キャリアサポート

就職活動での5つの思い込み編

株式会社リコー
櫻井 裕邦

はじめに

大学への訪問や学生を含む関係者達の話を聞いている中で「不器用な就職活動」をしている学生がたびたび目立ち、そのたびに「もったいない」と感じてしまいます。
今年の学生は○○とか、最近の学生は○○といった傾向のことではなく、むしろ毎年同じことで損をしていたり余計な回り道ばかりしていたりする状況が見られます。そういう学生の相談を聞いているうちに本音が出てくる状況になってくると、活動における困り事が出てきます。困り事となる理由も大体は同じで、「何をしたらいいのかわからない」「どんな就職をしたらいいのかわからない」「自分に相応しい仕事がわからない」などを根本に残したまま活動していることへの不安です。
そのままでいるのは「わからないことをどう解決していいかわからない。相談できるわけがない」という思いがあるからです。その場合には「活動していれば見つかるかもしれない」という期待を持っていますが、これまでの経験上、もっともらしい理由を作っただけの場合がほとんどでしょう。

一方、就職活動後に、もしくは社会人になってから「こんなはずではなかった」「こんなことなら、もっと前から」「なぜあのとき」といった後悔話を聞くこともあります。そうなってしまう、もしくはなってしまった要素はいくつかありますが、特に大部分を占める要因は「思い込みによる勘違い」であると考えます。

具体的な場面ごとにいくつか述べてみます。

思い込みによる孤独な活動

OB、先輩、キャリア支援課などへの一方的な遠慮があります。手を差し伸べて下さる方々がいても、一方的に遠のいてしまいます。
相手が忙しい(と実際にわかっている)ときに遠慮するのは正しいかもしれないが、相手が「忙しいだろう」(推測)という思い込みで遠慮するのは、どうでしょうか。謙虚は美徳だが、一方的な遠慮は最大の損失に過ぎません。
「悪いと思ったから」「忙しいだろうから」
その場での立場を守るための言い訳にしか過ぎませんし、むしろ思われた側へは失礼な言葉にも受け止められます。

思い込みによる自己分析

長所、短所、得意、興味を正しく認識できるでしょうか。自分をほめたり認めたくない面をあらわにしたりと、かなり抵抗を感じることだと思います。それゆえ、もっともらしい内容を作られる(捏造する)方や、模範的な回答例のようにして誰かの言葉の受け売りが多く見受けられます。
自己分析は面接での印象や回答のためではなく、自分に相応しい仕事探しのための基礎です。この基礎が誤りであると、その上に積み上げた職種や企業、業務内容などが根拠も真実味もない希望になってしまいます。
自己分析で大事なことは、自分の活かし方を理解し、自分に相応しいであろう職種や業種を検討すること。また、短所に対してはどのような改善を試みているのか? どのように向き合っているのか? が大事です。

思い込みによる職種の勘違い

研究、設計、開発、企画、SEなど多様な職種があり、また企業によってもその内容は様々です。なんとなくどんな仕事をしているのかはその名称から推測はできますが、それは本当に正しいでしょうか? 
ましてや企業等に勤めた経験がない学生にとって、その推測は思い込みであることが大きく、そのギャップを知るのは面接や就職して配属されたときです。

思い込みによる会社選びの勘違い

宣伝・広告、商品・サービスなどを受ける利用者側の視点でのみ考えたりしていませんか? 
提供する側の視点で検討しなければ、その会社のことはわかりません。ホームページや求人誌など広く提供されている情報は全体的な要素であり、非常に抽象的です。そんな曖昧な情報から会社の特徴や体質、社風を判断するのは、かなり困難です。
目標を明確にするために第一志望を決めるのはよいでしょう。明確な目標ができると進め方や判断する要素も明確になっていきます。活動中に気になる企業があれば随時、比較検討をして第一志望を判断しましょう。

思い込みによる志望動機

職種を選ぶとき、何を基準(理由)にして考えますか?
「やりたいことは何ですか?」
の問いに対して、「やってみたいこと(興味があること)」を選んでいますか、それとも「得意なこと(できること)」でしょうか。
どちらの選択であっても本心で望んだのであればいいのですが、理由もなく前者を選択する場合があります。特に企業への就職を考えているならば、仕事として成果を出すこと、評価を受けることが大事になります。また、大学までの経験の多くは受ける側にいるので、自分の興味で選択することが多かったかもしれません。
しかし、これからは提供する側になります。例えば、「得意なのは野球だが好きなのはサッカー」という場合、どちらかのプロになるとしたらどちらを選ぶでしょうか。小さいうちであれば好きな方を選ばせたいけれど、人生の選択が目前にある大人の場合、どちらを選んだ方がいいでしょうか。これらを理解したうえで、「やりたいことは何ですか?」を考えてみましょう。

さいごに

落ち着いて考えてみたり、経験者が振り返ってみたりすると非常に当たり前の要素です。しかし当事者となると活動中のわからないことや不安要素から何かしらの「答え」を出そうとして、これらのような思い込みが発生してしまうのかもしれません。しかしそれは自己満足であり、それを本当の「答え」とするためには事実確認が必要です。それを見つけて改善していくことが就職活動です。

そもそも、現在における日本の大学はその性質上、「就職は突然やってくる」ものであり、行動や作業以前に状況の理解や心構えが追いつかないのが実状だと思います。その状態で周りを見渡してみると冒頭で述べた不安に駆られるのは当然のことです。その気持ちから逃げたり、隠したりしようとする思いが「不器用な就職活動」をさせています。

まずは先入観や偏見、そして思い込みを客観的に判断して下さい。そして、

・利用できるものは積極的に利用する。

・広く意見を聞き、考え、自分の意見を確立する。

・調べてわからないことは相談する。

・自分にも相手にもウソをつかない。ごまかさない。

・過去にこだわらず、今できる最善は何かを意識する。

・想いをできるだけ正しく言葉にして伝える努力をする。

を心掛けてみれば良いでしょう。これは就職活動に限ったことではなく、会社でも、生活においても同じですよね。

何よりも、皆さんを支援しようと手を広げている方々がいます。自分を客観的に見て意見を頂けることは自分を理解するための近道にもなります。そのときには厚意に応えるためにも(謙虚な姿勢と礼儀は欠かさずに)積極的に相談して下さい。

前向きな姿勢で頑張りましょう。

以上