はどうしてなのか分からず、ずっと疑問に思っていた。そこで、地産地消について考えてみることにした。

まず、地産地消のメリットとデメリットについて調べた。メリットは、輸送時の二酸化炭素・コスト削減、新鮮さ、安心感、生産者がニーズの把握をしやすいなどである。デメリットや課題は、規模が小さいためコストが上がる、一つの地域で全ての作物を賄えない、安定的な供給が難しいなどである1)。

次に、フード・マイレージについて考える。これは、地産地消を考える上で参考になる考え方である。そもそもフード・マイレージとは、「食料の輸送量と輸送距離を総合的・定量的に把握することを目的とした指標ないし考え方」であり、また「食料の輸送にともない排出される二酸化炭素が地球環境に与える負荷という観点に着目するもの」である2)。フード・マイレージは、輸送量と輸送距離の積で表わされるから、フード・マイレージを小さくすることは、輸送時の温室効果ガス排出や大気汚染、エネルギー消費の影響を小さくすることになる。そして、地産地消が環境に良いと言われる根拠は、このフード・マイレージが小さいという点にある。現在の日本のフード・マイレージの現状を調べてみると、日本は約9千億t・㎞であり、韓国・アメリカの約3倍など、他国の数倍の値である。一人あたりに換算すると約7千t・㎞で、韓国は約6600t・㎞と近いが、それ以外の国は日本の半分以下である3)。このことから、日本はフード・マイレージの値が他国より圧倒的に大きいと分かる。したがって日本の食糧輸送が、地球温暖化やエネルギー消費に他国より大きな影響を与えており、改善しなければならないといえるだろう。しかし、フード・マイレージには限界がある。それは、フード・マイレージで考えられるのは輸送についてだけで、生産や包装、廃棄などについては考慮されないという点である。だから、例えば輸入した穀物を餌にしていた食肉や、ビニールハウスで大量にエネルギーを使った作物でも、フード・マイレージは小さいのである。これが、地産地消が必ずしも環境に良いとは言い切れない理由である。

では、地産地消のデメリットやフード・マイレージの限界がある中で、本当に環境に良い地産地消を行うにはどうすれば良いのだろうか。

そこで私は、地産地消に適地適作と旬を組み合わせることを提案する。つまり、地域の自然・気候のできるだけそのままの環境で作れる食べ物を、旬の時期に地域で食べる。その土地の気候・自然に合わないものは作らず、国内の他の場所、または外国から輸送する、ということである。このように考えた理由は、実現と持続ができる範囲で地産地消を行うべきだと考えるからである。確かに、全ての食品を狭い地域で賄えるのは理想的だが、現状では実現が難しい。また、フード・マイレージの限界の例のように、環境への配慮という点で本末転倒な地産地消が行われるのを防ぐためという理由もある。

では、具体的にはどのような取り組みをすべきなのだろうか。ポール・ロバーツは、「需要に供給が付いていくのは確かであり、消費者が究極の決定者でもあるのは事実」という4)。このことからも分かるように、消費者のもつ役割は大きい。だから、価格だけでなく、環境問題や安全性など生産まで意識した判断と選択ができる消費者を育てることが有効であると考える。そうすれば、地元で適切な方法で作られた食品が持つ価格以外の魅力が認識され、需要が伸び、地産地消が持続可能になるはずである。

具体的な取り組みを三つ提案する。一つ目は、学校給食に地元産の食品を使用することである。実際に私の卒業した小学校・中学校では、地元で生産が盛んな大根を使った練馬スパゲッティという献立があった。人気もあり、私が練馬の大根を知るきっかけになったのは練馬スパゲッティだったように思われる。また、練馬産の大根に愛着も湧いた。このように、子供にも大人にも身近な給食で地元産の食べ物を使うのは、地元の農業に興味を持ってもらうのに有効だと考える。さらに、給食は全国で5千億円の食材需要があるといわれている5)。そのため、多くの学校で地場農産物を使用すれば、地産地消を大きく進めることができる。しかし現状では、平成22年度の学校給食における地場産物を使用する割合は25.0%だった。主な課題には、「量が揃わない」「地場農産物の種類が少ない」などがある。しかし、学校・生産者・小売店・農協などが連携して不足がないよう補い合えば、改善できると言われている。平成27年度には30%以上を目指していて、安定供給のできる体制が整えば、さらに割合を伸ばすことが可能である6)。

二つ目は、農業体験である。学校のイベントとして行うほか、エコツーリズムに農業を取り入れるのも良いだろう。私は小学校で大根を育て、たくあん作りをした。また高校では、さつまいも・じゃがいもの栽培をした。また家族旅行で、ブルーベリー狩りなどの収穫体験もした。これらの体験から私が感じたことは、自分で体験すると記憶に残りやすいことと、食品から生産まで意識できるようになるということである。まず、記憶に残ることの効果は、大変さやおいしさの記憶が、気温や周囲の風景の記憶と結びつき、旬・訪ねた地域の特産物の知識が身に付くことである。これによって普段の買い物でも旬や適地適作を意識することにつながる。次に、食品から生産まで意識できる理由は、大変さを体験したり、生産者と直接交流したりするからである。私も小学校のときの大根栽培で農家の方にお世話になった。その後近所で買い物をするときに練馬産の大根を見ると、地元の誰かが作っているのだということを想像するようになった。実際に生産を体験することや生産者に会うことは、生産まで意識した選択につながるのではないだろうか。

三つ目は、第6次産業である。6次産業化の意義は、「一次産業としての農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す」ことである7)。ただ地元産のものを売るのではなく、より魅力的な商品にでき、さらに安定的に売る機会・場を確保できる。また、地元だけでは作物の種類が豊富でなかったり、季節によって手に入らない作物があったりするが、レストランや弁当などならば、地元らしさや季節感の演出になり、短所を長所に変えることができる。販売所やレストランなどは利用もしやすいため、消費者に地元の農産物の魅力に気づいてもらう機会になることが期待できる。私たち消費者は、そのような店・販売所を知り、継続的に利用することからまず始めるべきである。

このように、これらの取り組みは、知識と地元の農業に関心を持った消費者を育てるのに有効である。そして、そのような「決定者」が増えれば、「需要に供給が付いていく」から、環境や安全性、品質にこだわった食品がより増えていくと考える。

私にできることは地元で作られた食べ物を、生産まで意識を向けながら選ぶことである。私一人の選択は小さいことだが、一人一人の選択が集まれば大きな変化になり得る。また逆に、大きな変化を起こすには一人一人が変わらなければならない。正しい知識を持った消費者となり、本当に環境に良い地産地消に協力していきたい。

参考文献

1) 西野司.“第2部5章 地産地消は安全安心、しかもエコロジカル”.『食べ方で地球が変わる-フードマイレージと食・農業・環境-』.山下惣一・鈴木宣弘・中田哲也編、創森社、2007、p.118-119
地産地消推進検討会.“地産地消推進検討会中間取りまとめ- 地産地消の今後の推進方向-(案)”.平成17年8月.
http://www.maff.go.jp/j/study/other/renkei/pdf/10_3.pdf

2) 中田哲也.“第1部2章 フード・マイレージの考え方と計測方法”. 『食べ方で地球が変わる -フードマイレージと食・農業・環境-』.山下惣一・ 鈴木宣弘・ 中田哲也編、創森社、2007、p.22

3) 中田哲也.“第1部3章 輸入食料のフード・マイレージと環境負荷”.『食べ方で地球が変わる-フードマイレージと食・農業・環境-』.山下惣一・ 鈴木宣弘・ 中田哲也編、創森社、2007、p.35-36

4) ポール・ロバーツ.食の終焉-グローバル経済がもたらしたもうひとつの危機.神保哲生訳、ダイヤモンド社、2012、p474

5) 農林水産省生産局技術普及課.“学校給食への地場農産物の利用拡大に向けて:(取組事例から学ぶ)”.平成20年10月.
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gizyutu/tisan_tisyo/pdf/kyusyoku_21.pdf

6) 農林水産省.“学校や老人ホームの給食における地場産物利用拡大に向けた取組手法の構築等に関する調査結果の概要”.平成24年2月.
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/gizyutu/tisan_tisyo/pdf/22_itaku.pdf

7) “地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律:前文”
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika/houritu/pdf/joubun3.pdf