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受賞論文【最優秀賞】効率のよい配達で環境への負荷を減らせるか!?

お茶の水女子大学附属高等学校 2年 塩田 花純

私は、学校の探求の授業で効率がよく、環境に配慮した配達について調べている。効率の良い配達を実現する方法として私は以下の3つを考えた。

1つ目は、再配達を減らすことである。最近宅配業者の過重労働の原因として、再配達が問題視されている。しかし、再配達が問題になるのはそれだけではない。再配達をするということは、一度行った家にもう一度行くということでありうるため、その分トラックは無駄に走り、エネルギーを消費し、二酸化炭素を排出するということである。そのため、再配達を減らすことができれば効率の良い配達につながり、環境への負荷を減らすこともできる。そもそも、再配達はどのような頻度で行われているのか疑問に思い、SNSを通じて高校生を中心にアンケートを取ってみたところ113件の回答が集まり、「毎回」と回答した人の割合は全体の18.6%、「2回に1回程度」と回答した人と「3回に1回程度」と回答した人が同じ割合で全体の15.9%、「利用しない」と回答した人は全体の23.9%という結果となった。この結果から、再配達の問題は想像していた以上に深刻なものだと思った。そこで、再配達を減らす仕組みとして私が提案したいのは宅配ロッカーである。

最近では、JRの駅などにも宅配ロッカーが設置されるようになってきている。宅配ロッカーが普及すれば、再配達を無くすことは可能である。

そこで私は、宅配ロッカーについて詳しく知るため、夏休みを利用して、ヤマト運輸の本社を訪問させていただいた。ヤマト運輸では、パックシティジャパンと共同でPUDOという宅配ロッカーを各地に設置していることが分かった。PUDOの目的として、再配達の代わりに利用するということももちろんあったが、それ以外にも一人暮らしの女性は宅配業者と対面するのが怖いと感じるために非対面式のPUDOを利用するということもあるといった。再配達が増える原因として、化粧をしていない女性などが居留守を使い、再配達を依頼することも少なくないことがわかった。宅配ロッカーを活用すればこのような問題も解決できる。PUDOの特徴を知るため、実際に設置場所へ行ってみた。PUDOは購入時や再配達依頼時に送られてきたパスワードを入力するだけで荷物が受け取れることがわかり、とても便利なものだと思い、もっと普及させるべきであると考えた。

ところで、海外では再配達問題に対してどのような対策をしているのだろうか。アメリカでは、六年前からアマゾンがHubという宅配ロッカーを駅やコンビニをはじめ、大学のキャンパスや駐車場などに設置するようになったことがわかった。ここから、再配達の増加に困っているのは日本だけではないことがわかる。このHubの最大の特徴はアマゾン以外の宅配業者の宅配物も受け取り可能というところである。

このようなロッカーが住宅に設置されるようになれば、環境への負荷を大幅に減らすことができる。そこで、SNSを通じて「宅配ボックスがあったら利用しますか?」というアンケートを取ってみると、64.6%と半数以上の人が「利用したいと思う」に回答していた。また、「利用しないと思う」と回答した人の割合は17.7%と少数であった。この結果から、宅配ボックスが設置されていけば利用者は自ずと増えていくのではないかと考えた。しかし、現状では、分譲マンション棟には普及しつつあるものの、戸建住宅に宅配ロッカーを設置している例はほとんど見かけない。調べてみると、パナソニックが2016年11月から福井県あわら市で戸建て住宅103世帯を対象とした宅配ボックス実証実験を行っていることが分かった。その中間報告では、「10月には49%だった再配達率が、12月には8%となっており、回数にして299回分、労働時間にして約65.8時間分の再配達を削減することができた」とかかれていた。二酸化炭素排出量の減量想定値は1回あたり約0.46㎏に値するという。宅配ロッカーを設置したのにもかかわらず、再配達がゼロにならなかったのは、宅配業者や住人が宅配ロッカーについて認知していなかったことに起因しているため、宅配ロッカーが普及していけば解決していく問題である。個人宅宅配ロッカーを普及させるためには、国が援助金を出し、個人宅やマンションを建てる際には宅配ロッカーを設置することを義務化していくなど思い切った措置をとることが必要なのではないかと考える。

2つ目は、宅配のやり方を変えていくことだ。ヤマト運輸でのお話では、時間指定がある場合には、配達効率が悪くても時間を優先するということだった。しかし、現状は約半分の人が時間指定を利用しているにもかかわらず約2割の人が再配達を依頼している。この数字を見ると、時間指定はあまり意味がないのではないだろうか。また、何よりも、多くの家が集まる住宅街でトラックが行ったり来たりしている様子を見ていると、二酸化炭素を無駄に排出していると感じざるを得ない。

効率の良い配達をするための方法として、例えばヤマト運輸では団地やマンションにいくつかの拠点を用意し、工場から拠点まではトラックを使い、拠点からは自転車や台車などで宅配を行っていることがわかった。この拠点を団地やマンションだけでなく、住宅街にも設置していけば、トラックの無駄な走りがなくなるのと同時に二酸化炭素の排出を抑えられる。

他にもヤマト運輸では「客貨混載」と呼ばれる効率の良い配達を行っている。これは、人口の少ない過疎地域で運行している路線バスに荷物を載せてもらうという仕組みだ。これによって、ヤマトはトラックを走らせるときに排出する二酸化炭素を削減することができ、バス会社にも収入が入るため、ライフラインを存続させられるというメリットが生じる。このアイディアは、とても経済的で環境にも良い。

この発想を都市部にも応用することは出来ないのだろうか。都市部であっても朝と夜の混雑する時間帯を避ければ検討の余地がありそうだ。

3つ目は、宅配に直接は関わらないところでの工夫だ。たとえば、宅配を利用して資源回収を行うというのはどうだろう。父や母が子供のころは、新聞や古雑誌、ボロ布などの資源を回収する小型トラックが定期的に巡回していたと聞く。また、5月にパルシステムを訪問した際、商品を宅配すると同時にごみとなった容器やカタログの回収を行っていることを知った。最近スーパーでも資源回収ボックスは良く見かけるが、私の家を見てもわざわざスーパーまで持っていくくらいならゴミに棄ててしまおうと考える場合が多い。しかし、自宅まで取りに来てくれるなら資源回収に協力しようとする人は増えるのではないか。

また、資源回収率を増やすための工夫として、回収した資源をリサイクルして作ったトイレットペーパーなどを消費者にプレゼントしていけば、より資源回収への意欲も高まるのではないかと思う。たとえば、アマゾンやヤマト運輸のような宅配の場合、段ボールのような梱包材が大量に出る。段ボールはリサイクルすることによってまた新しい段ボールを作ることができるため、永久的なサイクルを作ることができる。宅配業者は非定期的であるため、会社を問わず、宅配トラックが来たタイミングで段ボールを回収できる体制をつくっていくのが理想的である。

以上の再配達を減らすこと、宅配のやり方を工夫すること、宅配を利用して環境に良い取り組みを行うことの3つを実現できれば、配達はもっと効率よく、環境に配慮したものへと変わっていくはずだ。しかし、これらを実現するのは簡単ではない。そこで、宅配業者のみならず、そのサービスを利用しコストを負担する消費者の意識を変えなければ、実現は不可能である。また、宅配ボックスを設置するなどといった対策をとる前に、消費者一人一人が時間指定をした時間には家にいるようにしようなどといった再配達を減らす意識を持つことが重要である。そこで、私はSNSなどをうまく活用し、現在再配達率が非常に多くなっていることを伝え、効率の悪い宅配の状況や改善策を発信していき、宅配会社と消費者の意識改革を行いたい。

<インタビュー>
ヤマト運輸株式会社
姫野麻紀様(2017年8月2日)
パルシステム生活協同組合連合会
上田信仁様(2017年5月12日)

<参考文献>
パックシティジャパンHP(閲覧日8/2)
http://www.packcity.co.jp/company_profile
アマゾン宅配ロッカーPub(閲覧日8/7)
https://japan.cnet.com/article/35105006/
パナソニック宅配ボックス実証実験(閲覧日8/7)
http://shopping-tribe.com/news/35636/
パルシステム資源回収(閲覧日8/8)
http://www.pal-system.co.jp/guide_palsystem/reuse_item.html
段ボールリサイクル(閲覧日8/8)
http://www.danrikyo.jp/publics/index/101/&anchor_link=page101_310#page101_310