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公共政策研究科
公共政策研究科委員長挨拶

「公共知」の構築に一緒に汗をかきましょう

公共政策研究科委員長 細野 助博

細野 助博
公共政策研究科委員長

「娘は美しい馬鹿に育ってほしい」と疾風怒濤の20年代米国社交界の花形デイジーの言葉にトムは黙って佇むだけだった。ハリウッドで二回も映画化されたF.スコット・フィッツジェラルドの傑作『グレート・ギャツビー』の有名な一コマです。女性の高学歴化と社会参加、それと並行して進む晩婚化、非婚化が話題になっています。と同時に妊娠出産を契機に有能な女性は職場を去る姿に、デイジーのセリフが突き刺さります。

身を削って長時間労働に耐える正規労働者、明日を不安の中で迎える非正規労働者の姿。「昨日の写真のコピー」のように、今日と明日も永遠に既得権が続けば良いと思っている一部の職能階層とそれを抜本的に改革できない霞ヶ関。復興と復旧の思いがねじれて呻吟する東北6県の県と市町村。でも、東北は今も人が住んで生活しているのです。いつしか風化する「震災地への思い」といつまでたっても消えない風評に心が痛みます。

国境を越える環境被害、紛争避難民。地球温暖化とエネルギー革命のスピードの乖離。先進諸国とそれ以外の諸国との間に広がる「開発と保全」をめぐる相克。地球温暖化の被害に対する脆弱性は先進国よりそれ以外の諸国で高いことに頭を抱えます。

上の事情の他にも地球が抱える公共政策的課題はまだまだ多いのです。公共政策を学ぶことはこれらの課題に真正面から挑み、実効性の高い処方箋を書くことです。しかし、マーケットメカニズムに信頼を寄せる経済学者、民主的投票システムに信頼を寄せる政治学者を前に、公共政策は一体何に信頼を寄せるべきでしょうか。アダム・スミスが「一見無秩序な私的思惑から、社会的な望ましい結果」が生まれるという神話を発明して経済学が誕生したように、公共知は試行錯誤の実践と学習の中から生まれるという「楽観的な見通し」と、そのために他の学問分野の成果を余すところなく取り入れ活用する「旺盛なる、しかし注意深い真摯さ」に信頼を寄せることから、公共政策学はスタートするのです。

どの学問でも言えることですが、若い人たちの感性とエネルギーが前進させるのです。フラクタル幾何学の創始者、ブノワ・マンデルブロは自伝で「学問は、一度成熟して停滞してから、また奔放な若さへ戻ることもありえる」と述べています。

公共政策研究科は、まだ若い学問「公共政策学」を理論と実践を通じて学ぶところです。公共知を必要としているところは公共部門だけではありません。偽装問題やデータ改ざんで揺れるビジネス界であるからこそ、そこに「公共知」が必要不可欠であることに思いをはせる必要があります。より多くの人たちの幸福を実現するための「公共知」を創造する学問のために心と体の汗をかきましょう。

ところで残念ですが、公共政策研究科は2016年度の学生募集を停止することになりました。しかしながらこの研究科で培った研究と教育のレガシーズ(誇るべき遺産群)は発展的に他の研究科に受け継いでゆきたいと思います。