研究開発機構

「子どもらしさ?それとも、ADHD 症状?」研究開発機構 檀ユニットの研究成果をプレスリリース

2015年07月13日

理工学部教授(人間総合理工学科)檀 一平太が代表を務める、研究開発機構「認知脳情報活用研究ユニット」の研究成果について記者会見を行いました。

子どもらしさ?それとも、ADHD 症状?―個人レベルの脳機能検査でADHD症状:「落ち着きがない・待てない」の可視化に成功!―

光を用いた無侵襲の脳機能イメージング法である光トポグラフィを利用して、注意欠如・多動症(ADHD)の中心症状(落ち着きがない・待てない)を個人レベルで可視化することに成功しました。定型発達児がもつ多動・衝動性は、「子供らしさ」と表現されますが、ADHD においては「病的な症状」に分類されます。従来のADHD 診断と治療効果の検討は行動観察が中心であり、しばしば「子どもらしさ」と「症状」の判別が困難でした。その結果として、「気づきのおくれ」につながり、学習の遅れや引きこもりなど、さらなる問題を生じる可能性が高まってしまいます。このため、ADHDの症状を判別するための客観的な手法が求められてきました。
今回の実験では、6歳から14歳のADHD 児30名・定型発達児30名に、行動抑制ゲーム(Go/Nogo 課題)をしていただきました。これは「落ち着きがない、待てない」というADHD の症状を計るのに適した課題です。ゲームの長さは約6 分間です。この際に、行動抑制ゲーム施行中の脳活動変化を、光トポグラフィ(日立メディコ・ETG4000)によって計測しました。この検査の結果、定型発達児の右前頭前野で脳活動の上昇がみられましたが、ADHD児ではみられませんでした。右前頭前野は、行動抑制機能に最も関与するといわれる領域です。そこで、脳活動変化を反映する酸素化ヘモグロビン値に「基準値」を設定したところ、ADHD 児を感度・特異度ともに80%以上という高い精度で判別できることを確認しました。感度80%とは、10 人のADHD児がいたとしたら、その内8 人を見逃さずに検出できるという意味です。特異度80%とは、ADHD でない児童が10 人いた場合、そのうち8人をADHD でないと判別できるという意味です。
このように、今回、ADHD 児の多動・衝動性に関わる症状を非侵襲的で簡便な方法で可視化する客観的な方法を見出しました。今後はこの計測システムをより使いやすいものにするとともに、実際の診断での使用できるかどうかを慎重に判断するために、より大規模な調査をおこなってまいります。

 

本研究は、自治医科大学との共同研究によって実施されました。また、本研究内容は、オランダのエルゼビア社の臨床脳神経科学専門誌、NeuroImage: Clinical誌に掲載されます。