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受賞論文【佳作】地産地消で低フードマイレージを実現

長﨑県立諫早農業高等学校 食品科学部(3年 笹木 伶於)

私達は、諫早農業高校の食品科学部で活動している。そして、主に地元の農家の方から農産物を使った新商品開発の依頼を受け、様々な加工品を開発している。そのようななか、新上五島町の人口減少が大きな社会問題になっていることが分かった。

長崎県の西部に位置する五島列島。その北端にある新上五島町では、地域の伝統食である「かんころ」が生産されている。「かんころ」は「かんころ餅」として使われたり、保存食として使われたりする五島の伝統食である。「かんころ」とはさつまいもを薄切りにして、茹で干し保存食としたものである。

私達は、授業を通して事前調査の必要性を学んだ。「かんころ」の生産方法に学ぶために実際に新上五島町を訪問した。そこで、長崎県の離島では、年々高齢化が深刻化になり人口が減少してきているとのことだった。そして、地域の伝統食である「かんころ」も離島の人口減少により生産者が減少してきていることが新上五島町の現地調査で分かった。また、さつまいもを収穫したあとの蔓には利用方法がなく、処分するのが大変であることもわかった。

そこで私達は、「かんころ」の消費拡大や知名度を上げ、しかも利用方法がない蔓を使い農業の「もったいない」を無くす取り組みの必要があると考えた。そして、新上五島町の「かんころ」を使った新しい商品を開発し、処分されている蔓の有効利用することにした。

まず、私達は、新上五島町の「かんころ」を再現するために新上五島町の方のアドバイスを元に「かんころ」作りに取り組んだ。さつまいもの形状や茹で時間を変えて、18通りの組み合わせで比較検討を行った。

結果は、さつまいもの形状は繊維に沿って5mm間隔で切り、沸騰したお湯で10分間煮沸し、扇風機で3日間乾燥させたものが最も良かった。

私達は新商品のコンセプトを考える中で、新上五島町を含む長崎県の教会群が世界遺産登録を目指していることを知った。そのようなことから、新上五島町にキリスト教を伝えた宣教師がフランス人だったことから「かんころ」を使ったフランス菓子を作ることにした。10種類の試作品の配合を変え、100パターンの試作を行い、試食アンケートや新上五島町の役場の方や地元菓子業者との検討を行った。検討の結果、「ロッシェ」「フロランタン」の2つに注目が集まり、具体的な配合割合の検討を行うことにした。

「フロランタン」には五島の特産品である五島うどんを製造する際に生じる「ふし」という使われなくなった粉を再利用されており、新上五島町の特産品が1つの商品につまっている。今まで廃棄されていた食品を再利用することにより食品の無駄を減らすことができた。また、「ロッシェ」は商品化に必要な栄養評価や保存検査を行った際に賞味期限が45日間持つことが分かった。また、カリウム、食物繊維、ビタミンCが豊富に含まれており、生活習慣病にも有効な製品が完成した。また、県内のコンテストであるシュガーロード長崎スイーツコンテストで「諫早商工会議所女性会長賞」を受賞することができた。

廃棄されている材料を使用することで、食品リサイクルを実現させた。また、地元五島の農産物等を利用することで「地産地消」を推進し、フードマイレージの低い、地球環境に優しい商品を完成させることができた。

さらに、賞味期限の長期保存を可能とさせることにより食べ残しを防ぐことができる。このことから、食品ロスを抑えることが可能となる。

こうして地元の食材を使用し、廃棄物の再利用、栄養価が高く、品質的にも安心できる商品が完成した。そして、商品名を「かんこロランタン」「かんこロッシェ」として、新上五島町の菓子業者である「洋菓子のTOKI」と「菓子の木」で2017年1月に本校で地元マスコミや関係者を招き、商品発表会を開催して、大きな反響があった。その後、新上五島町のスーパーや道の駅などで新たな新上五島町のお土産品として完成することができた。

また、「ロッシェ」「フロランタン」は現在、地元の食材を使用することにより地産地消を達成することができ、フードマイレージも小さいことが言える。さらに、新上五島町の「かんころ」の消費拡大が見込まれ、新上五島町の産業においてもさらなる活性化が期待される。

また、本商品は地元だけでなく東京新橋にて開催された長崎県特産品展で紹介された。さらに、アメリカ・シアトルにある環境保護庁(EPA)や地元の高校生が小学生達に環境学習の研修会を主な活動としているWILDプログラムに招待され、私達の活動を紙芝居で紹介し、その活動の様子がアメリカのFacebookにも掲載されるなど、海外への情報発信が進んでいる。

次に、「かんころ」を作るなかで必要のないさつまいもの蔓の農業廃棄物の有効利用方法について検討をした。本来、蔓は活用方法がなく焼却処分されてしまう。しかし、処分するのには手間がかかってしまい、二酸化炭素が排出され環境にも悪い。そこで、私達はさつまいもの蔓を使って新たな製品を作ることにした。さつまいもには繊維が多く含まれていることがわかり、私達は繊維を有効活用出来る和紙に注目した。和紙の作り方は、地元の和紙工房を訪問し、実際に繊維の抽出法や漂白法、紙漉き技術について学んだ。

和紙製造で学んだ方法を活かし、さつまいもの蔓から繊維を抽出することにした。蔓の煮沸時間や叩きの検討を行い、さつまいもの蔓を沸騰したお湯で10分間煮沸させ、重曹でアルカリ煮沸を行ったあと、繊維を叩いたものが最も良い方法であることが分かった。さつまいもの繊維は柔らかいため繊維の処理は容易であった。しかし、さつまいもの繊維は本来の和紙の繊維である楮よりも柔らかいため紙漉き枠から外す際に破れてしまい、何度も紙を漉きなおした。そこで、紙漉き後の紙を外す方法を変えてみた。結果は、紙漉きを行った後に紙漉き用の枠とそのまま天日干しさせたものが最も良いことが分かった。そして、本来の和紙と変わらないさつまいもの和紙を完成させることができた。

そしてこのさつまいもの和紙を用いて五島の伝統民芸品である「ばらもん凧」を作っている。今後、新上五島役場と密接に連携し地元の活性化に繋げていきたい。

現在、包装容器の削減やリサイクルなどでゴミの排出を抑える取り組みがされている。そこで、さつまいもの和紙が利用できるのではないかと考えている。商品のラベルを作り全てさつまいもから作った商品として普及させることができれば、天然のものを使うことにより廃棄する際に地球にやさしいラベルとなる。これらの研究成果を普及させることで、処分されていた食品や農業廃棄物を有効活用することにより、廃棄物が減ることや食糧問題について地球環境問題に配慮することができた。

今回の研究内容として、農業廃棄物の有効利用法や「かんころ」の消費拡大という目的で取り組んできた。さつまいもの全てを使うことにより、五島の活性化だけでなく、蔓を処分する手間も省け、焼却処分するのに比べて二酸化炭素量が少なくなる。結果として、廃棄物を生じない「ゼロ・エミッション」を達成することができ、付加価値もつけることもできた。

本研究成果である商品を普及させるためにウエスレヤン大学や上五島町役場と連携し、地元のイベントでPR活動を行うことができ、販売実績として8ヶ月で18,000個売り上げることができた。そして、地元農家やかんころ生産者の活性化が期待され、世界遺産登録後のお土産品としての「かんころ」のPRにも貢献することができ、なにより地球環境問題や食品の問題に少し役に立つのではないかと思われる。

今回の活動を通して、さつまいもの基礎知識や栽培方法を学ぶことができた。また、長崎県特有の離島と連携した商品化を通して、世界遺産PRのための海外を含めたグローバル的な新しい地域活性化を学ぶことができた。

今後は、商品やさつまいもの和紙を海外の観光客の方がわかりやすい商品としての改良多言語表記に置き換えていくことや「かんころ」を使った新たな商品を開発することで、「かんころ」のさらなる消費拡大に繋げていきたい。また、他に発生する農業廃棄物でも同じことができるか検討していき農業を活性化させ、地球環境にやさしい農業となるように私達農業高校生が手助けできるようにしていきたい。

そして、継続して「オール長崎」として地産地消を進めていくためにも、長崎県、新上五島町、農業生産者、企業、大学と密接に連携し、さらなる活性化を目指していきたい。

地元の食材を使用する「地産地消」の推進、フードマイレージを念頭に置いた商品開発。生産過程で生じる廃棄物を活かしたゼロ・エミッション。様々な困難を私達高校生という若い力で一歩一歩乗り越えていき、農業の無駄をなくし、「もったいない」の精神でこれからも継続していきたいと思う。