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平成29年度 中央大学学術研究奨励賞受賞者一覧

(順不同・敬称略)

氏名
(ふりがな)
所属身分
研究業績等の内容(要旨) 他機関からの受賞
○受賞名
○授賞機関
○受賞日
奨励賞推薦理由(要旨)
深町 英夫
(ふかまち ひでお)
経済学部・教授
2016年刊行の岩波新書『孫文 近代化の岐路』は、近代中国の父として大陸・台湾の双方で高く評価されてきた革命家・孫文の評伝である。同書は、中国民主革命の創始者であるとともに、一党支配体制の主唱者でもあるという、二つの顔を持つヤヌスのごとき孫文の思想と生涯を、最新の研究に基づき活写している。 〇第1回林同春記念・孫文記念館学術賞
○公益財団法人 孫中山記念会
○2017年11月12日
公益財団法人孫中山記念会は、孫文および近現代日中関係史に関する資料の収集・保存・公開および調査研究を行い、近現代の中国および日中関係に対する理解を深めることにより、日中両国の学術文化交流に寄与することを目的とする団体である。同会から事業委託を受け、日本で唯一の孫文を研究する学術団体として孫文研究会が、孫文に関する資料の収集・調査、孫文および日中関係についての理論的・歴史的な学術研究、その成果の刊行、ならびに広く一般市民を対象とする出版・映像活動などを行っている。
孫中山記念会は今年度、山口一郎記念賞(2005年~2014年)の趣旨を引き継ぎ、孫文研究ならびに関連する研究に顕著な成果を上げた研究者への記念賞授与を目的に、元孫中山記念館副理事長・元神戸華僑総会会長の林同春氏の遺族からの寄付をもとに、「林同春記念・孫文記念館学術賞」を新たに設けた。その第1回の授賞対象となったのが、当該候補者の著書『孫文 近代化の岐路』(岩波書店、2016年)である。
同書は、世界各国における最新の発掘資料や研究成果に基づいた、孫文の評伝である。孫文は国民党と共産党の双方から尊崇されてきたため、従来の研究は両党の政治的立場に規定・影響されたり、「国父」「革命の先駆者」といった人物像の当否に、議論が収斂することが多かった。このように政治的な毀誉褒貶を離れて同書は、中国社会の最周縁部から身を起こしたため、想像上の血縁共同体たる「漢人」に帰属意識を抱き、世界最先端の体制を樹立することによって、この民族が「中華」の地位を回復することを望んだ、異端の革命家と孫文を捉える。それゆえにこそ、辛亥革命という千年に一度の大変動に際して、さながらマレビトあるいはトリックスターのごとく孫文は、アジア最初の共和国を樹立し臨時大総統に就任するという、余人には果たしえぬ役割を果たしたという。しかし、新国家は安定的な体制の確立に成功しえなかったため、孫文は民主主義を実現するという目的のため、一党独裁という手段を提唱するようになり、さながら古代ローマの二つの顔を持つ、ヤヌス神のごとき革命指導者となった。孫文の死後に後継者たちは、彼が示した民主と独裁という相矛盾する二本の道を、いかにして歩むのかをめぐって試行錯誤を続け、それは今日の中国大陸・台湾・香港における、政治体制の模索の源流を成したというのが、本書の結論である。総じて本書は、孫文の革命生涯を俯瞰的に描出するのみならず、中国近代史の全体的な流れを概観するとともに、現代への展望までも得られるよう配慮された点に意義があり、その著者として当該候補者を中央大学学術研究奨励賞に推薦するゆえんである。
なお、同書は韓国語版の出版が決定している。また、今回の授賞に際しては当該候補者の著作として、孫文研究の方法を検討した《深化孫中山研究之”我見”》(《澳門理工學報 人文社會科學版》第19巻第2期. 2016年)、中国大陸・台湾において孫文研究が持つ政治的意味を検証した《孫中山偶像解釋權的變化》(《聯合早報》2017年1月2日)、孫文のアジア観を分析した《同種同文? 孫中山的亞洲主義話語》(《廣東社會科學》總185期, 2017年)も参照された。
福島 一矩
(ふくしま かづのり)
商学部・准教授
本研究の目的は、管理会計およびマネジメント・コントロール(MACS)、管理会計能力、急進的イノベーションの関係を明らかにすることである。具体的には、MACSのインターラクティブな利用、管理会計能力のひとつと考えられるMACSの利用経験から学習する能力(経験学習能力)、および、それら2つの交互作用が急進的イノベーションに与える影響を実証的に明らかにしている。郵送質問票調査に基づく分析の結果、経験学習能力の高さが、急進的イノベーションを促進することが確認されたものの、経験学習能力とMACSのインターラクティブな利用の交互作用が急進的イノベーションを促進するのは、学習に適した組織文化の強い組織に限られる可能性があることが示唆された。 〇日本管理会計学会学会賞(奨励賞)
○日本管理会計学会
○2017年8月28日
本研究の評価すべき点は、第1に、これまで矛盾した結果も示されてきたMACSのインターラクティブな利用と急進的イノベーションの関係に対して説明を与えた点である。本研究は、近年の研究から推察されるMACSのインターラクティブな利用と急進的イノベーションの関係に関する矛盾した結果に対して一定の説明を与えており、MACSの利用とイノベーションの関係に関する研究に対して重要な意味をもつ研究であると評価できる。
第2に、管理会計能力というMACSの利用とパフォーマンスの関係を説明するうえで有用と考えられる概念についての新たな研究の知見を示した点である。これまで、MACSの利用とパフォーマンスの関係について一貫した結果が得られていないなかで、本論文が用いる管理会計能力という概念には、それらの関係に一定の説明を与えられることが期待される。管理会計能力の概念を用いた議論は可能性を模索している段階とも言えるが、本研究はその先駆的な議論の1つとして位置づけることができる。本研究では管理会計能力の1つである経験学習能力に着目することによって、MACSのインターラクティブな利用と急進的イノベーションの関係に説明を与えられることを示しているが、同様の研究フレームワークを用いることによってその他のMACSの利用、パフォーマンスとの関係も説明できる可能性があり、管理会計研究にとって示唆に富んだ研究成果と評価できる。
以上のような研究の意義・貢献は学会でも評価を受け、若手研究者の研究を奨励するため、管理会計学およびその隣接諸学に関する理論または応用についての優れた論文を表彰する日本管理会計学会学会賞(奨励賞)が授与されている。
後藤 順哉
(ごとう じゅんや)
理工学部・教授
(1) Support Vector Machine (SVM)の汎化誤差に関する統計理論の導入、リスク指標CVaRの脆弱性の改善や、少数の金融資産による運用成績の高いインデックス投資の実現などを目的とした新たなポートフォリオ選択モデルの提案を行った3つの論文
(2) CVaRノルムやdeltoidalノルムなどの多面体ノルムとlpノルムの対応関係や、凸型の経験的リスク関数と正則化関数を用いたSVMの対応関係の明示による、多面体ノルムやロバストSVMの有効性の裏付けを扱った2つの論文
○研究賞
○公益財団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会(日本学術会議協力学術研究団体)
○2017年9月14日
日本オペレーションズ・リサーチ学会の「研究賞」は、当該学会で最も歴史のある賞であり、独創性と将来性に富み、ORの発展に寄与する研究業績を挙げている個人に与えられる賞である。対象となった5つの論文は、いずれも理論と応用の両面においてきわめて優れた研究成果であり、ポートフォリオ選択、SVM、機械学習などの学術分野に大きく貢献していること、さらにそれらの成果が、第一線で活躍する世界的研究者から注目されており、実際彼らの論文や学会発表においてたびたび引用されていることが高く評価されている。
田口 東
(たぐち あずま)
理工学部・教授
田口東教授は、30数年間にわたり、現実社会の課題にオペレーションズリサーチ(OR)の手法を適用する、OR本来の実用研究を実践してきた。現実のデータに基づく精緻なモデル化を行い、ORの高度な手法を駆使して解決策を導き社会へフィードバックするという、氏の一貫した研究スタイルにより、田園都市線の遅れの原因の究明、東日本大震災地域におけるバス時刻表の提案、東京オリンピック観戦客輸送の混雑分析など、意義のある事例研究を数多く発表し、ORの有用性を世の中に知らしめた。 ○近藤賞
○公益財団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会(日本学術会議協力学術研究団体)
○2017年3月15日
日本オペレーションズ・リサーチ学会近藤賞は、学会創立50周年を迎え、我が国のオペレーションズ・リサーチの研究、普及、または教育の分野で傑出した業績をあげた個人またはグループを称え、我が国におけるオペレーションズ・リサーチの発展に資するとともに、この分野を広く社会に周知させることを目的として創設された賞である。2007年の創設以来、この分野で日本を代表する5名の研究者が受賞しており、第6回の受賞者として田口東教授が名を連ねたことは、個人にとどまらず、本学の名声を著しく高めたと言える。近藤賞選考理由として、実学としてのオペレーションズ・リサーチを30数年間にわたって実践してきたこと、具体的には、さまざまな分野の企業からの相談に対応し、意見交換を通じて問題となっている課題の本質を見抜き、オペレーションズ・リサーチの手法を用いて解決策を与える実用研究を多数行ってきたことが非常に高く評価されている。以上の理由から、本学の学術研究奨励賞の候補者として、理工学部田口東教授を推薦する。
中村 太郎
(なかむら たろう)
理工学部・教授
本論文は、人工筋肉を用いた下肢アシストスーツの開発について記述されている。工場や介護現場等、重量物の持ち上げ動作が多い職場での職業性疾病における腰痛の割合は全体の約60%を占めており、腰痛予防対策は労働者の健康確保にとって重要な課題となっている。厚生労働省は腰痛対策の荷物等の持ち上げ動作としてSquat Liftingを奨励しているが効率が悪いため大きな普及には至っていない。そこで候補者らは人工筋肉を用いたSquat Lifting用の非外骨格アシストスーツを世界で初めて開発し、その有効性を実験とシミュレーションにより検証した。検討の結果、本スーツは軽量かつ柔軟でありながら、大きなアシスト効果があることが実証された。 ○The 26th IEEE/RSJ International Symposium on Robot and Human Interactive Communication
The Best Paper Nomination Award (Best 3)
○IEEE International Symposium on Robot and Human Interactive Communication Awards Committee
○2017年9月5日
本国際会議は世界最大の学術団体であるIEEEが主催する人間とロボットのインターラクションやコミュニケーションに関する権威ある国際会議である。本会議では300件以上の提出論文からフルペーパー査読によって厳選された約220件程度の論文が国際会議での発表することになった。さらに査読者によって推薦された7件の論文より表彰委員会が5件に絞り、そこから3件がbest paperとしてノミネートされた。ノミネートされた3件の論文は全体の1%程度の割合となりすべての論文が受賞対象となった。
また、本論文の内容は企業と大学の共同プロジェクトである。この中で候補者は、プロジェクトの最高責任者であり、研究統括・提案・技術的な開発指導を担当している。
芳賀 正明
(はが まさあき)
理工学部・教授
理工学部応用化学科芳賀正明教授は、「電気化学手法による金属錯体のナノ機能の解明とナノデバイスへの応用」に関して、新規の機能性錯体の設計・合成および電極表面への積層・組織化技術、さらには電子デバイスへの応用について、独創的で先駆的な業績を挙げて、国際的にも高い評価を得ている。とくに、分子積層技術は、光メモリやキャパシタなどのメモリデバイスとしての機能を研究して成果をあげており、最近、Nature Nanotechnologyに論文が受理された。 ○Shikata International Medal Award
○日本ポーラログラフ学会
○2017年11月20日
日本ポーラログラフ学会(会員数約260名)は63年の歴史をもつ電気化学の基礎から応用までをカバーするたいへん活発な学会である。日本ポーラログラフ学会「Shikata International Medal Award(志方国際メダル)」はポーラログラフィーの原理発見者ヤロスラフ・ヘイロフスキー(チェコ,1890-1967,1959年ノーベル賞)と共同でポーラログラフ分析装置を完成し、日本におけるポーラログラフィーの発展に尽くした志方益三(1895 - 1964、 京都帝国大学農学部教授,1956年学士院恩賜賞)の功績を記念して創設された賞で、「電気化学測定法、電気化学反応、電気化学分析法その他の電気化学関連領域において顕著な業績を上げ、世界的に高く評価されている国内外の研究者」が受賞対象となる。
芳賀正明氏は、長年新規の機能性錯体の設計・合成および電極表面への積層・組織化技術、さらには電子デバイスへの応用が認められて、Shikata International Medal Award(志方国際メダル)を受賞された。学術研究奨励賞の候補者として相応しいと考え、推薦させていただく。
山田 泰之
(やまだ やすゆき)
理工学部・助教
本研究では海底下探査の低コスト化のため、海底を三次元的に掘削移動可能なロボットの実現を目指す。海底下での三次元移動に必要な屈曲性を有する推進ユニットと、それを搭載したロボットを開発した。本ロボットは、土壁を把持する機構と推進力を発生させる空気圧シリンダで構成される推進ユニットと屈曲可能な屈曲ユニットから構成される。この推進システムと屈曲ユニットの基礎性能を実験的に確認した。最後に、これらを備えた掘削ロボットを用いて、曲管での走行試験を実施して、提案するロボットが屈曲状態でも推進移動できることを示した。 ○Best Technical Paper Award
○Clawar association Limited
○2017年9月12日
本賞は、候補者が2017年9月に開催された、国際会議CLAWAR2017において発表した研究論文「Development of a Flexible Propulsion Unit for a Seabed Excavation Robot」に対して授与された。この賞は、発表者個人が受賞対象である。本研究は、深海底に埋蔵されているレアアースの効率的採取を目的として、海底地中内を掘削しながら進行するミミズ型ロボットに関する研究である。本報告では、特に掘削進行中に屈曲可能とする機構設計とその実証試験について報告した。地中を掘削進行可能なロボット自体が世界的にもまれであり、掘削深度および屈曲掘削の成功は世界初の実現である。これは、今後必要となるレアアースを低環境負荷で採取するブレイクスル―となりえる研究でもあり、評価に値すると考える。以上の業績が、学術研究奨励賞候補者として相応しいと考え、ここに推薦する。
大橋 正和
(おおはし まさかず)
総合政策学部・教授
ビジネスにおいてテレワーク・モバイルワーク等のクラウド協調空間においてグループ・プロジェクトを実施する場合における非言語オープン及びクローズド・コミュニケーションの効率化を図るためのマルチレイヤ―モデルを構築した。感性コミュニケーションの観点からマルチレイヤコミュニケーションを活用するためのコミュニケーション効率分析をファジー理論により明らかにした。 ○優秀論文賞
○情報社会学会(日本学術会議協力学術研究団体)
○2017年7月29日
候補者は、本研究業績においてグループ・プロジェクトにおけるコミュニケーションのマルチレイヤ-モデル構築、ファジー理論による効率分析の理論、およびメンバーシップ関数の限界質量(変曲点)まわりの安定性に関する理論的分析を担当した。著者らは、2016年度7月に実施された情報社会学会年次研究発表大会において「プロジェクトの構成に関わる不安定要因の研究-要件定義プロジェクトにおける安定性のモデル化について-」で同様の役割をしてプレゼンテーション賞を受賞していることを付記する。
石島 博
(いしじま ひろし)
国際会計研究科・教授
石島教授はファイナンスの専門分野にて、年金をはじめとする資産運用の学術的背景である、①ポートフォリオ選択理論と、②資産価格評価理論という、2大主要テーマについて、精力的に研究・教育を行っている。<受賞1>に係るテーマ①では、景気・不景気といった見えざる経済状態に応じた資産運用モデルの構築とその有効性を実証し分野への貢献を行った。<受賞2>に係るテーマ②では、過去34年分の日経新聞全紙面に反映されたセンチメント(市場心理)を指数として計量化し、資産価格形成に与える有意な影響を実証し分野への貢献を行った。そうした業績は、単著著書4冊、今回も含め受賞5回、査読付論文28編、その他論文14編、国際会議発表44回、国内会議発表73回、研究代表者としての科研費取得(基盤(B)、国際共同研究加速基金等)に反映されている。 <受賞1>
○ジャフィー論文賞(応用部門)(JAFEE Best Paper Award)
○日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)
○2017年2月18日
<受賞2>
〇日本FP学会賞・優秀論文賞
〇日本FP学会(日本学術会議協力学術研究団体)
〇2017年9月16日
石島教授は、<受賞1>について、金融工学研究に関する先駆的な学会である「日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE, 1993年設立)」より、Asia-Pacific Financial Markets誌(Springer)に掲載された論文“The Regime Switching Portfolios”について、「ジャフィー論文賞」を授与された。
<受賞2>について、パーソナルファイナンスの実務応用研究の拠点となる学会「日本FP学会(2000年設立)」より、応募論文『人々の心理が株価を動かす~センチメント分析のパーソナルファイナンスへの応用~』について、「日本FP学会賞・優秀論文賞」を授与された。
どちらの受賞論文も共著であり、石島教授はリサーチデザインから、理論と統計の各モデルの構築、および論文執筆まで主要な役割を担っている。また、どちらの論文でも若手研究者との協働作業を通じて、石島教授は次世代のファイナンス研究者を育成する教育の側面も重視している。
ファイナンス分野の権威ある2学会での連続受賞は、石島教授の研究がファイナンス分野で高度に先導的な貢献をしていることを示している。同時に、連続受賞は、石島教授の研究に対して、ファイナンスの学術と実務への波及効果を期待している証とも言えよう。
以上、本学建学の理念である「實地應用ノ素ヲ養フ」を研究・教育活動にて実践し、本学の研究・教育水準の高さを連続受賞により広く世の中に示した貢献を高く評価し、石島教授を本奨励賞の候補者としてご推薦申し上げる次第である。