情報工学科・専攻

2015年度情報工学科・情報工学専攻卒業式を挙行

2016年03月25日

3月24日(木)、理工学部情報工学科の卒業式および情報工学専攻の修了式を執り行いました。
卒業生・修了生の晴れやかな笑顔が印象的な式典でした。

 

この学科・専攻で学んだいくつものことを生かし、それぞれの道を、力強く歩んでいってくれることと思います。

 

皆さま、ご卒業おめでとうございます。

 

2016年3月24日

式辞

情報工学科・情報工学専攻主任 牧野光則

 

  情報工学科卒業生82名、ならびに、情報工学専攻修了生18名のみなさん、本日は卒業・修了おめでとうございます。また、ご出席のご家族・保証人の方々には心よりお慶び申し上げます。ご家族からも巣立つことになり、期待と不安が相半ばする想いかと拝察いたしますが、これからは人生の先輩として、引き続き助言などしていただければと存じます。

 

  1992年の設立から来年で25年を迎えようとする情報工学科にとって、本日は、情報工学科にとって21回目の、情報工学専攻にとって19回目の卒業生・修了生を送り出す日です。皆さんにとっては人生の大きな節目であると同時に、送り出す教職員にとっても一つの節目となります。今日の節目は皆さんにとって、入学時点で期待していたものと同じでしょうか?それとも、良い意味で、あるいは、もしかしたら悪い意味で違ったものになったでしょうか?

 

  この数年間で、ビッグデータを用いた解析や新たなサービスの展開は商業ベースに入りつつあります。また、モノのインターネットと呼ばれるIoTへの期待が大きくなってきており、Machine to Machineを意味するM2MからD2D、すなわち、Device to Deviceのレベルでインターネットにつながろうとしています。一方で、多くがネットワークでつながった社会は、その信頼性とセキュリティの確保が大きな社会問題となってきました。

 

  これら全てに情報工学が関係しています。アルゴリズムに基づくプログラムが内蔵されたコンピュータによる情報処理は、今や至る所で行われています。新たなモノやサービスを構築するのにもコンピュータを活用する一方で、情報ネットワークの信頼性やセキュリティを低下させるのも人間の指示に基づいてコンピュータが行っています。

 

  本来、工学は人や社会に良い意味で貢献するためのモノや仕組みを実現するための学問です。しかし、工学の発展がさまざまな恩恵をもたらす一方で、新たな脅威も生み出している現状は、まだ完全ではない、やらなければならないことが多いと言えるでしょう。

 

  さらには、先ほどの式典において理工学部長・理工学研究科委員長からご指摘あった通り、高度化・高速化するコンピュータによって、これまで人間が行っていた仕事の一部が置き換わりつつあります。人間を楽にするための交替であれば喜ばしいですが、一方で、失業という深刻な社会問題を引き起こす要因ともなります。特にロボット技術の発展による作業の自動化と、ビッグデータ解析の発展による認知科学の高度化は、知識や経験を組み合わせるレベルの作業・仕事ではコンピュータが将来代行することを強く示唆しています。

 

  加えて、情報工学に関する産業は比較的身軽、かつ、文化などの固有の制約が少ないため、容易に国や地域を越えて移動します。このため、現在発展途上国、準工業国と呼ばれている国の多くは、国のインフラ整備と産業振興の両面からIT技術の普及促進に力を入れており、担い手となる人材育成に熱心に取り組んでいます。皆さんは、近い将来、自分だけでなく周囲を豊かにしたい・発展させたいと大きな夢と希望を強くもつ人と、時には協力し、時には競争することで、自らの存在意義を示す必要に迫られるでしょう。

 

  このように、知識と経験を組み合わせることはコンピュータに置き換わりつつある状況下で、皆さんは人間同士の国際的な競争にさらされることが確実だと我々は考えています。その準備はできているでしょうか?コンピュータが代行することが当面あるいは永久に難しく、かつ、自らの存在意義を示せる立ち位置や方向性を皆さんは見つけているでしょうか?

 

  皆さんにはまさに釈迦に説法ですが、コンピュータはプログラムによって動き、プログラムはアルゴリズムによってその動作が定義されます。コンピュータはデータベースに収録されたアルゴリズムを取捨選択できるかもしれませんが、新しいアルゴリズムを考案することは人間にしかできません。同様に、これまで誰も試さなかったことを試そうと思うのも人間の領域と言えるでしょう。すなわち、考えぬくこと、無から有を生み出すこと・生み出せること、が皆さんに求められていることだと私は強く思います。学科や専攻は考えぬくことや無から有を生み出すことに不可欠な知識や経験を提供する場であると私は信じています。そのような場を十分に活用されたでしょうか?

 

  もしかしたら、学生生活は省エネ型だったかもしれません。必要な単位をそれなりの勉強で取得することが多かった人はこの場にどのくらいいるでしょうか?卒業論文や修士論文としてまとめた研究では、どのくらい考えぬいたでしょうか?反省すべき点がない人もある人も、ぜひ自らの行動を振り返り、なすべきことをなして欲しいと思います。

 

  中央大学は昨年秋、ChuoVision2025として、10年後の姿とそれへの道筋を示しました。情報工学科・専攻はこのビジョンに直接には言及されていませんが、自らを見つめ、必要だと判断すれば恐れず前に進みます。皆さんが社会人として母校を見た時に、良い意味で変わったな、何か関わりたいな、と思えるよう、努めてまいります。

 

  皆さんの進む道は必ずしも平坦ではないと思いますが、恐れずに進み、続く人への導(しるべ)となられますよう、心より期待し、情報工学科・情報工学専攻教職員を代表して式辞といたします。本日はおめでとうございました。