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法学部
【活動レポート】岩倉 史門 (国際企業関係法学科3年)

「やる気応援奨学金」リポート(78)
 金融のプロとして、グローバル・ビジネスリーダー目指す

はじめに

 この度、「『グローバル・ビジネスリーダー』としてのキャリア形成に向けて~貧困解決に向けたマイクロファイナンスの研究を通して~」というテーマで「やる気応援奨学金」の一般部門を受給し、二〇一一年八月二七日から九月二〇日までの約四週間をバングラデシュで過ごし、グラミン銀行でインターンシップを行った。その活動から三カ月を迎えようとしている今でもバングラデシュでの経験は私の中に確実に生きている。このような掛け替えのない経験をさせてくださった法学部の先生方、先輩方、家族に心より御礼申し上げたい。また、時間が経過した今だからこそ思うこともたくさん出てきた。このような形で改めて経験を回想する機会をいただけたことにも感謝したい。

 ここでは、バングラデシュでの経験が私にどのような影響を与え、今後の人生にどう生かしていきたいのかお伝え出来ればと思う。はじめになぜ「やる気応援奨学金」の出願を決意したのかという動機をこれまでの学生生活を振り返りながら説明する。次に、バングラデシュで見たこと、経験したこと、加えて考えたことについてお伝えしたい。最後に、バングラデシュという貧困を内在する国で国際協力・国際貢献とは何かについて考えを巡らせたので、今後のキャリア形成と併せて記述する。

世界観を築き判断基準に磨き

 「グローバル・ビジネスリーダー」は国際的な視野を持ちつつ自らの世界観から、世界・社会に対して疑問を投げ掛けることの出来る、また当該問題に対して経営者的な感覚を大切にし、金銭的・時間的な制約を考慮した実現可能な提案を行うことの出来る能力を持つ人材である。私の法学基礎演習における二年間の学修はこの言葉に集約される。換言すると、自身の世界観を築き上げ、グローバル・スタンダードで物事を判断していくために、多種多様な考えに触れ、自身の判断基準に磨きを掛ける二年間だった。

 さて、私は世界観を築くというプロセスの中で、金融や経済に興味を持つようになり、ある金融手法と出会った。それは、「マイクロファイナンス」である。金融アクセスのない貧困層の人々に無担保でお金を貸すという新しい考え方だ。ムハマド・ユヌス氏が二〇〇六年ノーベル平和賞を受賞したことで有名になったが、私はここに未来を感じた。わずかな融資を受け、自らの生活を改善しようとする女性の姿に感銘を受けた。

 近年の経済危機はマネーゲームによって生み出された。敗者は人間であり、欲に負けた。利益ばかり追求することのしっぺ返しを食らった。強欲な一人勝ちの世界が否定されたように思える。一方で東日本大地震を経験した日本国民は、一致団結し国難を乗り越えようと、協力し助け合う社会こそあるべき姿であるという価値観を持つように変化していた。人間は何らかの行動を起こす時、身の回りや他者への影響や、倫理に沿った行動であるかどうかを確認しなければいけないのではないか。私は「共助」社会の再認識が日本を更に成長させる一つの形であると考える。

 金融の世界において、「共助」を実践しているのがマイクロファイナンスである。これまで何かしたいと思っても、そのためのお金がなかった。そんな自分とバングラデシュの女性を重ね合わせたのだろうか。私はこの新しい金融手法を学ぶことで何か社会へインパクトを与えることが出来ないかと考えるようになった。日本を活気に満ちた社会へと変革していきたい。そんな気持ちを持つようにもなっていたのである。

 もちろん日本が直面するのはバングラデシュにみられる「貧困」と同一ではない。日本で生まれ、何の不自由もなく生活してきた私は「貧困」を理解出来ていないのではないか。マイクロファイナンスが目的とする貧困削減を正確にとらえるには、実際に現場を見る必要性があるのではと思うようになったのである。「貧困」とは、現実においてどのようなものなのかが分かった時、マイクロファイナンスの素晴らしさに気付けるのではないかと考えた。

 「グローバル・ビジネスリーダー」としてキャリアを進んでいく時、問題を解決しないまま前へ進むべきではない。せっかく持った疑問を解決しないまま、新しいことに挑戦することは、納得出来ないと思った。学生だからこそ出来ることをやろう。私は、思い切って「やる気応援奨学金」に出願したのであった。いま思えば、「やる気応援奨学金」は私への「マイクロファイナンス」であったように感じる。

マイクロファイナンスの研究

 グラミン銀行のマイクロファイナンスは四〇〇〇タカ(四〇〇〇円)という小規模な融資から始まる。この返済が完了し信頼に足る人物であると判断されればその借り手は次の融資を受けることが可能となる。グラミン銀行におけるマイクロファイナンスによる融資は貸倒率も低く、驚異の実績を上げている。日本でもこのようなマイクロファイナンスの仕組みや影響を解説している文献は見付けることが出来る。ところが、具体的な数値を伴う文献を見たことがない。どのようなプロセスを経て信用を評価し借り手は融資を受けているのか。融資を受けた貧困層の人々はどのような活動を行い、どのように貧困を抜け出したのか。何もかも分からないままだった。本インターンシップでは文献に記述されていない現場のデータを得ることが出来た。そして、新たなる疑問が生まれた。マイクロファイナンスが本当に機能しているのかということである。いま思い返すと、この疑問こそが成果であったといえる。グラミン銀行のインターンシップでは一週間程度農村で生活をするというプログラムが用意されていた。私は融資の現場を見たからこそ、問題意識を持つことが出来たのである。

 例えばマイクロファイナンスと経済規模の関係である。マイクロファイナンスを受けた借り手は小規模なアグリビジネス(農業ビジネス)や乳牛の飼育などに資金を充当し、生計を立てようとしていく。ここで問題となるのが経済規模である。農村における経済規模はインフラなどの制約もあり農村レベルでとどまってしまう。多くの借り手がアグリビジネスに進出すると、需給関係から野菜の値段は下落する。牛乳の価格も下がってしまう。農村において、借り手が同様のビジネスを行う場合、その拡大に限界があるように思えた。

 更に、女性のエンパワーメントを一つの目標に掲げているグラミン銀行の融資方法が実際には機能していないことも問題である。それは、グラミン銀行の借り手の九七%は女性であるものの、融資されたお金が結局男性へと流れてしまっているということである。たとえば借りたお金をリキシャ(人力車)の購入資金に使うとする。しかし、日々客を乗せて稼ぐのは男性である。女性の自立を考えた時、出来る限り女性が出来る仕事に融資が行われるべきではないだろうか。

 本インターンシップではマイクロファイナンスの実情を、身をもって知ることが出来たと同時に多くの疑問を新たに持つことが出来た。貧困削減を目的とするマイクロファイナンスの在り方を再考するきっかけをつかんだといえよう。

「国際協力」とは何か

 先進国はその発展を国際協力・国際貢献としてさまざまな形で支援を行う責任を持っているといえる。しかし、各国の行う支援は本当に正しい行動なのだろうか。私はバングラデシュでの活動を通して国際協力や国際貢献という言葉に懐疑心を持ち、再び考えるようになった。

 首都であるダッカですら雨が降れば道路は冠水し、がたがたの道が続いている。現地の人々はこのような道路が気にはなるようだが、解決しなければならない重要な問題であるとは思わないようである。しかし、私のように現地を訪れた外国人にとってはまず道路の状態に問題意識を持ってしまうのである。なぜなら、そこに我々の当たり前が存在していないからでる。私はここに「国際協力」の大事なポイントがあるように感じた。

 先進国の人にとって当たり前である「整備された道路」がない途上国に対して、先進国は道路の整備という支援をすべきという考えを持つ人が多いのではないだろうか。しかし、これは非常に短絡的である。「魚を与えるのではなく、魚の取り方教えるべきだ」という考えがあるように、途上国の自立を考える必要がある。この考え方を前提とすれば先進国は「整備された道路」を作ることを可能にする技術を伝える支援が正しい道だと言える。

 しかし、我々は前提的な争点を見落としてはいけない。そもそも彼らは「魚」を必要としているのかということである。この争点を見落とせば、国際協力としての支援はいわゆる先進国による社会的「おせっかい」にすぎず、途上国の発展を阻害してしまうといえる。先進国の持つ発展途上国に対する責任は決して名目的な支援ではない。各種インフラの整備や教育の充実、更には法律整備など途上国が必要としているものは多岐にわたるだろうが、まず当事者の途上国の国民や政府による自助努力に期待する必要があるだろう。そして、我々はいかにそれをサポートすることが出来るのか考えていかねばならない。

人生を懸けられる問題意識

 バングラデシュでは、何か行動を起こしたくても、そのための原資を用意することが出来ず、新しい挑戦を行えない状況が存在している。たとえビジネスを始めたところでそのビジネスを拡大していくことが困難な現状もある。インフラ整備の遅れは国家全体の経済成長を妨げていると言っても過言ではない。貧困・経済開発などの多種多様な問題を目の当たりにし、これらを解決したいという強い気持ちが生まれた。一方で、海外における問題解決のみを軸にキャリア形成を進めるのではなく、日本人として、日本の地域金融の問題解決にも目を向けなければならないと考えている。まずは日本の地域金融を活性化する手段を考えながら、バングラデシュを始めとする発展途上国の経済発展を目指すスキームを作っていきたいと考えるようになった。日本の成長と発展途上国の成長を両輪にしていければ良いと考える。常に我々が問題解決を繰り返していくことが使命なのではないかと思った。

 自然破壊や環境汚染・貧困・人口・紛争・感染症対策・食糧危機などの問題が一層深刻化してきている。景気の後退・教育倫理や企業倫理・少子化・福祉・政治不信など、日本にも問題は既に山積している。このような混沌とした時代から脱却し、地球規模での真の平和を実現するためには、各国が自国の特性を生かした貢献を早急に行うことが必要だ。法は社会の骨格、経済は社会の血液のような形で社会循環を成立させている。それらの融合と同時に国際的視野を持ち、考えをより成熟させていくことが、国際社会を生きる我々の課題であろう。日本とアジア諸国・欧米諸国との関係を友好に保ちながら経済交流を進め、あらゆる方向から世界をとらえていくために「グローバル・ビジネスリーダー」になりうる人材を社会は求めているはずだ。国際的な視野を有し、問題発見・解決に当たり、置かれた環境に適応していく人材を世界は必要としている。

 私は、「グローバル・ビジネスリーダー」と呼ばれる社会的インパクトを持つ人材がリーダーシップを取ることで、価値観や経済的発展に相違のある国々が、あるいは企業が、手を携えて更なる発展と平和を目指すことに貢献することが理想だと考える。私はその過程に参画しサポートしていきたい。

 日本人には可能性があると思う。バングラデシュを訪れ、現地で出会った方々に感謝されることが多かった。インフラの整備を始め多数の支援を行ってきている日本は世界をリードする可能性は十二分にあると考えた。日本人のアイデンティティーを忘れることなく、秩序正しく、経済的・文化的・人的交流を果たしていかねばならない。

やりがいを仕事に

 人には、その人にしか出来ない使命がある。私は法律を学ぶと同時に金融・経済に興味を持って勉強を続けてきた。更にバングラデシュを始め海外への渡航経験もある。二〇年という短い過去の蓄積を振り返り、いま自分に出来ることは何か、これからやるべきことは何かを考えた。もちろん、日本という国にも使命があるはずだ。戦後の六〇年で経済大国に発展してきた日本はその成長で得たものを世界に還元していくべきであろう。こう考えた時、自分の進路をイメージ出来るようになった。

 インターンシップ中、JICAによって建設されたジャムナ橋との出会いも大きな変化を私にもたらした。私の中で「プロジェクト・ファイナンス」への興味を再燃させたのである。プロジェクト・ファイナンスは二年次に学外で勉強したことがあった。その時は金融の一つのアプローチにすぎないと思った。しかし、バングラデシュでジャムナ橋を見て感動をした。ジャムナ橋は今まで船を使って移動してきた地域住民のアクセスを劇的に改善させた。そして経済効果をももたらした。一つの施設を造ることによって、地域の問題を解決し、地域を活性化させる効果をもたらす。個人レベルでは解決しえない問題をジャムナ橋は解決したのである。

グラミン銀行支部長と
グラミン銀行支部長と

 ジャムナ橋自体はプロジェクト・ファイナンスが利用されているわけではないが、多くの国で飛行場や発電所などにこのファイナンス方式は利用されている。日本でも利用された実績があり、羽田空港国際ターミナルはプロジェクト・ファイナンスによる案件である。生活やビジネスをするうえで必要なインフラなどに対して、プロジェクトのキャッシュフローをベースに融資額を決定するのがプロジェクト・ファイナンスの特徴だ。このプロジェクト・ファイナンスの案件は長期的な融資となり、あらゆるリスクと隣り合わせである。だからこそ、綿密な事前計画やリスク予測に基づいて、種々の契約を結び、案件のクローズを目指すプロジェクト・ファイナンスにかかわる仕事は、法学部での学修と個人的に勉強してきた金融に関する知識を生かすことの出来る世界だと感じた。

 日本では、国の健全な発展を確保すると共に、相互依存の進む国際経済社会の健全な発展のため国際協力銀行(JBIC)が活躍している。政府系金融機関としてJBICは主体的な役割を担い、民間金融機関の活動を補完・奨励し、また日本企業の戦略的海外投融資を支援することを目的として業務を行っている。

 私はJBICに代表されるような国際金融の世界を「グローバル・ビジネスリーダー」としてのキャリア形成の舞台としたい。向学心を忘れることなく、金融のプロフェッショナルとして歩んでいきたい。世界のため、日本のために。

おわりに

 私は奨学金の存在を一年生の時から知ってはいた。しかしながら何を目的に申請して良いか全く分からなかった。だからこそ、何か自分が熱中出来ること、もっと知りたいと思うことを探すための努力をした。そして熱中出来るテーマを見付けた時、「やる気応援奨学金」という素晴らしい制度に助けられた。何かに打ち込んでいれば、きっと人生を懸けて取り組みたいことが見付かるはずだ。

 ぜひ後輩の皆さんにも「やる気応援奨学金」を利用して世界を見てもらいたい。「やる気応援奨学金」は、我々の夢への投資であるはずだ。我々は世界に羽ばたいていくことでその期待に応えることが出来るであろう。そして感謝を表すことが出来るだろう。これから私は社会に出ていく身である。思考停止することなく、問題解決というプロセスを繰り返しながら、より良い社会を目指すべく人生を全うしたいと思う。人生を懸けて感謝を具体化していきたい。

草のみどり 252号掲載(2012年1月号)

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