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受賞論文【優秀賞】オーガニック・コットンに夢を託して

今治明徳高等学校矢田(やた)分校 2年 平尾貞人 2年 矢野聡恵 2年 和田あかり 2年 小池亜紀

1. はじめに

私達は、2006年からカンボジアのバッタンバン州タサエン村の子供たちに文房具や楽器を贈ったり、井戸を掘る資金(1基7万円・現在までに4基分28万円)を支援するなどの活動を続けてきた。タサエン村はカンボジア西部、タイと国境を接している村で、内戦が最後まで続き、今でも村のあちこちに地雷が埋められており、カンボジアで最も貧しい地域の一つにかぞえられている地域である。2009年、私たちは、このタサエン村の「真の自立につながる支援とは何か」というテーマに取り組むことにした。それは、タサエン村で住民参加型の地雷処理活動をしている高山良二さんから「援助をすればするほど自立から遠ざかる」という言葉を聞いたからである。発展途上国への援助は、「途上国の人たちが、自分たちの手で、村の復興を成し遂げるようになること」が最終的な目標である。それでは、タサエン村では、どうすることが村人自身の手による村の復興につながるのであろうか。こうした疑問の答えを探しに私達は、夏休みを利用してタサエン村を訪問した。

2. 愛媛の自立支援活動

2008年~2009年にかけて、タサエン村では以下の取り組みが行われていた。まず、四国中央市の紙加工会社㈱JPCが葬儀などに使用するお悔やみ袋の現地生産を開始した。この作業はすべて手作業であるため、特別な施設を必要としない。まじめで誠実なタサエン村の女性達にふさわしい仕事であった。この㈱JPCの進出によって約60人の雇用が創出された。現在では、専用の工場を建設し、将来は100人の現地女性の採用を目指している。また、最終的には、タサエン村の人達だけによる会社経営を目指しているそうだ。女性たちの収入は仕事内容によって異なるが、一か月44ドル~99ドルの収入になっているという話であった。

次に、松山市の桜うづまき酒造の技術アドバイスによる芋焼酎の製造が試みられていた。カンボジアの焼酎は米を原料にした米焼酎である。しかし、タサエン村では米は作れない。作物の大半がダムロンと呼ばれる芋である。大量にとれた芋は隣国タイの商人に安く買いたたかれている。この大量にとれる芋で焼酎を作り、付加価値をつけて隣国タイに輸出しようと計画をしている。さらに、村営の工場を作り、この焼酎製造をタサエン村の地場産業として育成していくことを目指す。この計画は、量産体制の確立や販売ルートの確立など現実的な問題を抱えている。そこで、私達は、タサエン村の自立復興のために、新たに、「焼酎事業立ち上げ準備基金」を設けて、募金をつのり支援することにした。現在約22万円の募金が集まっている。

3. 地雷原に綿花を~今治からの提案

2010年3月、松山市でバッタンバン州の州知事を招いて愛媛県とバッタンバン州の友好交流協会が設立された。私達も、唯一の高校生として参加した。この設立のきっかけになったのが、この芋焼酎であった。さらに、私達はこの場で新たな出会いをした。それは、同じ今治市の丸山要さんとの出会いである。丸山さんは、今治市でタオル会社を経営すると同時に、カンボジアの地雷原に綿を植える活動を支援されている。昨年、カンボジアで採れた綿を約10トン輸入され、綿糸に加工されている。もちろん、フェア・トレードの価格である。(商業的には若干の赤字だったそうだ)そして、今度の出会いをきっかけに、タサエン村の地雷を除去した畑に綿を植えようと活動を開始されたのである。

4. オーガニック・コットンとは

オーガニック・コットンとは有機栽培綿という意味である。3年間、農薬や化学肥料を使用していない畑で有機栽培された綿花や、そうした綿花から作られた製品のことをいう。今、カンボジアでは巨大な中国資本によって、大規模な綿花栽培が行われている。綿の栽培は他の農作物に比べて手間がかかる。その手間を省くために大量の農薬が使われ、さらに綿花を機械で収穫するために枯れ葉剤が使われている。綿花の刈り取りは、機械を使って行われているが、実はこの刈り取りに、枯れ葉剤が使用されている。綿は約1か月にわたって、下から徐々に花を咲かせる。有機栽培では、この咲いた花を農民が一つ一つ摘み取っていく。一方、大規模栽培では枯れ葉剤を使って、葉っぱを一度に枯れさせ、一挙に機械で摘み取る。枯れ葉剤を使った綿花が体にいいとは思えないとは当然である。タサエン村では、こうした枯れ葉剤を使わず、農薬や化学肥料も使わず綿花を栽培しようと計画している。いわゆるオーガニック・コットンを栽培しようとしているのである。

オーガニック・コットンには次のような長所がある。

  1. 一般の綿花より高い価格で取引される。
  2. 高い農薬や化学肥料を買わなくて良い。また、農薬や化学肥料を使わないために、土や水、空気を汚染しない。したがって地球環境にやさしい。
  3. 刺激が少なく、やわらかくやさしい肌触りがする。
  4. 農薬や除草剤による呼吸器系や神経系の病気におかされることがなく、農民の健康にも良い。

逆に、オーガニック・コットンの短所を挙げてみると、

  1. 機械を導入できないので、人件費がかかる。
  2. 農薬を使わないので、虫に食われたりして、収穫量が減少する。
  3. 国際機関に認証されるまで、3年間、収入減に耐えなければならない。また、認証を受けるために多額の費用がかかる。

などの点が、あげられる。
大量の農薬・化学肥料はカンボジアの大地を汚染し、また、地下水や空気なども汚染する。やがて土壌環境の調和を壊し、大地は回復力を失い、畑は痩せてしまう。一方、オガーニック・コットンの生産を目的とした有機栽培では、化学肥料の代わりに、牛フンや野菜クズなどで堆肥を作り使用する。手間ひまをかけて雑草とりもする。健康で安全な大地と未来を背負う次の世代に受け継ぐことができる。さらに、環境を保全するという価値観を育み、カンボジアのより良い未来をつくる持続可能な発展に貢献することができる。

5. 2010年度の取り組み

そこで、今年、次の方法でオーガニック・コットンの試験栽培に取り組むことにした。

  1. 今年は地雷を処理したあとの畑4か所(1か所1ha×4)に綿の種を植える。
  2. 綿の2期作が可能かどうか実験する。そのために、種植えの時期を7月、8月、9月、10月と場所によってずらして種植えをする。
  3. バッタンバン市の近郊にある孤児院の所有する2haの畑にも、オーガニック・コットンの栽培を試みる。
  4. 収穫した綿花はフェアトレードの価格ですべて引き取り、日本で綿糸に加工する。赤字になっても実行する。
  5. 今治は江戸時代、「綿替木綿制」という制度があって、農民が藩に納入した綿を商人が買い取り、商人が綿と道具を農民に貸し付けて白木綿を生産するという制度があった。そこで、私達も学校で綿の栽培に挑戦する。

芋や大豆の栽培以外にこれといった現金収入の道をもたないタサエン村の自立のために、雇用の創出が目的である。オーガニック・コットンの栽培には多くの手間がかかり、雇用の創出という目的には合致している。今回の取り組みで何人の雇用が創出できて、いかほどの収入増につながるかが課題である。ちなみにタサエン村の村人の収入は以下のとおりである。

  • 日雇いの農民=1~2ドル
  • 地雷処理のデマイナー=約2.5ドル
  • (株)JPCの女性管理職=約3.5ドル
    (2009年現地取材による)

6. おわりに

多くの人がオーガニック・コットンの服を着るようになれば、オーガニック・コットンの消費量が増え、必然的に栽培量が増加する。そうなれば、タサエン村のような貧しい地域の農民が巨大資本に翻弄されることなく、自らの大地を汚すこともなく、自らの身を守りながら安定的に収入を得ることができるようになる。子供を学校に通わせることができたり、家を建てたり、新鮮な水を手に入れることができるようになる。また、先進国の我々もその恩恵を被ることができる。だから何よりも、オーガニック・コットンを良く理解し、世に広く啓蒙することが大切である。

カンボジアには、ベトナム戦争以前には綿花栽培の伝統があり、タサエン村にも綿花栽培が定着するのは容易であろうと思われる。しかし同時に、中国資本や韓国資本の餌食にもなりかねない危険性もはらんでいる。日本の弱小資本とわずかばかりのボランティア精神が巨大な外国資本の効率主義と戦って勝ち目があるのかいささか心もとないが、村人たちとの信頼関係を築き、先進国が取り組むべき環境保全という大きな目標にむかって頑張っていきたい。同時に、雇用の創出と現金収入にこだわるのではなく、持続可能な発展を重視する価値観を共有し、環境、文化、経済、教育など様々な分野において両国の友好を深めていきたい。さらに、発展途上国の環境を保護することは、単に途上国の利益にとどまるのではなく、先進国を含めて地球規模での利益につながることを認識することが大切であると私達は考える。