研究支援室(理工学研究所・研究開発機構・CLIP)
教養講座
赤ちゃんを科学する④
文学部教授 山口真美
朝日新聞 2007/10/28 日曜版s7面 朝日新聞社から転載許諾を得ています。無断転載禁止。
どんな色がいい?
赤ちゃんの発達のためには、どんな色や形の玩具を与えるのがいいのだろう。そんな質問を受けることがある。「奇抜な色の方がわかりやすいかも」、「でも情緒発達には、穏やかな色がいいような」。親の悩みは尽きないし、出産祝いを贈る時にも気を使う。
赤ちゃんの見る世界からいうと、まずは赤ちゃんの視力が弱いことを頭に入れておきたい。生後6ヵ月では0.2、生まれたばかりの新生児となると0.02ほどの視力しかない。しかも明暗の差がはっきりしたものの方が見えやすい。穏やかな色は親を和ませることはできても、赤ちゃんには見えない可能性がある。
色を見る能力はどうだろう。面白いことに、色によって区別しやすさは異なる。赤と緑は小さい赤ちゃんでも区別できるが、青と黄色の区別は難しい。生後4ヵ月になれば、これらすべての色の区別は可能となる。
とはいえ色の区別だけが色世界ではない。
立命館大学・北岡明佳教授の協力のもと、赤ちゃん向けのわかりやすい色の錯視図を作ってみた。左の図が錯視である。縦に並んだ四角形は何色に見えるだろう。上から下まで同じ灰色が並んでいるように見えるだろうか。ところが本当は右図の右列と同じ、上三つが緑で下三つはピンクなのである。四角形の周囲を隠して見るとわかるはずだ。
7ヵ月の赤ちゃんは、左図を見て、右図の左のような同じ色の列だと判断するが、
7ヵ月未満の赤ちゃんの見え方はあいまいで、左列にも右列にも見えてしまう
これが色の不思議のひとつである。色の見方は絶対ではない。周囲の影響を受け、色は変わって見えるのだ。こうした色の見方は難しく、生後7ヵ月頃に成立する。
冒頭の質問に戻ろう。赤ちゃんの玩具は何色がいいのだろう。私の答えは、お母さんの好きなものが一番だ。お母さんにとって赤ちゃんと過ごす時間は長く、育児は大変な仕事である。でも長い人生、これほど密に子どもといる時間はない。赤ちゃんの環境は、子育ての環境でもある。昼夜を問わず子育てに従事している人の好みに合わせてもいいのではないか。
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