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法学部
【活動レポート】越 加奈子 (政治学科4年)

「やる気応援奨学金」リポート(35) 南フランスで法律を学んで(下) ボランティアから見る仏社会

はじめに

法学部「やる気応援奨学金長期部門」の御支援の下、フランスのポール・セザンヌ・エクス・マルセイユ第3大学の法学部への留学を経験し、現在は再び日本での夏を迎えようとしています。前回の体験記では「憲法院」の研究や大学と寮での生活について書かせていただきました。今回は留学中に貧困撲滅を目指すNGO団体にボランティアとして参加してきた体験、大統領選挙の様子、そして日仏間の教育環境の違いについて書かせていただきます。

ATD Quart Mondeとの出会い

大学3年次の前期に「外交と国際業務」という法学部に設置されている国際インターンシップの授業を履修し、夏休み中にジュネーブで開催された国連人権小委員会に委員として参加されている横田洋三先生のアシスタントとして複数の学生と共にインターンを経験したことがあります。そこで世界で起こっている人権侵害が貧困と深い結び付きがあるという背景に興味を持ち、今後何らかの形で貧困問題にかかわってみたいという気持ちを持つようになりました。そこで横田先生の御協力の下、フランス留学中にATD Quarte Mondeと呼ばれる貧困撲滅を目指すNGO団体にボランティアとして参加させていただきました。このNGOは、1957年にパリ郊外にあるスラム街で育った経験を持つJoseph Wresinski氏により創立され、現在は世界29カ国が参加しています。貧しい家族と一般市民とのパートナーシップ構築を目的とし、およそ400人のボランティアが貧困撲滅のための活動に貢献しているのです。今回私は「ストリート・ライブラリー」と呼ばれる活動に参加させていただきました。この活動は、貧しい地区に住む子供たちに本の読み聞かせをするもので、子供たちに「勉強意欲」を持たせるという目的があります。また一般のフランス人と交流出来るような場を積極的に提供するために移民出身の家族を招いたお食事会なども盛んに行っています。その交流会のパーティーで日本の折り紙をぜひ紹介してほしいという要望があったので、子供たちにばらや帽子の作り方を教えたこともありました。

ボランティア活動

さて、私が参加していた「ストリート・ライブラリー」の活動を1日の動きと共に紹介していきます。まずエクスからバスに乗り込み30分たつとマルセイユの中心街で降ろされます。そこからTGV駅付近にあるNGO事務所まで足を運びます。マルセイユに着くと肌の黒い人しか見当たらないのです。確かにモロッコ、チュニジア、アルジェリア移民(通称マグレブ人)が多く住んでいるので当たり前なのですが、まるで地中海を越えて北アフリカに旅をした気分です。しかしアジア人1人で歩いていると必ずちょっかいを出されるので落ち着いて町を探索することは困難でした。
事務所に着けば7人ほどのボランティアと活動を共にします。選んだ本をリュックに詰め、ブランケットを手に持って活動場所まで地下鉄で移動します。マルセイユ中心街から少し離れた場所に、ベルメールと呼ばれる地区があり、かつては「ゲトー地区」と呼ばれたほど今以上に閉鎖的な地区だったといわれています。そして何よりも衝撃的だったことは、古びた団地に漂うごみのにおいと潮風のにおいが混ざり合った悪臭でした。マルセイユの町はお世辞にも奇麗とはいえません。中心街でもごみが散乱していたり、犬のふんで常に下を見て歩かなければならなかったりと町の外観はひどいものです。日本ではマルセイユといえば地中海に面したリゾート地のように思いがちですが、私も来る前はその1人でした。しかし現実はその先入観を見事に裏切ったのです。フランスでパリに続く大都市がこんなに汚れていて良いのかと悲しさで胸がいっぱいになったことを今でも覚えています。
さて自分にとってショッキングでもあり新鮮にも感じられたマルセイユの地でボランティア活動の開始です。まずは子供たちを捜さなければ活動出来ません。中庭ではしゃいでいる子供たちに声を掛ける一方で、親に活動を知ってもらう説明も行います。残念なことに子供を外に出したがらない家族が多くいるのが現状です。それだけこの地区は危ないという認識がされているのでしょうか。子供を預かるからには責任を持って最後にはちゃんと親元に帰してあげる、そういった信頼関係を築くことが活動を維持する秘けつだということを学んだのです。
もちろん、読み聞かせはすべてフランス語です。始めはフランス語で絵本を読むことに抵抗を感じていましたが、子供たちの笑顔と本を読みたいという彼らの姿勢に励まされながら、子供と一緒に本を読み進めていきました。彼らの純粋な笑顔を見ていると、これから差別に悩まされず暴動事件に巻き込まれずに育っていってほしいと願わずにはいられません。というのも、フランス社会ではマグレブ人に対する社会差別が今でも顕著であるためです。フランスで生まれ育ったとしても肌が黒かったり、名前がイスラム系だからという不条理な理由で雇用を断られるような社会はいまだ改善を見せていません。一般のフランス人と同じ教育を受けたとしても、それが社会で生かすことが出来ない悲しい現状があります。宗教に対して非常に敏感なフランス政府。年々数を増すイスラム信者への脅威を感じているのか、他者の文化を快く受け入れることは容易ではないようです。だからといって人種差別を見逃すわけにはいきません。国民1人1人が異文化を知ることによっていずれ相互理解が深まっていくと私は考えます。そういった意味も込めて、私たちは「ストリート・ライブラリー」の活動を続けています。

大統領選挙

幸運にも4年に1度の大イベント、「大統領選挙」が行われる時期にフランスに滞在していたことでフランス人の政治に対する熱意を間近で見ることが出来ました。国民1人1人の意見が反映されるという直接選挙を目の前に選挙権のない私までもがついつい気が入ってしまうような熱い選挙戦が繰り広げられました。政治にかける国民の情熱を受けて戦う候補者の姿に感激。なぜそこまで政治への関心度が高いのかと客観的に見ていながら、私が感じたことをここにつづらせていただきたいと思います。
日本では当初からサルコジ(右派)とセゴレーヌ(左派)の2人しか注目されていなかったようですが、フランスでは主にバックサポーターが圧倒的に強いこの2人のほかにルペン(極右)とバイルー(中道派)の4人を中心に議論が展開されていました。2002年に行われた第2次大統領選挙で親日派のシラク元大統領と対立をしたのが何と極右に属するルペンでした。極右の大々的出現にヨーロッパ全土が驚いたようです。もしかしたら、今回も驚きの展開を見せ得るという国民の期待と不安の中、結局第2次選挙に進んだ候補者は日本でも大注目のサルコジとセゴレーヌとなります。しかし面白いことに中道派であり庶民派でもあるバイルーが第3位という地位に輝いたことにはこんな理由があったのです。あえて右派も左派も投票したくないから中道で行くという国民が非常に多く存在したということ。今回の大統領選挙で中道派が人気を集めた点は面白い特徴といえるのではないでしょうか。
また興味深いものに選挙数日前に繰り広げられたテレビ上での討論会があります。サルコジ対セゴレーヌの戦いを国民は最後の選択を決断する思いで見ていたことだろうと思います。私も友達と一緒に難しいフランス語で議論される討論会を一生懸命見ていました。全部は分からなかったにしろ、具体的な国の政策や方針を言い合う政治議論に非常に興味を持てました。残念ながら今回は女性大統領の誕生を祝うことが出来ませんでしたが、国民が一体となって候補者を応援する姿に魅了され、日本の政治にも国民を引き付けられるような「知的なパフォーマンス」を含んだ選挙戦を繰り広げてほしいと思います。

教育環境の相違点

日本では少子化を改善しようと子供の教育費が見直されようとしています。一方同じ問題を抱えていたフランスでも、政府による社会保障や教育制度の見直しを進めることで見事出産率を1.2から1.7まで引き上げることに成功しました。そこで日本とフランスでの教育の在り方について私が見てきた学生生活の範囲でお話ししたいと思います。日本では親が教育費を払い、子供は小遣い稼ぎにバイトをするパターンがほとんどだと思います。しかしフランスにはバイトに精を出すような学生はいません。ぜいたくな暮らしは出来ないものの政府による種類豊富な奨学金で生活費や寮費などを賄うことが可能であるためです。また90%の大学が国立であるといったように学費をそれほど気にせずに、勉強に集中出来る環境が整っているからであるともいえます。ここには学生に思う存分勉強させてやろうという将来を見据えたフランス人の考えが強く根付いているのでしょうか。
日本の学生がバイトに精を出すという姿はヨーロッパでどのように受け止められるのだろうかという思いでフランス人に日本での学生ライフを話したことがあります。そして反応はというと……もちろん批判的(フランス人は常に批判的ですが)。しかし生活を豊かにするためにバイトをしたいというフランス人学生も中にはいると思います。そのため、若者の雇用確保を目指して通常夜や日曜日に閉まっているお店を開いて学生に働かせようという動きも各地で見られます。
フランスでは1年生の授業に参加する機会がありました。そこで感じたこと、それは単に顔付きが大人びているというのではなく年齢が私よりも上である学生が多いということです。人それぞれ事情があるので一概にはいえませんが、それには何度も1年生を繰り返すような学生も少なくないということがいえます。というのも、フランスは国立大学がほとんどということで入学金や学費はそれほど掛かりません。すると、1年目に経済を学んでいた学生が2年目には法学部に再入学することだって大きな問題を生じることはないのです。それでも満足の行かない学生が幾度も1年生をやり直すケースもあり得ます。これが良いのかは分かりませんが、将来の仕事に見合った分野を大学で勉強するといった考えを持つフランス人らしい教育スタイルだなと感じました。もしくはただ単に学生でいたいという思いが強いのかも知れませんが……。そんな日仏間の違いを肌で感じながら学生が置かれている教育環境に大きな違いがあることに興味を持ちました。そして教育体制の差でこんなにも学生の生活スタイルが変わってくるものなんだということを実感したのです。

最後に

帰国して早々、次の自分探しの道へと走り出した私。留学生活を振り返るような余裕すらなく、日本食を目の前にして日本に帰国した喜びをかみ締める毎日です。日本とは全く違った環境で全く知らない人々と1から自分を形成していく、それが「留学」。この貴重な経験を通じて感じたこと、見てきたこと、そして仲間と過ごした時間は忘れられない最高の思い出です。今後社会人になるにしろ、勉強を続けるにしろ、これらが次の行動の活力になることは確かです。見知らぬ土地に身1つで飛び込むことで自分が強くなり、またフランス人と生活することでちょっとしたことでは動じない度胸なども身についたと思います。
最後に、留学前からずっとお世話になっている三枝先生を始め、フランスでの研究資料を提供してくださった中島先生、留学中においしいフランス料理をごちそうしてくださったゼミの植野先生、そして日本の食材を定期的に送ってきてくれた私の家族に感謝の意を表したいと思います。
また国際交流センターの方、リソースセンターの方、法学部事務室の方など、「やる気応援奨学金」に携わる人々の温かい御支援のおかげで素晴らしい留学生活を送ることが出来ました。本当にありがとうございました。

草のみどり 209号掲載(2007年9月号)

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