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法学部
【活動レポート】磯 尚苗 (国際企業関係法学科4年)

「やる気応援奨学金」リポート(36) LSEサマースクールに挑戦 自分の強み発見し大きな自信

2007年7月から8月中旬にかけて、「やる気応援奨学金一般部門」の支援を受け、ロンドン大学London School of Economics and Political Science(LSE)サマースクールで経営学コースを受講しました。前半は組織と経営戦略の理論について、後半はビジネスプランの作成の仕方や起業家の特性などについて学びました。今回の経験によって得た経営学の知識や戦略的思考、大学で培ってきた法と経済学の知識を生かし、卒業後は英国の大学院・経営学修士課程に進学し、国籍、年齢、性別などにかかわらず、一人一人の強みを発揮出来る組織運営、強みを引き出せるインセンティブ・システムについて研究したいと考えています。ここに至った経緯、LSEサマースクールで学んだことを中心にお伝えし、近い将来留学を志す皆さんの励みになればと願っています。

LSEサマースクール留学を決意するまで

「英国の大学院に行きたい」。そんな野望を抱くようになったきっかけは、大学2年次に受講した国際インターンシップ「国際金融証券市場と法」です。日本、香港、深セン、シンガポールの金融市場の最前線で働く実務家、経営者の様子を目の当たりにして抱いた疑問は、「価値を生み出す源泉である人を大事にするのはどんな企業だろう」。法律、経済、金融などの知識を組み合わせて、外部環境に応じて企業の内部環境を整えることにより、労使にかかわる紛争を未然に防ぐことが出来ないだろうか。修士号を取得し、その分野の専門家として信頼出来る論を確立し、社会に発信していくことで、新たな価値を生み出していける人になりたい。英国には組織の経済学、経営学の研究に秀でた大学院があり、修士号が1年間で取得出来ます。また英国人の生活と仕事のバランスを大切にする、ゆとりのある生活を楽しもうとする姿勢にあこがれを抱いてきました。このような理由から、英国の大学院留学を決意し、実務経験のない法学生にとって、どのような準備が必要なのかを考えたうえで、LSEサマースクールの経営学コースを受講することを決めました。

初めての経営学の授業

LSEでは大学生・社会人を対象に、法律・会計・経済・国際関係・経営学などの分野にわたり、全部で50以上のサマーコースを開講しています。どのコースの場合も、15人前後のゼミと、受講生全員が参加するレクチャーの2部構成で、私が受講した2つの経営学コースは、午前中に2時間のゼミと、午後2-3時間のレクチャーという授業が、各3週間ずつ続きました。授業のほかに中間・期末試験もあり、予習・復習、試験勉強、そして後半のコースでは、ビジネスプラン作成のためのグループディスカッションの時間で追われ、月曜日から金曜日まで、寝食以外はほとんど図書館か寮の自室で勉強という時間が続きました。(その反動で週末は思いきり遊びましたが……。)試験前日は寝る暇もなく、右手に教科書、左手にフライドチキンを持って勉強したのを覚えています。

毎日通ったLSEの図書館

前半“Organization and Strategic Management”コース初回の授業で、ゼミの先生がこう断言しました。「イギリスの大学で求められるのは、量ではなく質だ。明確な考え、明確な論を、出来る限り簡潔に書け。実際のケースに矛盾しない範囲で、自分のアイデアを主張しろ。理論及びケースに含まれる事実は、あくまでも自分の論を補強するためのものだ。教科書やケースに書いてあることを繰り返しても点はもらえない。お前たちが、どう考えるかを知りたいのだ。」
ゼミでは、アメリカ、インド、スペイン、バングラデシュ、ロシア、韓国などの出身の学生と一緒に、実際に経営者が直面した問題点が詳細に書かれてある4つの事例(グランドメトロポリタン、スカンジナビア航空など)を基に、SWOT分析(企業の強み〈Strength〉、弱み〈Weakness〉、市場における機会〈Opportunity〉、脅威〈Threat〉)、PESTLE分析(政治〈Political〉、経済〈Economic〉、社会〈Social〉、技術〈Technological〉、法規制〈Legal〉、環境〈Ecological〉)、Five Force分析(「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」)、ゲーム理論、とりわけプリンシパル=エージェント理論などを用いて、各企業を取り巻く業界の構造分析及び企業の事業評価を行い、なぜその分析手法が適切なのか、その企業の事業活動のうちどこまでを企業内で行うのが適切なのか(「企業の境界」の問題)、企業戦略(Corporate Strategy)は何か、競争上の優位性(Competitive Advantage)は何か、バリューチェーン(原材料の段階から最終顧客で消費される段階において、各段階における付加価値の流れ)の始まりと終わりはどの時点で、その企業の競争優位性を生み出しているのは事業活動のうちどの部分か、などについて議論し深めていきました。更に、レクチャーでは「企業が行う活動の範囲は企業の組織構造にどのような影響を与えるのか」という問題を中心に学びました。

ゼミが終わってほっとする仲間たち

水平的統合・垂直的統合・ヒエラルキー的構造など、初めて聞く経営学の専門用語が飛び交い、初めのうちは戸惑いましたが、なぜどうにかやっていけたかというと、日ごろから日経新聞を読みながら、関連性のある記事をまとめて整理する習慣をつけており、実際の企業の事例を分析することに抵抗がなかったことや、大学で受講した「国際取引法」や「法と経済学」ゼミを通して、法律と経済と経営の関連性を意識しながら学んでいたことが挙げられると思います。もちろん経営学を英語で勉強することは初めてなので、大量の文献を読みこなすために、人一倍時間が掛かりました。役に立ったのは、人文科学・社会科学・自然科学・医学などすべての分野をカバーしているデータベース“Oxford Reference Online”です。日本語に訳して理解する暇もないので、そのデータベースを使って重要な専門用語の意味を逐一調べ、単純な英語で理解したうえでゼミに臨むように心掛けました。テンポの速い議論に付いていけない時は、ほかのメンバーがタイミングを見計らい意見をを主張する様子をじっと観察して、まねするように努めたのです。分からない点は授業後に先生に質問に行くのが習慣となりました。それらの小さな積み重ねが功を奏したのか、中間・期末試験のエッセイで好成績を収めることが出来ました。今までにない喜びをかみしめることが出来たのも、知識も英語力も足りなくても、努力すれば認められ、受け入れられるということを実感出来たからだと思います。

答えを探し出す自由が与えられているエッセイ

期末試験の課題が発表された時は、さすがに逃げ出したくなりました。「SGB社(ベルギー資本の、電気・ガス・金融・非鉄金属など多岐にわたり事業を展開するコングロマリットだったが、1988年フランスSuez社に買収された。)は競争優位性をほとんど失ってしまっていたようだ。企業の規模を縮小することにより、どうやって競争優位性を築くことが出来ただろうか。この場合の競争優位性を明らかにし、1000字以内で論ぜよ。」
言葉の定義の重要性を知っていたこと、論文の構成を知っていたことが役に立ちました。序論で問題を提起し、証明する順序を簡潔に述べ、本論では、まず「競争優位性」の“Oxford Reference Online”で調べた一般的な定義を出発点にして、SGB社の場合の「競争優位性」を定義付けることから始めました。どんな論文でも、出発点が明確でないと結論までの道筋をはっきりさせることが出来ません。結論では、本文に書いたことを要約して述べます。根気よく、授業で習ったSWOT分析などを事例に当てはめて丁寧に実践することで、導きたいゴールまでの道筋が少しずつ見え始めるようになったのです。事実に矛盾しない範囲で、答えを導き出す自由が与えられているからこそ、先に進めることのうれしさを実感することが出来ました。粘り強く課題へ取り組む力を与えてくれたのは、大学院留学の夢をかなえるために、自分の弱さを克服したいという切実な願いでした。やりたくないことから逃げようとする甘さ、失敗を恐れて知識の及ばないことには手を出さないようにしていた臆病さ、すべてを受け入れ自覚したうえで、そういう部分を変えたい!と自分に言い聞かせました。知らない分野のことをより知ろうとするハングリーで前向きな心構えを持った仲間たちに刺激を受け、彼らの姿勢をまねしたいと思ったのです。そんな葛藤を乗り越えて書き上げたエッセイは、次のステップへと私を導いてくれる貴重な財産となりました。

悪戦苦闘のビジネスプラン・プロジェクト

後半“Management&Entrepreneurship”のコースは、チームに分かれてビジネスプラン(最低40頁!)を作成し、最終日に発表するというものでした。レクチャーでは毎回コンサルタント、資産運用、IT分野などの起業家たちがゲストとして招かれ、経験談を語ってくれました。150人近くの受講生のうち、実際に起業を目指す社会人も少なからずいました。既に自分の起業プランを持って参加している意欲的な学生が多かったので、何も考えずに参加した私は、初回のゼミでいきなり一緒に活動するチームを作れと指示された時に戸惑いました。成り行きで、スーダンでホテル事業を立ち上げる計画のチームに参加することになり、そのメンバーはインド人、コロンビア人、スペイン人、スーダン人。スーダン出身のTahiraが事前に念入りに準備していたビジネスプランを基にするという作戦でした。毎日通ったLSEの図書館しかし翌日、「情勢が不安定なスーダンでホテルを開業しても顧客を集めるのは難しい、と先生に言われたから、このプランはやめよう」とコロンビア出身のCarolinaが言い出しました。「私は良い成績が取りたいの。ちゃんと収益の上がるビジネスプランを考えなきゃ」。彼女は次から次へと新たなアイデアを提案するのですが、グループ全体では賛同が得られず、プロジェクトが進まない日々が続きました。Carolinaが水中ナイトクラブを開くという非現実的なアイデアを提案した時、敬虔なイスラム教徒のTahiraは、アルコールやクラブはイスラム教の教えに反するので、そのアイデアで進めるならチームを1人で抜けると言い出しました。2人が互いに譲らず対立するのを見て、困った私は、コースが始まって2週目から遅れて参加してきたインド人Karanを誘って、私とTahiraとKaranで新たなチームを作ることを皆に提案しました。こうして、3人で再スタートすることになり、最終的に、投資家・起業家をターゲットにしたカフェをインド・ムンバイで設立するというビジネスプランを立て、聴衆を引き付けるプレゼンテーションを行うことが出来ました。

一人一人の「強み」を生かす組織作りを目指して

これほどまでに充実した時間を過ごしたのは生まれて初めてです。異文化に寛容で、オープンで、ユーモアと活気あふれる多文化、多民族、多宗教共生のロンドンだからこそ味わえたのかも知れません。何より、自分の強みを発見出来たことが大きな自信となりました。今まで他人と違うことに私の存在意義があると分かっていながらも、それを裏付ける論が、自信を持っていえる根拠が見当たらなくておびえていたように思います。しかしここに来て、「強み」とは、他と肯定的に違う性質であり、それをいかにアピールするかが重要な企業戦略の1つと理解出来、その理論を基にエッセイを書くことで、高い評価を得ることが出来ました。今まで考えてきたことが客観的に評価されたのです。これほどまでに大きな自信となるものはありませんでした。そして、国籍・民族などにかかわらず人は人であり、1人1人違う固有の魅力・特徴を持っている、ということを前向きに考えられることが、私の強みだと気付きました。
その強みと、今回学んだ経営戦略の理論や、今まで培ってきた法と経済学の知識を生かし、国籍、性別、年齢、宗教などにかかわらず、1人1人が必要とされていると実感出来、それぞれの強みを発揮出来るような組織こそ、持続可能な競争優位性を築くことが出来、個々人の強みを適切に引き出せるインセンティブ・システムを構築することで、企業全体の調整コスト削減にもつながることを証明出来るように、大学院で研究を続けたいと思います。また、専門分野の学習だけでなく、歴史、哲学、宗教、地理、言語、芸術など幅広く学び続けていきたいです。人間の営みをあらゆる角度から学ぶことで、柔軟で多様な尺度を手に入れたい。それによって、極端な利潤追求に走りがちな組織運営に歯止めをかけて、じっくりと人と社会と環境との在り方を踏まえたうえで、バランスの取れた組織を作るための視点を提供出来る人材に近付ける気がします。

テムズ川クルージングで

それでは、今回の留学をこのエピソードで締めくくりたいと思います。「コーラン」との出会いです。ある日、スーダンとヨルダンの友人がアラビア語で会話を始めた様子を見て、アラビア語圏の広さを実感しました。(西アジアから北アフリカに広がる地域22カ国で話され、世界に13億人いるといわれているイスラム教徒たちの共通語でもあります。)隣国であっても異なる言語を話す日本人と韓国人のように、国と国との隔たりを考えていた私は、国境の壁を越えて同じ公用語を話すアラブ世界の人々に魅力を感じずにはいられませんでした。アラビア語に興味を持った私に、ビジネスプラン・プロジェクトで苦労を分かち合ったTahiraが、「あなたは親友だから」と言って、イスラム教の聖典「コーラン」(ただしこれは英語に翻訳されたもので、本来アラビア語以外のコーランは注釈の1種とされるそうです)をくれたのです。敬虔なムスリムである彼女にとってそれがどんなに大事なものか……。彼女の1部が宿っている「コーラン」を手にした瞬間、ほんの少しだけイスラム世界の輪に加わることが出来たような心地がしました。
畏敬の念を持って未知の世界を知りたい! これからもロンドンで手に入れた貪欲な好奇心を原動力に、世界のダイナミックな動き・流れの中で、チャンスを見付けて新しいことに挑戦していきます。日本が中心という狭い視点を改めさせてくれた、世界中から集まってきた野心あふれる魅力的な学生たち。彼らと互いの良さを尊重し合う関係を築けたことが、掛け替えのない財産となりました。人との、社会との、世界とのつながりを見いだしていく学びこそ、私の人生を豊かにしてくれると確信したからです。
最後になりましたが自分の道を切り開く機会を与えてくださった「やる気応援奨学金」関係者の皆様、先生方、先輩方、友人たち、親戚、そして私の1番の理解者である両親に心から感謝します。これからも皆さんの支えを糧に新たな夢に向かって挑戦していきます。

草のみどり 210号掲載(2007年11月号)

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