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法学部
【活動レポート】磯田 芙美/北川 方斉/織田 龍穂/蔀 智恵子

「やる気応援奨学金」リポート(60) インドでインターンシップ(下) 外交と草の根NGO活動学ぶ

農村におけるNGOの役割
法学部法律学科3年 磯田 芙美

経済成長著しいインド。途上国らしく、平日は車やバス、バイクやオートリクシャーが路上を埋め尽くす。そんな息苦しい排気ガスが充満した空気の中でも、ジャスミンの花のつぼみを髪飾りにした女性たちがそばを通ると、インドの自然に根付いた伝統文化の香りを感じずにはいられない。南インドの生活に、花は欠かせないのだそうだ。夫が買ってくる花を妻が髪飾りにする風習は、携帯電話が普及し、IT産業に牽引される経済成長の中でも、変わらず残っている。自然や伝統を重んじる心と、経済成長を享受する心が入り交じったインドで、私は「開発とは何か」そして、「NGOが開発のために出来ることは何か」を学んだ。

社会的発展と経済的発展

チャンナイに1週間滞在した後、夜行列車で七時間揺られ、更に車で2時間ほど走り、農村開発に携わるNGOであるReaching the Unreached(RTU)を訪問した。RTUは、「Unreached」という名前のとおり、「何もなかった」農村に病院を、貯水施設を、家を、そして学校を作った。その農村の周辺は、ココナツやバナナの栽培といった第1次産業しかなく、今でもココナツの葉で編んだ家の住民もいる。インドの都市を見た後だけに、その農村の簡素さが余計に際立った。経済発展により国際社会で地位を高めるインドの裏側には、その発展に追い付けず、ほとんど見捨てられたような農村の存在があったのだ。
その農村に「人間らしい生活」をもたらしたのは、政府ではなく、RTUというNGOだった。彼らが、その名のとおり、ないもの、必要なものから補充していくことで、その村を発展させた。
ここで注意しておきたいことは、その農村は裕福になったわけではないということだ。人々の生活はやはり簡素であるし、水道ではなく井戸で水をくむ。RTUによる少額の融資により、やっと安定した収入基盤を築き、コンクリートで出来た10畳ほどの家に住み、子供たちは無料で小学校に通う。そんな当たり前の生活が出来るようになっただけだ。しかし、それが彼らにとっていかに大きな「進歩」だっただろうか。

ココナツの葉の住居とNGOが建てた住居

私たちの旅程に同行してくれたガイドのランジーさんは、これが「社会的発展」であり、「経済的発展」とは異なるのだと教えてくれた。そして「経済的発展」が更に進んで、「経済成長」となる。開発経済学などを学んだことがなかったため、この説明はとても新鮮で私の心に強く残った。と同時に、インドがどのような状況にあるか、NGOが何に対してコミットしているのかということを簡潔に理解することが出来た。つまり、インド一国としては確かに「経済的発展」が進み、その最前線は「経済成長」のただ中にいるが、国内にはいまだに「社会的発展」すら出来ない人々が、置いてきぼりになっており、格差は広がる一方なのである。これはインド国内だけで済む問題ではない。市場のグローバル化に伴って、南北問題が明確になったことは今日いうまでもない。格差、貧困は世界の問題なのである。それを解決するために、RTUは底辺を持ち上げようとしているのだ。
農村の子供たちの瞳には、日本の子供たちよりも、未来への希望が輝いていた。彼らの中には、大学に行き、IT企業に就職し、これからのインド経済を支える子がいるのかも知れない。しかし、そうであったとしても、ジャスミンの髪飾りは外さないでいてほしい。自然や伝統と共存するインドのすてきな側面なのだから。

社会的弱者への思いやり
法学部国際企業関係法学科3年 北川 方斉

高校時代何げなく手に取った地雷に関する1冊の本。そこには対人地雷禁止条約の成立に向けて活躍したNGOが描かれていた。その時から私はNGOについて興味を持つようになった。そして、今回インドでNGOの現場を見る機会を頂いた。目覚ましい発展を遂げているインド。その一方で貧困という大きな問題を抱える途上国でもある。「途上国でNGOはどんな役割を果たしているのか?」をテーマとし、私はインドへと向かった。

ASS訪問

チェンナイ市内からインドの内陸部に移動して3日目、私たちはAmar Seva Sangam(ASS)を訪問した。周りには山と勢いよく回っている風力発電の風車が見えるだけで、あとは見渡す限り平地であった。日本のODAで建てたリハビリ施設ASSは障害者への支援を目的とし1981年に設立されたコミュニティー型のNGOである。スタッフの方のお話によると、Amar Seva Sangamという名前は、四肢まひであった設立者を診療していた医者の名前にちなんで名付けられたらしい。ASSには病院や職業訓練施設、学校などさまざまな施設があり、私たちはそれぞれの施設を見学した。その中で印象に残った二つの施設について述べたい。
1つ目は知的障害の子供のための学校である。子供たちは各々のレベルに応じて読み書きやかばんなどの製品の作り方を学んでいた。日本で知的障害の子たちと触れ合う機会はほとんどなかったので、最初はどう接しようか戸惑ったが、子供たちが元気にあいさつしてくれたのでその後は普通に接することが出来た。普段は障害を持った方に対して特別な目で見ないよう心では思っていたものの、実際に目の前にすると接し方に迷っている自分がいて、少し恥ずかしく思った。
2つ目は、身体障害者のためのホステルの施設である。ここでは、事故に遭われて身体障害者となった方のお話を実際に聞くことが出来た。職業訓練をある程度受けて技術を身につけた方は表情も明るく元気にお話をされていたが、この施設に来てまだ日が浅い方は少し悲しげな表情をしていたように見えた。ほかのメンバーとも話し合ったが、精神面でのケアの充実がもっと必要であると感じた。私自身中学生の時に腰をけがし半年間野球部の活動を出来ずつらく悔しい思いをしたが、その時1番の支えとなったのは家族や友人など周りの励ましだった。彼らは突然の事故で障害を背負うことになり、その精神的なショックは計り知れない。難しいことだが彼らの思いを聞き、精神的にも支えてあげる存在がもっと必要だと思った。
施設を巡り終え私はチェンナイ市内で見掛けたある男性を思い出していた。彼には両足がなかった。腕だけを使い多くの車やバイクが行き交う中を移動する彼の姿は、私にとって衝撃的な光景であった。日本では車いすに乗っているか、若しくは義足を付けている身体障害者の方しか見たことがなかったからだ。彼は恐らく路上で生活しているのだろう。ASSで出会った知的障害の子供たちや身体障害者の方たちは教育や訓練を受け自立への道を歩んでいる。しかし、もしASSの援助がなければ彼のように路上で生活しているかも知れない。日本であれば福祉政策の中で救われる人々が、インドではNGOによって救われている。その事実を知り、NGOは政府に比べれば小さな存在かも知れないが、途上国でその果たしている役割はとても大きなものだと感じた。
私は今まで障害者の方と触れ合う機会はあまりなかった。特別な障害もない自分は正直彼らのような社会的弱者の存在をあまり考えず生きてきたと思う。インドでのインターンシップは私に社会的弱者へもっと目を向けるきっかけを与えてくれた。本来彼らを救うべきは政府である。しかし、政府の能力や財源には限界があり、すべての問題を解決出来るわけではない。そのため世界には政府の力だけでは救えない多くの社会的弱者が存在し、とりわけ途上国では多い。NGOは彼らに社会の中で対等に生き抜く力を与える役割を担っているのではないだろうか。

日本の草の根大使として
法学部国際企業関係法学科2年 蔀 智恵子

インドに着いてすぐ引率のヘッセ先生から聞いた言葉でとても印象に残っているのが「インドでは1人1人が大使になる」だった。その意味が最初はよく分からなかったが、インドに着いて3日目、アンナ大学で日本語を学ぶ学生との交流をすることで意識するようになった。

日本・日本人のイメージを作る

大学では日本語クラスの教室で1人ずつ自己紹介をした後、インドの学生3-4人と日本人1人のグループに分かれてそれぞれ交流をした。私は女子学生3人と話をしたのだが、彼女たちが日本や日本語に興味を持った理由はさまざまで、「日本がIT産業部門で強いから」、「(多言語のインドと違い)国の公用語が一つだから」、「インドと違う文化を持つから」とそれぞれ違っていたのが印象的だった。アンナ大学の学生と日本人側はそれぞれ文化紹介のために日本で撮った写真や折り紙を用意していったのだが、それが大盛況だった。交流出来た時間はわずかだったものの、インドの学生が日本語を真剣に勉強している姿や、日本についての説明を真剣に聞いてくれる姿を見て、自分の国や文化に興味を持ってもらえることは非常にうれしいものなのだと実感した。同時に、彼女たちはアンナ大学で日本語教師のボランティアをしている阿部さんという女性を除いて、日本人にほとんど会ったことがないと聞いたので、自分自身が今まさに彼女たちの日本・日本人のイメージを作っているのだと感じた。

日本とインドの交流の少なさ

1つ驚いたことがあった。学生の1人が「私たちは同じに見える?」と聞いてきたのだ。そこで私は素直に「よく見れば違いはすぐ分かるけれど、最初はみんな同じに見えた」と答えた後、「日本人はどう?」と聞き返すと、彼女は笑って「同じに見えた」と言っていた。恐らくお互いにインド人、日本人を見慣れていないからこその質問だろう。せっかく日本に興味を持ってくれる人々がいるのだから、もっとインドと日本の間の人の交流が深まれば良いのに、と感じずにはいられなかった。統計的に見ても、インドと日本の人的交流はアジアの国の中では少ないようである。だからこそ、インドでの日本人1人1人の行動がそのまま日本人全体の行動と思われてしまうのだと思い、自分の行動に責任を感じた。NGOでは、子供たちが私たちを「ジャッキー・チェン」と呼ぶなど、あまり自分が日本人であることを意識させられることはなかったが、日本人として日本の紹介をすることで、ヘッセ先生のおっしゃった言葉の意味がはっきりと理解出来た。

日本人としてインドで活動する

大学での交流を終えて、私はほかの活動においても自分が日本人として見られているということを意識するようになった。私たちを受け入れてくださったNGOの中には「日本人のボランティアの受け入れは初めてだ」というNGOもあったと聞いている。日本人だと意識するようになったから何か行動が改まる、ということではないかも知れないが、自分がインドで親切にすることで、いつかどこかで日本人が困った時に助けてもらえるかも知れないと考えるようになった。このインドでの活動を通して、NGOの草の根支援だけでなく、草の根〝交流〟の重要性を実感し、実践することが出来た。

貧困を解決するための教育
法学部政治学科2年 織田 龍穂

私は今回のインドでのインターンシップ活動の目的の一つとして「格差・貧困の実態を知り、その解決策を模索すること」を設定していた。そしてインターンシップを通して、私が貧困の解決に重要だと感じたのは「教育」であった。

教育と貧困解決の関連性

私はインドに行く前、貧困を解決する手段として、つい政府による格差是正策などの政策にばかり目が行きがちであった。なぜなら教育による間接的な影響よりも大規模な政策による影響力の方が、より貧困を解決しうるのではないかと考えていたからである。
しかし、訪問先のNGOの1つであるAvvai Homeの小学校の先生にインタビューを行った際に、女性の教育に関して彼女が言ったことが私の考えを改めさせた。「教育の機会を与えることで、女性は自分の現在の社会的地位を認識すると同時に、教育を受けることで手に入れられる社会的地位・高いレベルの職業という人生の選択肢に気が付く。Avvai Homeの子供たちまた、教育を受けることで女性は生活していく上で直面するさまざまな問題を回避・解決することが可能になる」
つまり、教育を受けていないと自分たちが現在の状態から脱却する方法さえ見付けることが出来ず、さまざまな問題にも対応出来ないまま虐げられた生活を強いられることになるのである。これは女性の教育に関しての言葉だが、私は貧困地域の子供たちにも同様のことがいえるのではないかと思う。特に、現在のインドでは数学・英語能力やコンピューター運用能力が、高いレベルの職業に就く上での必須条件である。子供たちを貧困から脱出させるためには、教育は最も重要な要素となるだろう。だからこそ私は、もっとインド国内で教育の機会を充実させなければならないと考えたのである。

教育の普及で重要なNGOの存在

では、子供たちが教育を受ける機会を増やすためにはどうするべきなのか。インド政府は現在インド全体の経済の発展を重視していて、子供が教育を受ける機会を増やすことなどの貧困層の生活改善には重点を置いていないという。だから私は教育の機会の充実にはNGOの存在が非常に重要であると思う。その点でインドは貧困問題に取り組むNGOなどが多い国ではあるが、それでも救いきれない子供たちは存在する。Avvai Homeでも小学校に入学試験が存在した。数を絞らなければならないほど入学希望者がいるということである。試験に落ちてしまった子供たちをどうするのか。政府主導で教育の充実が図れれば最善であるが、それが出来ない今、更に一層のNGOの充実が教育には不可欠だと感じた。

NGOとの密接な連携の必要性

今回のインターンシップを通して、私は貧困解決に教育が重要であること、そしてインドにおいては教育の充実にはNGOの存在が不可欠であることに気が付いた。しかしながら、インドのNGOの中には深刻な資金難に悩む団体がいることも事実だった。資金難は、建物の老朽化・衛生環境の悪化・警備員の不足といった問題を引き起こし、それは結果的に子供たちを危険にさらすこととなる。また教育の質の向上は資金に余裕がなければ絶対に出来ないことである。前記では機会の充実に重点を置いて述べたが、高学歴化が進む現在のインドでは教育の質の向上も重要な課題である。だからこそ、NGOなどの団体に余裕を持って運営を行ってもらうことが重要であり、これからはNGOと個人や企業・政府との連携が不可欠になってくるだろうと私は今回のインターンシップを通して感じた。

草のみどり 234号掲載(2010年3月号)

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