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人文科学研究所

人文科学研究所公開研究会開催のお知らせ

日程
2014年12月6日(土)13:00~16:00
場所
駿河台記念館 310号室
日程
2014年12月6日(土)13:00~16:00
場所
駿河台記念館 310号室
講師
真鍋  晶子(まなべ あきこ) 氏 (滋賀大学・教授)
 
内容
テーマ 「エズラ・パウンドのモダニズム」
要 旨: 1922年は英語圏の文学にとって画期的な年でした。アイルランド出身パリ在住ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ(Ulysses)』と、アメリカ出身でのち英国に帰化するT.S. エリオットの『荒地(The Waste Land)』が出版されたのです。『ユリシーズ』は小説、『荒地』は詩におけるそれ以前の常識を覆す作品です。この二作品を生み出す原動力となったのが、アメリカ出身で生涯の大半をヨーロッパで過ごすことを選んだエズラ・パウンドなのです。二人の才能を見出し、アドヴァイス、編集、出版のための尽力をしたパウンドがいなければ、20世紀の文学の方向は異なったものとなっていたでしょう。そして、 “Make it new.”をモットーにしていたこのパウンド自身が詩人として、独特の世界を展開します。パウンドのライフワーク『詩篇(The Cantos)』から、何カ所かをご一緒に読み、パウンドがめざした世界、「地上楽園(paradise terrestre)」を見たいと思います。
パウンドの『詩篇』には、漢字、能からの抜粋など東洋、日本のものがちりばめられています。パウンドは、明治初期に、お雇い外国人教師としてボストンから東大へやって来て、1908年ロンドンで急死したアーネスト・フェノロサが残した遺稿を通して東洋、日本を知り、それを自らの文学世界に融合しました。1915年前後にパウンドが秘書を努めていたアイルランドの詩人・劇作家イェイツは、象徴主義やリアリズム演劇に行き詰まりを感じていました。イェイツはパウンドを通じて、日本の能を知り、新しい演劇を生み出しました。このような、英米モダニズムにおける「日本」の意味についても紹介します。
また、パウンドを一生師匠として尊敬し敬愛し続けたヘミングウェイの文学原理とパウンドとの共通性も見逃せません。
このようにパウンドを中心におけば、英語圏のモダニズム文学の縮図が見えてきます。
パウンドのモダニズム文学に対する功績、斬新かつ世界文学の伝統にのっとった詩人パウンドの展開する詩世界、さらに日本がモダニズムにもたらしたことを検討することで、英米愛モダニズム文学を鳥瞰し、それと同時に、緻密なパウンドの詩の言葉を細かく読むことで、パウンドの言葉に誘われて広大深淵な世界をご一緒に旅させていただきたいと思います。
主  催:人文科学研究所 研究会チーム「モダニズム研究」