Eventイベント

人文科学研究所

人文科学研究所公開研究会開催のお知らせ(「性と文化」チーム)

日程
2016年2月7日(日) 13:30~17:30
場所
中央大学駿河台記念館 580号室
日程
2016年2月7日(日) 13:30~17:30
場所
中央大学駿河台記念館 580号室
内容

報告者:岸 まどか 氏 (東京大学人文社会系研究科・文学部 英語英米文学専修課程 助教)
タイトル:ジャック・ロンドン『野生の呼び声』における「不自然な婚礼」のエクスタシー
概要:「進歩主義時代(the Progressive Era)」とよばれた米国の世紀転換期は、第二十六代大統領セオドア・ルーズベルトの牽引のもと、生と性の徹底管理を旨とするフーコー的な生政治が、戯画的な形で具現化された時代でもあった。進歩主義時代に自らを「狼(Wolf)」と称した作家、ジャック・ロンドンの『野生の呼び声(The Call of the Wild)』の読解を中心に、本発表は種間愛、特にロンドンが「他の動物達の親族関係」と呼んだ種族を超えた親密性が、進歩主義時代が描く進化と強制的異性愛のナラティブを撹乱しようとする様子を考察する。ロンドンの狼への同一化の欲望をジル・ドゥルーズとフェッリクス・ガタリが「不自然な婚礼(unnatural nuptials)」と名指した関係性の文脈から捉え直すことは、作家が進歩主義時代の政治によって「人間」とし&産出された自己の放棄のなかに見Gス生政治からの逃走の可能性を、ほのかに照射するかもしれない。
参照テクスト:Jack London, The Call of the Wild

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報告者:大田 美和 研究員(文学部教授)
タイトル:文学は性暴力の被害者を救えるか?
概要: William Morris のThe Wood beyond the World (1894)はヒーローが魔術を使う二人の女(「女王」と「侍女」)によって未知の世界に誘い出され、試練の末に恋愛を成就し、王権を獲得するロマンスである、とされる。本発表では「侍女」をたびたび襲う言語化されない不安と恐怖に注目して、このロマンスをフェミニズムとクィアな視点から精読してみたい。北欧神話の骨太で健康的な物語という骨格の中に、性暴力の記憶と再生というトピックを、リアリズム小説とは異なる形でいかに忍び込ませたかを解き明かす作業は、暴力的な支配に対する異議申し立てを性の歓びを否定することなく行うという困難に挑戦したブレイク、シェリー、ハーディの系譜の中で、モリスがいかに詩、近代リアリズム小説、ロマンスという異なるジャンルを架橋したかを考 える=業にもなるだろう。
参照テクスト:William Morris, The Wood beyond the World (1894)(邦訳『世界のかなたの森』晶文社)

*チームメンバー以外の方(学部学生・大学院生含む)の参加も歓迎いたします。

主 催:人文科学研究所研究会チーム「性と文化」