Eventイベント

人文科学研究所

人文科学研究所公開研究会開催のお知らせ(「中国文化の伝統と現代」チーム)

日程
2016年2月1日(月) 15:00~18:00
場所
多摩キャンパス 号館4F 研究所会議室2
日程
2016年2月1日(月) 15:00~18:00
場所
多摩キャンパス 号館4F 研究所会議室2
内容

報告1
テーマ:「八〇年代中国の時代状況と《新啓蒙》叢書」
報告者:村上道子 準研究員

報告要旨:中国80年代の思想界は一般的には,文革後の改革開放の下,比較的自由な雰囲気の中で多くの雑誌・叢書類が出版され,さまざまな思潮が展開されたといわれる。しかし自由な雰囲気といっても,経済やイデオロギー政策を巡る改革派と保守派の攻防は激しく, 小平は〈経済の改革〉と〈政治の保守〉を使い分け,改革派と保守派を時に応じて利用しながら改革開放政策を進めた。特にイデオロギー面では,文革以前から続く左派イデオロギーは根強く,1978年の「真理基準論争」を通して公認されたはずの〈毛沢東の軛からの思想解放〉は左派からの執拗な攻撃によって次第に骨抜きにされていく。《新啓蒙》叢書は,このような80年代末期の88年10月から89年4月にかけて出版された。執筆陣に胡耀邦周辺にいた党内民主派や学者らを擁し,80年代前中期に提起され左派に批判されたヒューマニズムや疎外の問題,さらに経済改革の問題等も論じている。総じてこの叢書は,思想の解放と独立思考を訴え,改革開放初期の志を蘇らせようとしたように思われる。
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報告2
テーマ:「劉暁波の思想と行動――『現代中国知識人批判』を中心に」
報告者:及川淳子 氏(法政大学客員学術研究員)

報告要旨:本報告では、『中国当代政治與中国知識分子』(邦訳『現代中国知識人批判』)を中心に、劉暁波の思想と行動を読み解く手掛かりについて考察する。劉暁波(1955-)は1989年の天安門事件の際に脚光を浴びた知識人で、近年はノーベル平和賞を受賞した獄中の民主活動家として世界的に認知されるようになった。しかし、彼の初期の活動は文芸批評、とりわけ中国の知識人批判が中心であり、「黒馬(ダークホース)」という異名をもつ評論家として1980年代の中国文壇に登場した。劉暁波が獄中で執筆した裁判の陳述書「私には敵はいない」の核心部分は、天安門事件の直前に発表した「六・二ハンスト宣言」が原点であり、知識人とはいかにあるべきかという批判精神に貫かれている。劉暁波が『現代中国知識人批判』で論じた「知識人としての必要不可欠な要件」は、中国の知識人問題のみならず、知識人と社会の関わりという普遍的な問題を議論する上でも、示唆に富むものと考える。

主 催:人文科学研究所 研究会チーム「中国文化の伝統と現代」