社会科学研究所

公開研究会「わが国におけるごみ問題の現状と展望」開催報告(社会科学研究所)

2016年12月19日

2016年10月28日(金)、多摩キャンパス研究所会議室2にて、下記の公開研究会を開催しました。

【テーマ】 わが国におけるごみ問題の現状と展望

       -自治体における循環型社会形成政策の課題と展望-

【講 師】 松波 淳也(法政大学経済学部教授)

【日 時】 2016年10月28日(金)16:00~18:00

【場 所】 中央大学多摩キャンパス研究所会議室2

【主 催】 研究チーム「グローバル・エコロジー」(社会科学研究所)

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【要 旨】

 松波氏の報告「わが国におけるごみ問題の現状と展望-自治体における循環型社会形成政策の課題と展望-」は、ごみ問題の基本構造が、まず廃棄物「量」の増大と「質」の多様化にあるとして、一つに適正処理コストの高騰と、もうひとつは社会的費用の上昇問題があるとしている。つぎに最終処分場の枯渇については効率的利用の問題があり、そして最後に不適正管理(空間的・時間的管理可能性の有無)、すなわち外部不経済の問題と廃棄物の量の増大があるとしている。

 こうしたごみ問題の基本構造を前提にして、自治体における循環型社会形成政策の基本軸として、①3R+適正処理の優先順位に即した政策展開すなわち「上流」からのごみ削減、②短期的政策、中長期的政策の位置づけ、③地域特性に即したきめ細かい政策、とりわけ繁華街、住宅地、小規模事業者、オフィス街、観光地等を考慮にいれた自治体の特性に即した対応、④環境政策の3手法、すなわち社会的手法、法的手法、経済的手法を指摘した。

 家庭ごみの有料化については、家庭ごみ有料化を実施した自治体は減量化に成功しているとし、有料化政策のみを単一に実施することはなく、戸別収集方式の導入など資源回収システムの整備や変更、説明会の開催など住民に対してPRと周知徹底、環境教育、啓発の努力など、有料化政策導入に伴うポリシー・ミックスが必要な点を挙げた。そして東京都の23区のごみ収集方式としての品川区と豊島区の戸別収集の事例を挙げて、そこにおける経費の問題や分別収集の区分細分化の問題を検討した。

 わが国の集団回収方式に関しては、①行政コストの削減、②地域活動の活性化、③資源としての品質の向上、④リサイクル意識の醸成がメリットとして指摘できるとした。

 そして最後に、循環型社会の形成における国際的な視点を提示し、国際的な廃棄物管理の方法、海ごみの問題などに言及した。グローバル化した社会にあって、ごみ問題も国境を超える問題であるという意味で、国際的循環型社会の可能性は重要な視点であるとした。

(主催チーム記)