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人文科学研究所

人文科学研究所主催公開研究会開催のお知らせ(「歴史の中の「個」と「共同体」―社会史をこえて」チーム)

日程
2017年10月5日(木)16:30~18:00
場所
多摩キャンパス 2号館4階研究所会議室2
日程
2017年10月5日(木)16:30~18:00
場所
多摩キャンパス 2号館4階研究所会議室2
内容

講 師:  森 光 研究員 (中央大学法学部教授)

テーマ: 「ローマの法学と居住の保護」

要 旨:

  古代ローマの元首政期(前1世紀~後3世紀前半)のローマ市では、
人口の増大により都市の高層化が進んでいた。例えばポンペイ
やヘルクラネウムの遺跡にみられるように、共和世紀から帝政
初期の住宅は、通例1・2階建てあった。ところが、帝政期に入
りローマ市の人口が増大する中で、20メートルをこすインスラ
と呼ばれる高層建築が出現する。こうした高層建築はローマ近
郊のオスティア遺跡から発見されている。居住用建物のこうし
た変化は、ローマ市に住む人々の居住環境に大きな変化を及ぼ
した。こうした変化については、最近の考古学研究の中で明ら
かにされつつある。
 ところで、この時代のローマの法学は、6世紀に編纂された
「学説彙纂」(Digesta)(いわゆる「ローマ法大全」の一部)を
通して後世に伝わり、現代の法学の基礎を形成した。この時代
の法学の産物がフランスやドイツを経て日本に持ち込まれ、わ
れわれの民法という形をとっている。本報告では、ポンペイや
オスティア遺跡からわかる住環境の変化に、当時の法学がいか
に対応したのかということを考察してみたい。史料的にいうと、
「学説彙纂」(Digesta)を近年の考古学成果を踏まえて解釈し直
すことを目指すことになる。法的にみると、居住者は、建物所有
者、用益権者、賃借人、無償居住者にわけることができる。本報
告では、こうした人々の居住がいかに法的に保護されたという観
点からこの時代の法学の全体像を捉え、これを通じてローマ法の
実像に迫りたい。
 なお報告者は、今年の2月に『ローマの法学と居住の保護』(20
17年、中央大学出版部)を出版した。今回の報告は本書の内容を
中心とするものである。

企画実施名義

 

人文科学研究所研究会チーム歴史の中の「個」と「共同体」―社会史をこえて」