ドイツ語文学文化専攻

多和田葉子さんの講演会が開催されました

2016年11月14日

日 程:2016年11月10日(木)、11時00分〜12時30分

場 所:多摩キャンパス3352教室(文学部3号館低層棟3階)

講演者:多和田葉子さん

題 目:人間やめたい文学

 

 2016年11月10日(木)に、作家・多和田葉子さんの講演会が、多摩キャンパス3号館3321教室で開かれました。多和田さんは1980年代より日本語とドイツ語で創作を行い、現在はベルリンを拠点に、世界中で活躍されています。両言語の作品に対して、これまでに芥川賞、シャミッソー賞、ゲーテ・メダル、野間文芸賞など、数々の賞を受賞。今年のクライスト賞の受賞も決定しています。

 「人間やめたい文学」と題された講演では、10年前のヨルダンで、ある日本人が多和田さんに向けた、「大切なのは命ではなく、人間です」という言葉を発端として、多和田さんが今日まで紡がれてきた思考をお話しくださいました。「命」「人間」という言葉はそれぞれ何を含意するか。「人間」を「命」よりも大切とする考え方、また逆に「命」を「人間」よりも大切とする考え方は、どのような帰結をもたらしうるか。「人間をやめる」ことは果たして可能なのか。これらの問いをめぐって、『万葉集』『人間失格』『いのちの初夜』などの文学作品を取り上げつつ、日本とドイツの比較を交えて展開されたお話は、人間を大切にしない政治と社会への警鐘を鳴らすものでもありました。

 講演の後には、聴衆との間で質疑応答が交わされました。それに続くサイン会の際にも、学生ひとりひとりの言葉に耳を傾ける多和田さんのお姿が印象的でした。