理工学部

中央大学「第1回水環境に関する国際シンポジウム」を開催

2013年03月22日

「世界水の日」である2013年3月22日、本学後楽園キャンパスにおいて「中央大学第1回水環境に関する国際シンポジウム」が開催されました。
「水」に関連し、本学は、国際化拠点整備事業(「キャンパス・アジア」中核拠点支援)の一環として「国際水環境理工学人材育成プログラム」を2010年度より展開し、高度専門職業人としての水環境・水処理技術者の育成及び世界の学術機関と交流を進めながら、学術的見地から水環境の改善に取り組んでいます。
同時に、このプログラムをアカデミアからの社会貢献・国際貢献のイニシアチブである国連アカデミック・インパクトの「(原則9)持続可能性を推進する」国際的な貢献と位置付け、「持続可能社会のための」高度な水環境・水処理技術者の育成として取り組んでいます。

今回のシンポジウムは、水環境分野で先導的に活躍する研究者、国際水環境理工学人材育成プログラム・コンソーシアム校関係者、プログラム連携企業・公的機関関係者、プログラム履修学生など117名の参加の下、開催されました。

本シンポジウムは、国及び地域、そして地球規模における“水”に関わる諸問題とその解決に向けた科学技術の研究成果の発表と討論を行い、さらに地球規模の温暖化影響のもとにおける水災害の適応策を専門的見地から検討することを目的としました。

シンポジウムでは、冒頭、本学福原紀彦学長から、参加者に対し歓迎の意が表されました。福原学長は、この記念すべき「世界水の日」に、本シンポジウムが開催できること、折しも満開となった桜を取り上げ、この美しい自然の営みには、良好な水環境が欠かせないこと、本学は「国際水環境理工学人材育成プログラム」を通じ、これからも水環境の改善に貢献していきたいと挨拶しました。

続いて、潘基文国連事務総長からのビデオメッセージが上映されました。潘事務総長は、環境保全および貧困と飢餓の撲滅など、持続可能な開発の実現において水は極めて重要な役割を果たし、また、人間の健康と福祉に不可欠であり、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けて要となる。しかるに、現在、安全な飲料水と基本的な衛生施設を継続利用できない人口の割合を半減するという目標に向けた進展が遅く、一様でないことに懸念が残る一方、世界的な気候変動と他の課題が水の量と質に深刻な影響を与えている。こうしたことから、国際水協力年の制定を通じ、あらゆるレベルにおける対話と協力を強化していきたいと語りかけました。

続いて、赤阪清隆公益財団法人フォーリンプレスセンター理事長・前国際連合広報担当事務次長による基調講演が行われました。赤阪氏は、世界の水環境が置かれている深刻な状況、持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)がポストMDGs(Millennium Development Goals)として検討されており、水はその中でも重要な位置づけにあること等に触れ、水の持続性、水環境の改善のために水に強みをもつ日本の大学イニシアチブを期待する旨述べました。

続いて、水問題に関し、先導的活動に従事する専門家による招待講演やコンソーシアム校代表による発表が行われました。日、米、中、韓、ベトナム、タイから講師が立ち、持続可能な開発や災害リスクマネジメント等をキーワードに、今日の課題と解決策、適切な水資源管理とその手法等についての紹介が行われました。

日本の講師からは、東日本大震災と復興に向けた取組を振り返り、「災害リスク軽減に向けた水に関する国際協力の必要性とその推進、日本における河川管理の課題を踏まえた水災害適応型社会形成のためのコンセンサス形成」等について発表が、米国の講師からは、「過去、現在における世界的な降水量の変化と気候変動に伴う降水量の変化とその影響の捉え方」、「流域スケールの大気、水文課程を結合した流域水文気象モデル(WEHY-HCM)の有効性」等について発表がありました。

プログラム・コンソーシアム校である中国の講師からは、「中国における水資源及び水環境の変化」、「華南珠江デルタにおける水課題とデルタ地帯全体を視野に入れた包括的管理の必要性」、「適切な水資源情報管理による水供給力の向上」、「環境変動下における水文過程、応答モデル」、「農村の非特定汚染源負荷事例とそれに対する改善策等」について発表がありました。
同じく、コンソーシアム校の韓国の講師からは、「未来の世代に向けた長期的視点からの「水管理」責任や持続可能性に関する定義等」について発表が、ベトナムの講師からは、「メコンデルタ地帯における2D-FEMモデル大規模洪水氾濫分析結果の有効性と活用可能性」、タイの講師からは、「地域参加型による洪水管理手法」について発表がありました。

各発表や本日のまとめであるディスカッションに際しては、講師に留まらず、会場のからも、今後の水環境政策の在り方、的確な対応策を講じるための各種データ整備などを初めとする多くの質問が出されました。
今回のシンポジウムは、こうした対話と討論を通じ、様々な水課題の所在が明らかにされるとともに、問題解決に向けた近年の世界における活動の成果、巨大災害に対する備えの重要性を本学から発信する貴重な機会となりました。