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法学部
【活動レポート】鎌田 千翔 (政治学科3年)

「やる気応援奨学金」リポート(44) トロント大学へ留学し奮闘(上) 国際政治面で移民・開発学ぶ

トロント大学のカレッジと筆者

私は現在、「やる気応援奨学金」を頂いてカナダのトロント大学に1年間留学しております。今回は留学の動機やトロントでの大学生活、学修状況について御報告したいと思います。

トロント大学のカレッジの一つ

まず、留学の動機、理由ですが主に3つあります。まず私は将来、開発や移民問題にかかわる弁護士として日本だけにとどまらず世界のために働きたいと考えています。それにはトロントという世界一移民が多く多文化主義を掲げる場所で勉強することで、政策の面だけではなく人々の意識の面からも移民政策を学ぶことが役に立つと思ったのです。更に語学学校や日本では学べないアカデミックな英語を身につけ、世界的にも定評のあるトロント大学で国際政治を本格的に学びたいと思ったことも理由の1つです。また異なる価値観を持つさまざまな学生たちとの交流を通じて自分の世界観を広げたいと考え、留学生の多いトロント大学に留学を決めました。

トロント大学について

トロント大学はカレッジ制度を採り入れていて、全体で12個のカレッジがあり、学生は皆いずれか1つに所属することになっています。カレッジはそれぞれ宗教的に異なっていて、カトリック、メソジスト系、無宗教のカレッジなどさまざまです。私が所属していたのはトロント大学では1番新しいWoodsworth Collegeで、留学生が多く、宗教色はありません。
トロント大学には数え切れないほど図書館があって、勉強する場所には全く困りませんでした。ここの学生は勉強をします。皆朝の九時から夜の12時まで勉強しています。大学で1番大きい図書館はロバーツ図書館と呼ばれ、14階建てで、北米で3番目に蔵書数が多いらしいです。この図書館にはextended hoursというものがあり、平日は24時間開いていて、たくさんの学生がテスト前になると徹夜しています。私も何度か3泊くらいしたことがあります。この図書館には東アジアセクションが六階にあり、フロア全体を東アジア研究に関するものが占めています。日本語で書かれている本もたくさんあり、特に日本で手に入れることが難しい第2次大戦中の資料がたくさんありました。

学生生活全般について

テストが終わって友人たちと一息つく

1年間の留学をするに当たって 寮を選ぶ人、ルームシェア、ハウスシェア、またはアパートを選ぶ人とさまざまですが、私の場合自分のプライベートを大事にしながらもカナダ人と交流を持ちたいという気持ちがあったのでハウスシェアを選びました。ハウスシェアとは一軒家を何人かの学生とシェアをし、キッチン、トイレ、そしてシャワールームは共有ですが、自分だけの部屋がそれぞれあるという形です。自分の条件で家探しをし、直接大家に電話しまた訪問して最終的に決めたのはハンガリー人の家族が管理する家でした。この家で同じトロント大学に通う3年生で、経済学と国際政治をダブル専攻しているカナダ人の女子学生と、同じくカナダ人で町の中にある違う大学に通う男子学生とシェアすることになりました。2人とも今では親友で家族みたいな存在で、そのうちの1人は私と同様に国際政治を専攻しているため毎晩議論が絶えません。課題やテストがあるといつも彼女が助けてくれて本当にここを選んで良かったと思います。

授業に関して

ここの授業は1つ1つがきつく、要求されるリーディングが半端ではありません。私の取った授業の1つでは毎回200頁ほど英語の文献を読むことを要求されます。トロント大学の学生でも平均で3つか4つしか授業は取っていないようです。またトロント大学ではレクチャーのほかにそれに付随してチュートリアルというものがあります。チュートリアルは日本でいえばセミナーみたいなもので、ティーチングアシスタント、大学院生が中心となって、10人ほどの学生がレクチャーで学んだことを中心に議論をするものです。こちらの学生は議論がうまいだけではなく、情報量も半端ではないので、いつも勢いに負けてしまっています。何とか議論に参加出来るようになっても、自分の議論の能力のなさと知識のなさをいつも思い知らされます。ここでの競争は生易しいものではありません。皆土日も祝日も一日中勉強しています。たまに息抜きでバーや映画に行きますが、あまり時間がありません。特にキャンパスを歩いていると目を真っ赤にして歩いている学生に頻繁に遭遇します。

トロント大学のカレッジと筆者

前期私が受講した科目についてですが、今回のカナダ留学の目的の1つは、政策面や文化面だけではなく大きな国際政治という面から移民問題や開発問題を研究することだったので、その研究テーマに合った科目を出来るだけ選びました。受講した科目は通年科目4つで、International Relations, Politics of Development, Diaspora and Transnational Studies, Immigration and Refugees Lawです。
このうちImmigration and Refugees Lawは法科大学院のものだったので、興味のある回だけ聴講しました。カナダの法律は慣習法で、日本とは違い、頼りとする条文がなく、判例をすべて覚えなければいけないので大変でした。
International Relationsでは、国際政治の舞台で現在起こっていることを分析するツールとして、古典的な政治理論や国際政治理論を学びました。この授業で要求されるリーディングは、政治哲学の本からアメリカの政府報告書まで、国際政治専門家向けの資料が多かったため非常に難解なものも含まれ大変でした。
Politics of Developmentも興味深い科目の1つで、ここで政治理論を学びました。途上国の中で特に急激に発達した地域(アジアなど)と逆に取り残されてしまった地域(アフリカやラテンアメリカ)の差はどこから来るのか、その原因は何かについて議論します。特に社会の基盤、例えば法律などが整っていないこと、政治体制が安定しないことなどが原因として挙げられます。そのため改めて自分が将来したいと思っていること、途上国で法律家として法整備をすることが開発にとって大事であると改めて認識しました。またこの授業を通して、多くの学生や教授が東アジア地域に興味を持っているということを改めて感じました。日本を始め中国や韓国などが、最も急激に発達した地域なので、学生や教授は皆発展のかぎを探りそれを発展途上国地域の開発に役立てようとしていました。
Diaspora and Transnational Studiesでは、前期は主に移民の歴史をユダヤ人移民の歴史をモデルとして学びました。後期はカナダの移民、それぞれの移民文化やカナダの政策を学ぶのですが、前期学んだユダヤ人が移住した国で独自の文化やコミュニティーを形成していった過程は、1つの国にとどまらず2カ国以上に分散している移民の文化、更には移民政策の与える影響を学ぶうえでも非常に役に立つと思いました。
このように授業を受講し感じたことは、日本と授業の内容や形式が全く違うということです。日本では質問する学生もほぼ皆無であるし、学生の質問を奨励している教授が非常に少ないのですが、ここでは学生と教授の対話によって授業が進んでいきます。大教室で受講生が300人近くいる授業でも、学生と教授が議論するという形式は変わりません。またここでは筋道の立った理論に裏付けられた議論しか受け入れてもらえません。感情や道徳論など全く通用しません。発言する時は意味のある、理論に裏付けられた発言をしなければならないのです。このように論理的な発言をする訓練を彼らは小学校中学校を通して身につけてきているのです。
前期のテストは本当に大変でした。ブルーノートといわれる冊子が渡されて、15頁ほどを1時間半で書かなければなりませんでした。テストの内容は難しく範囲も広いので大変でした。エッセイも毎回10頁ほど書かなければなりません。テストが終わると毎回手が動かなくなるくらい必死に書いていました。

トロント大学での学生サポート

オーストリアやフランスの友達と空港で

まず、トロント大学の国際交流センターは本当に役に立ちました。何でも語り合える友人に国際交流センターのイベントを通して出会いました。特に普段学部の授業だけでは知り合えない、研究者として滞在している弁護士の方や裁判官の方との出会いはこの国際交流センターのイベントがきっかけでした。特にドイツ人で弁護士の友人や日本人で裁判官をしていらっしゃる方との出会いは非常にためになりました。日本にいた時は裁判官から直接意見を聞ける機会がないので、さまざまな法的な問題に関して意見を聞けるのは非常に有意義でした。また、1年間異国の地で勉強するに当たり何でも相談出来る近しい友人は必要不可欠だと思います。アジア人はアジア人で固まってなかなか現地のカナダ人の友人が出来ないと留学前に聞きました。特に白人は難しいと。しかしここの学生は人種的に豊かで、見た目からいえば北米では人種的マイノリティーが、この大学ではマジョリティーを形成している状態で、異なるバックグラウンドを持ち多様な価値観を持つ人がお互いの違いを受け入れ合うことが出来る場所だと思いました。しかし、やはり移民国家だけあって見えない差別などの問題も非常に多くあります。それは後で述べたいと思います。
前期は本当に無我夢中で勉強に付いていくのに必死でしたが、たまに余裕のある時には色々なイベントに参加しました。特に北アメリカ模擬国連への参加は印象深いものでした。トロント大学の模擬国連ではトレーニングセッションというのが毎週あり、毎回国際政治の場で議論されているホットな話題に関して、個人個人がそれぞれ別々の国を担当し、その国の視点から意見を述べる訓練をするのです。知識を持っているばかりでは十分ではありません。自分の意見が正しいことを、感情的にではなく、議論を通じて理論的に証明出来なければいけないので大変でした。

カナダの友達とバーで息抜き

エッセイに関しては、私はライティングセンターを利用していました。トロント大学のライティングセンターは正規に雇われた専門家が見てくれて、文章構成や参照の作り方、更には知識の面でもサポートしてくれるのですごく助かりました。1週間に1度しかアポイントメントは取れませんが、1度に45分個人指導を受けられるので良かったです。
更にモンクセンターといって国際政治に関するフォーラムやセミナーなどがほぼ毎日行われているすごく面白い機関が大学にはあります。そこでは、世界銀行のスタッフが実際に来て世銀改革の話をしたり、キューバの外交官が実際に来てアメリカとの経済的な関係について語ったり、大学院生が移民問題について、保険制度と移民問題、カナダ移民法の問題などのテーマで話し合ったり、さまざまなイベントがほぼ毎日開催されています。またカナダの外務大臣やドイツの元外務大臣がNATOのアフガニスタン侵攻について議論をするセミナーもあり、私も参加しましたが非常に面白かったです。こうしたイベントには同じ興味を持った学生が参加しているので意見交換を行い、友達も出来ました。いつもイベントには国際政治を専攻しているカナダ人のハウスメートと参加し、イベントの後によくコーヒーなどを飲みながら議論をしました。前期は時間がある時にアルバイトもしてみました。キャンパス内なら就労ビザなしでも働けるのです。パートタイム学生団体の下で行うアルバイトです。11月に新たに学生施設を建てるかどうか賛成反対の選挙があり、パートタイム学生団体は学費が学生施設を建てることで1年ごとに上がっていくなどという理由で、学生施設の建設に反対していました。そのため私の仕事はキャンパスを歩いている学生に声を掛け、なぜ反対の票を投じなければいけないのかを具体的に説明し説得し、反対の票を出来るだけ多く獲得することでした。色々な人にとにかく話し掛けたのですが、皆話をよく聞いてくれて更には議論をしてくる人もおり、すごくユニークな体験が出来たと思います。このアルバイトを通じて自分の英語に自信が持て、英語で議論する力が付き、セミナーでも発言出来るようになりました。

カナダについて感じたこと

カナダの文化は、移民をアメリカ化し同化させるアメリカの人種のるつぼと対比してモザイク文化といわれます。つまりアメリカとは違い移民の多様性を尊重し同化させることなくそのままの形で受け入れるといわれています。しかしカナダのモザイク文化にも問題はあります。例えば中国人は中華街に住み、比較的閉ざされたコミュニティーを形成していて、何十年もカナダに住んでいても英語が全く出来ない人もいます。中国人だけではなくイタリア系移民にもそういった傾向があるようです。特に問題となっているのはいわゆる新新移民である、ヒスパニック系で、スペイン語のコミュニティーを形成しあまり英語を話しません。このようにカナダ国内でコミュニケーションが出来ないことは大きな問題となっています。こうしたことは大学内でも見られます。私の大学には異なる文化に興味を持っているカナダ人学生もいますが、面白いことにカナダで生まれた人間でも中国人は中国人で固まって韓国人は韓国人で固まり、ロシア人はロシア人で固まり、あまりほかの文化に興味を示さないようです。これは自分の文化、生まれた場所の文化を忘れないという意味では良いのですが、すごく悲しいことだと思いました。私の思い描いていたトロントは複合社会というイメージですが、どちらかというと現実は異なる国民が集まっているだけという感じです。人の肌の色や見た目、そういったものは差別という明らかな形ではなくとも、そうしたものを基準に自分と他者を区別しているという面がしばしば見られることがありました。

世界各国からの弁護士の人たちと

また宗教的多様性も問題を引き起こします。例えばシク教徒にはターバンを頭に巻く宗教的習慣がありますが、彼らはモーターバイクを運転中にも宗教的理由からヘルメットをかぶらずにターバンを頭に巻きます。しかしいざ事故が起きた時にヘルメットをかぶっていないと保険会社は保険金を出すことが出来ません。そのため大きな問題となっています。また興味深いのはカナダでは移民一世の家庭内暴力や殺人の確率が非常に多いことです。色々理由はあるでしょうが、言語や文化によるストレスもその一つであると考えられます。特に新新移民や先住民系の家族は貧しい家庭が多く、一家を支える父親が働きに出てそこで言語や文化の違いにより孤立してしまったり孤立感を持ったりします。そのことによりストレスがたまってしまい、それが家庭内暴力につながるということが理由として挙げられるようです。こうした家庭内暴力は移民の間だけではなくネイティブカナディアンの間でも多々見られます。こうした問題解決のためのNGOやNPOがトロントにはたくさんあるので、後期は暇を見てボランティアをしてみたいと思います。
この前期四カ月は勉強に付いていくのに必死で、課外活動を積極的にする余裕はあまりありませんでしたが、思い描いていたカナダの実像と実際のカナダの違いを見ることが出来、またカナダが抱える問題の深刻さも見えてきたと思います。後編では私の研究内容と授業内容について、また課外活動についてより詳しく述べたいと思います。

草のみどり 218号掲載(2008年8月号)

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