ドイツ語文学文化専攻

Falk Pingel氏講演会「国際教科書改訂と教科書研究――国際的な共通理解への道?」が開催されました。

2018年10月30日

日 時  2018年10月26日(金)15:00~16:30
場 所  多摩キャンパス3205教室(文学部3号館高層棟2 F)
講演者  Falk Pingel氏(ゲオルク・エッカート国際教科書研究所元副所長)
題 目  Internationale Schulbuchrevision und Schulbuchforschung – auf dem Wege zu internationaler Verständigung?(国際教科書改訂と教科書研究――国際的な共通理解への道?)
使用言語 ドイツ語(日本語逐次通訳つき)


 2018年10月26日に開催された講演会“Internationale Schulbuchrevision und Schulbuchforschung – auf dem Wege zu internationaler Verständigung?”(国際教科書改訂と教科書研究――国際的な共通理解への道?)では、ドイツのゲオルク・エッカート国際教科書研究所(在ブラウンシュヴァイク)にて長く副所長を務められたFalk Pingel氏に、国際教科書対話と教科書研究の歴史と現状についてお話をうかがいました。
 ゲオルク・エッカート国際教科書研究所は、ドイツがフランス、ポーランドなどの各国との間で展開する二国間歴史教科書対話を中心となって担ってきた組織です。講演者のPingel氏は国際対話を通じた教科書改訂の専門家として、これまで、ドイツのほかにも、南アフリカ、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、イスラエル=パレスチナ、チュニジアなど、世界各地の様々な歴史対話、教科書改訂に携わってこられました。
 講演では、第一次世界大戦後に国際連盟のイニシアティヴで本格化し、第二次世界大戦後にはドイツを中心に展開されることになった国際教科書改訂と、それと並行して発展してきた教科書研究の歴史について説明がありました。さらに、従来の教科書改訂では、戦争や国境紛争など国家間関係の記述が対立の中核だったのに対して、近年では国家内部の民族的・文化的・宗教的集団間の対立が焦点となりつつあること、それにともなって政府や国家機関ではなく人権団体や平和研究の組織などが対話に関わるようになったこと、ゲオルク・エッカート国際教科書研究所のような仲介機関の重要性も増しつつあることなど、今日の国際教科書改訂を取り巻く状況の変化についても詳しくうかがうことができました。
 歴史をめぐる解釈の対立は東アジアにおいても大きな問題です。質疑応答では、日本語とドイツ語で次々に大事な質問が出され、ピンゲル氏もこの問題に対する日本の学生の関心の高さと理解の深さに感心していらっしゃいました。

(川喜田敦子)