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インターナショナル・ウィーク
【2013日越国際シンポジウム】ISPONREとグリーン戦略ー天然資源環境省戦略計画研究所副所長 グエン・テ・チン教授

司会(松谷研究員):それでは、次にベトナムからの共同研究者のゲスト報告です。チン教授は、元ハノイ国民経済大学(NEU)の環境学部長でしたが、環境省の研究所が設立されたときに、同研究所の副所長に就任されております。それではチン教授、「ISPONREとグリーン戦略」のご報告をお願いします。 

(チン教授):ただいまご紹介いただきましたチンです。中央大学の緒方教授、出席者の皆様、本日はこのような機会をいただきましてありがとうございます。ただいま、司会の松谷先生からご紹介がありました通り、緒方教授と日越共同研究として「グリーン経済」、そしてそれによる「グリーン成長」という研究を行っております。

本日の発表でありますが、私が所属している天然資源環境省戦略計画研究所(ISPONRE)の紹介と、ISPONREで行っております「グリーン戦略」についてお話しをさせていただきたいと思います。特にベトナムにおける取り組みについてお話しさせていただきたいと思います。発表の内容は、配布資料に従って、特に3つの点についてお話しさせていただきたいと思います。まず第1がISPONREという政府機関の紹介、2つ目はISPONREが行っている「グリーン戦略」について、3つ目はISPONREと「グリーン成長」に関して、日本と共同で行っている取り組みについてお話ししたいと思います。

ISPONREは2006年に設立されました。ISPONREの組織構成でありますが、8つの調査部門、3つのサポーティング・ユニット、そして4つの独立組織からなっております。お手元にある資料がISPONREの組織図(次頁)になります。図の上の部分に所長がおりまして、その次が副所長で、私の任務です。ベトナム政府・天然資源環境省(MONRE)の諮問機関であります。そして政府に対して長期的な環境計画を提供しております。また国際的な手法や理論について調査・研究をすすめ、その査定や評価を行っております。さらに天然資源管理に関する経済的な分析や計画策定を行っております。そしてコンサルティングを行い、あるいは研修も行っております。

ISPONREが主に着目している領域についてご紹介します。まず1つ目が天然資源に関する戦略や政策のためのデータベースを構築しております。2つ目が経済市場に基づいて天然資源管理を行っております。そして3つ目が天然資源管理の戦略策定です。

Our Structure

そしてこれらが実際の作業に落とし込んだ環境計画になります。1つ目が天然資源環境の予測・見通しの策定です。2つ目として、天然資源や環境の戦略・立法なども作業のひとつとして入っております。3つ目、天然資源環境管理に関する主要な課題の見極めを行うことです。そして4つ目、新しい管理ツールを開発です。

こちらには、私どもの政策あるいは法律制度の策定におけるいくつかの成果を列挙しております。最初の成果として、2010年までの環境保護に関する国家戦略を策定し、2020年までのビジョンを策定しました。2つ目の成果といたしましては、「環境保護2005年」という法律を策定しております。また2008年には、「生物種多様性法」、そしてこちらは、「気候変動に関するベトナムの評価レポート」であります。そして最後に天然資源環境管理に市場経済に基づく取り組みを適用する決議なども成果の一つとして挙げさせていただいております。

さらにこちらは、「環境保護2005年のためのガイダンス法令」、2020年に向けた海洋天然資源と環境の持続可能な利用と保護の戦略策定、そして2011年から2020年を見据えた天然資源と環境の戦略であります。

こちらにはISPONREの主要な成果をあげさせていただきます。まず1つ目が生態系に関するプロジェクト、2つ目は照明市場が変革をしていく中で段階的に赤熱ランプを廃止していく取組み、そして3つ目はSMEと呼ばれる中小企業向けの「グリーン・プランニング」で、計画を実際の行動に落とし込む取り組みです。こちらは環境および生物種多様性に関する中核的な施策です。

次は、天然資源と環境の政策方針と環境パフォーマンスのプロジェクトの状況であります。こちらはISPONREの国内における取り組みと成果を示しておりますが、2008年から2013年の間に全部で28のプロジェクトを実行しております。そのうち国家レベルのものが1つ、省庁・閣僚級レベルのものが24つ、市民レベルのものが26つになります。そしてこの最初のものが実際に調査や理論の分析を行ったもの、2つ目が実際に政策の枠組みを作ったものであります。こちらについては、実際に環境保護に関する国家戦略などを調査・評価し、その施行までになっております。また土地に関するいろいろな法律の改正、あるいはその補足法の制定に向けた調査や問題の洗い出しなども行っております。

また実際に「生態村」モデルを開発するにあたって、科学的手法をベースにした実態調査を行っております。そしてこちらは実際の国際的な経験や理論を調査する取り組みであります。もちろん、この国際的経験というものには日本、ならびに中央大学との共同研究も含まれております。

こちらは、ISPONREと「グリーン戦略」関するスライドを映しております。実際に2010年以来こういった活動を行っております。「グリーン・シティ」、「グリーン・ハウス」、また「グリーン戦略」、「グリーン成長」といった課題を議論するために、アメリカや日本にも訪問視察しております。そういった調査の中には、先ほど緒方教授が紹介された「グリーン経済」、「低炭素社会」、「グリーン成長」といった要素が含まれております。こちらの写真は、私と天然資源環境省(MONRE)のメンバーが米国の「グリーン・シティ」を訪問したときのものです。そしてこちらのロゴは「リオ+20」を表しています。つまり「グリーン経済」、そしてその「環境ガバナンス」に注目しております。

実際にISPONREは2000社以上に及ぶベトナムの中小企業に対して「グリーン・アクション・プラン」に関するトレーニングを継続的に行っております。またISPONREはいくつものワークショップも行っており、それに基づく研究も進めております。各国でもワークショップを行っております。

また中央大学の緒方教授とともに取り組んでいるプロジェクトがあります。スライドの左側の写真を見てください。「グリーン経済」を物語る写真でありまして、これは、日本の「カルガモ農法」というエコな技法です。カルガモを水田に放して雑草や昆虫を食べさながら稲作を行っています。こちらはベトナムを訪れている緒方教授でありますが、残念ながらベトナムの水田ではまだ「カルガモ農法」が普及していません。これではまだ「グリーン経済」とは言えないかも知れませんね。ベトナムで、もし化学肥料を使うようになると、残念ながらカルガモは生きていくことができなくなります。ベトナムの「生態村」モデルを発展させ、もっと多くの農民の間に「カルガモ農法」や「VACモデル」を普及させてゆけば、将来的には緒方教授の横をカルガモたちが楽しそうに泳いでいる姿の写真に撮れることができると思います。

先ほど申し上げた通り、ISPONREは政府に対する諮問機関ですので、実際の国家「グリーン成長戦略」の策定に関するいろいろな助言を行っています。そして、私たちは気候変動という事態にどの国に住む人も直面しています。私どもは気候変動に対しても政策策定に向けた研究をしております。こちらが「グリーン戦略」を実践的に実行している写真です。こちらがベトナムの「生態村」の写真です。そこでは、幾つかの農家でも太陽光発電を使い始めています。

こちらがベトナムにおいて「グリーン成長」の成果として生み出された生産品です。その中には「トロピカル・フルーツ」があります。ベトナムで「グリーンベルト」と呼ばれる緑地帯を設けて安定供給ができるようになれば、将来的には日本にそれらを輸出できると考えております。また日本では「ブランド」と呼ばれる高い技術の製品が知られていますが、日本とベトナムで共同研究を進め、生態地域の特性を活用した安全で安定した食糧供給体制を確保したいと考えています。

こちらは、日本の環境省との会議の写真です。今後の日越友好関係についての話をしています。小泉首相の時代には、Reduce, Reuse, Recycleの「3Rプログラム」について議論を進め、具体化されています。これが東京で共に議論した研究者たちの写真です。こちらの写真に私もおりますが、ISPONREのメンバーも映っております。

最後になりますが、中央大学の緒方教授との共同研究と「日越友好の森」プロジェクトの紹介を忘れてはいけません。2007年に、私のふる里であるゲアン省の人民委員会と交渉して1万ヘクタールの土地使用の許可を確保しました。

(写真1)ゲアン省のプロジェクト・サイトと2007年の「日越友好の森」

(写真1)ゲアン省のプロジェクト・サイトと2007年の「日越友好の森」

緒方教授は、その後毎年、日本の学生やベトナムの学生、現地の村民たちと一緒に、ホーチミンルート沿いのプロジェクト用地で植林活動を行っています。これは、2007年の写真(前頁写真1)ですが、まだ樹木がありません。次の写真(写真2)は、ここに植樹を始めてから3年後(2010年)の写真ですが、樹木が順調に生長しているのが分かります。中央大学の大学院生の森さんがここに映っていますね。その当時は非常に若かったです(笑)。

(写真2)2010年の「日越友好の森」

(写真2)2010年の「日越友好の森」

これは今年の写真(写真3)ですが、ISPONREにおいて中央大学の学生たちとワークショップを行いました。毎年、緒方教授のゼミ学生が環境問題や地域開発問題の新しい問題提起や政策提案を行い、ISPONREの若手研究員と意見交流を行っています。

(写真3)ISPONREにおける中大生とのワークショップ

(写真3)ISPONREにおける中大生とのワークショップ

そして緒方教授には、ベトナムの「生態村(エコビレッジ)」の共同研究をサポートしてもらっています。この後でそれぞれ報告がありますが、トウイ教授、マイン研究員、アイン研究員の現地調査に基づく研究です。そのいくつかを紹介します。こちらは、ナムディン省「生態村」の農家を訪ねた時の写真です。ベトナムの女性たちと中央大学の学生たちが話しています。中央大学の学生が英語で質問するとベトナムの学生がベトナム語に通訳します。こちらの女性はこの「生態村」の居住者です。非常に強い女性であることが見て取れます。緒方教授の奥様と同じくらいでしょうか(笑)。彼女は化粧をしておりません、自然体であります。緒方教授は日本語と英語、彼女はベトナム語で会話をしておりますが、トウイ教授が日本に留学経験があるので、ところどころ日本語に通訳をしています。お互いに理解しあえたと思います。

こちらは、バヴィ(Ba Vi)の山岳地域にある「生態村」を訪問したときのものです。この「生態村」の特徴は、少数民族による家族経営で漢方薬を生産しています。そのために山間部の環境を保全し、森林を管理している「生態村」として有名で、生態系と経済系が共生した新しいモデルです。

こちらは、日本とISPONREの「グリーン経済」に関するコラボレーションの写真です。緒方教授と原山准教授は、ベトナム北部山岳地域、紅河デルタ地域、沿岸砂地での「生態村」において、各世帯にアンケートを配布し、社会調査を実施しております。今後のベトナムの環境政策の貴重な資料になると思います。

(写真4)ゲアン省ファン・ボイ・チャウ生家(記念館)と「南遊(ナムズー)」

(写真4)ゲアン省ファン・ボイ・チャウ生家(記念館)と「南遊(ナムズー)」

こちらの写真(写真4)は、明治時代にベトナムの若者を日本に留学させ植民地からの独立をめざして「東遊(ドンズー)運動」を指導したファン・ボイ・チャウ氏のゲアン省の生家(記念館)を訪問したときのものです。現代では、中央大学の緒方教授が「南遊(ナムズー)運動」として、日本の若者をベトナムに引率指導しています。日本とベトナムの学生たちの国際交流です。こちらはハノイにある日本大使館で内の写真です。向かって左側がベトナム首相、右側が天然資源環境省(MONRE)大臣です。この日は、ベトナム首相が来日する件について意見交換をしておりました。今後もベトナムと日本の友好関係が発展することを祈願しております。

ちょうど時間になりました、ご清聴ありがとうございます。(拍手)

(写真5)ゲアン省の日越共同プロジェクト・サイト

(写真5)ゲアン省の日越共同プロジェクト・サイト