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法学部
【活動レポート】杉建 陽一朗 (法律学科3年)

「やる気応援奨学金」リポート(58) アフリカのガーナで人権活動 将来法律家として社会貢献を

はじめに

ガーナと聞けば、日本に住む大半の方はガーナチョコレートを連想すると思います。実際に原料であるカカオはガーナの主要な産物の1つであり、ガーナにはたくさんのカカオ農園があります。私はコンビニやスーパーマーケットなどでガーナチョコレートをよく見掛けるのですが、ガーナに行った前と後ではその見方が一変しました。
日本に輸出されるチョコレートの原料を作っているカカオ農園では、3歳から18歳までの子供たちが人身売買され、1日12時間以上の厳しい労働を強制されているという背景があります。私はガーナで人権活動をし、児童の人身売買の現状を目の当たりにしました。

ガーナまで

私は一般部門の「やる気応援奨学金」を頂き、NGO団体に参加してガーナで人権活動を行いました。まず、ガーナで人権活動をしようと思った動機について説明したいと思います。私は炎の塔に所属する白鴻会研究室及び法職多摩研究室に所属し、法科大学院受験及び新司法試験を目指して、炎の塔で勉強しています。ご存じのとおり中央大学法学部は多くの優秀な法律家を輩出しています。私もそのような先輩方に続きたいと思い、大学1年生の時から先生方や先輩方の指導の下、司法試験に合格すべく法律を勉強してきました。
今、法律家を目指すとなると、法科大学院に行かなければならず、大変な費用が掛かります。また、新司法試験では法科大学院を卒業した後、3回以内に試験に合格しなければならないなど合格者数が増えたとはいっても難関な試験であることに変わりはありません。この試験に合格しても、すぐに収入と地位が保証されるわけでもなく、弁護士の就職難まで叫ばれています。このような厳しい現状を考えたうえで、ただ周りに流されるだけでなく、法律家の役割や魅力を認識したうえで、自分自身が選択して、司法試験に臨み、法律家になって将来は社会に貢献したいと思っていました。
私は研究室に所属しているおかげで、弁護士や裁判官になられた先輩方から貴重なお話を頂く機会があります。大学の授業でも実務家の先生のゼミに参加する機会もありました。確かにそのような機会のおかげで、法律家の魅力については理解出来たような気がします。
しかし、法律家の社会における役割、日本国憲法11条や弁護士法1条でうたわれている「基本的人権」を擁護することの重要性を理解することは出来ませんでした。そこで、日本に比べて法が整備されておらず、人権侵害も多発しているであろう、発展途上国で人権活動をすることを思い付きました。実際に現場に行き、その地で人権擁護に携わっている方と共に活動をすれば、その一端を感じ取ることが出来ると思ったからです。
自分の人生の進路を確定するうえで大変重要である大学3年生という時期に私がガーナ行きを決意したのはこのような動機です。
なぜ、数ある発展途上国の中からガーナを選んだのか疑問に思う方もおられるかと思いますが、ガーナは英語が公用語になっていて、アフリカの中では最も治安の良い国の1つなので、この国を渡航先として選びました。法曹人口が増える中、英語が出来るということは武器の1つになると思います。人権活動をするだけでなく、私はこの機会に英語を使って仕事をしたいと思いました。

ガーナについて

ガーナは赤道直下の西アフリカに属し、かつてはイギリスの植民地で、現在でも英語が公用語として使用されています。赤道直下のアフリカといえば、大変暑いイメージがあると思います。確かに、日中は35℃近くにまで気温は上がるのですが、夜は20℃を下回る時もあって半袖で寝ていると寒いくらいです。食べ物はプランテーンという食用バナナやヤム芋、キャッサバが主食となっています。私は現地の食事にあまり慣れることは出来なかったのですが、パンやスパゲティなどは簡単に手に入れることが出来たので、食事には大して困りませんでした。現地のチト語とガ語というガーナ特有の言葉もあるのですが、初等教育を受けた方は皆英語を話すことが出来ます。
この地で私は、2カ月間、法律家を目指すイギリスやポルトガル、アメリカなどの同世代の欧米人と共に人権活動をしました。

ガーナ滞在の前半について

ガーナ滞在の前半は去年紛争のあった町、山奥にある原始宗教のキャンプ、スラム、裁判所、孤児院、児童労働の現場、リベリア人の難民キャンプなどを視察しました。

一昨年紛争のあったオドマンにて

オドマンという首都のアクラに近い町では、一昨年の10月にその町の長が交代する時に紛争があり、数多くの人が虐殺されました。私たちが日本で平和に暮らしているこの間にも、世界では理不尽に命を奪われている人がいます。
また、原始宗教のキャンプも印象的でした。私は10ほどのキャンプを視察する機会がありました。それぞれが独自の神を崇拝しています。生きている人を神とあがめるキャンプもあれば、井戸の水に神が宿っていると主張するキャンプもありました。
私たちはこれらのキャンプを、宗教を勉強している学生ということで訪ね、そのキャンプの長から話を聞いて回りました。人権活動を行っていると言えば、彼らが自分の信仰を妨害されると思って警戒するからです。このようなキャンプでは神の力を絶対的に信頼しています。例えば、あるキャンプではHIVに感染した患者が訪れれば、医者からもらう薬の服用を中止させ、神に祈れば必ず治ると教えていると言っていました。また、別のキャンプで私がこの村の人の平均寿命はどれくらいかと質問したところ、人間は魂が肉体に入って、時が過ぎて魂が抜けるだけだから寿命というものは存在しないと当然のように言われました。自分とは全く違う考え方を持っていることに大変な衝撃を受けました。ガーナだけでなく、アフリカにはどこでもこのようなキャンプが存在するということです。
女子中学生に職業訓練の重要性についてスピーチをする友達をサポートするためにスラムにも行きました。スラムでは道の真ん中を下水道が流れていて悪臭が漂い、ガラスの破片が散乱しています。そのような環境で幼稚園生くらいの子供たちが遊んでいました。実際にその場に行って肌で感じることは写真で見ることの何百倍ものインパクトがあります。

スラムの作業場

また、その時にスラムに住む人が働く作業場に行く機会もありました。そこでは先進国から送られてきたコンピューターを焼いて、その中から銅などの金属を取り出していました。有害な煙、悪臭が漂っています。私はポルトガル人の友達と一緒にこの仕事の危険性についてのスピーチをしたいと、このコミュニティーの長に交渉をしにいきました。このコミュニティーでは私たちが訪ねた前日にけんかで2人死んで、状況が不安定であるため、今はやめてほしいと断られました。ここで起こることは日本にいたら考えられないようなことばかりです。
そのほかにアムネスティインターナショナルの会議や女性の権利集会に参加し、視察だけでなく貴重な経験をたくさんさせていただきました。

ガーナでの滞在後半について

ガーナに来て2週間ほどがたち、アフリカの貧困と人権侵害の大きさに圧倒されました。しかし、せっかくガーナに来たのだからこの地で自分の出来ることを探したいと思い、ガーナの弁護士の方に相談したり、インターネットで検索したりと自分自身がこの地で出来ることを模索しました。そして、自分は子供の人権に興味があったので、人権侵害を受けている子供を1人でも救えるようにプロジェクトを企画していきました。
そして、セニャベラクという町で子供の人身売買をリサーチすることに決定しました。この町は首都のアクラからバスで、2時間ほどで行くことが出来ます。35000人ほどの住民がおり、ガーナで最も貧しい地域に属する町です。ガーナでは2005年にHUMAN TRAFFICKING ACTという人身売買を取り締まる法律が制定されました。その法律の中では、たとえ親であっても人を売った場合は5年以上の懲役が科せられます。それにもかかわらず、この町では人身売買が数多く行われています。
当初、アムネスティインターナショナルとの会議などを経て、私は人身売買された子供を助けるために、そのマスターに補償金を払って救助するという方法を考えていました。調べていくうちにその考えが大変甘いものだということを実感していきました。セニャベラクの子供たちまず、人身売買された子供を識別することが大変難しいからです。そして、大半の場合売買される子供の親は彼らを育てる資力がないから、救助してもまた子供を売ってしまいます。そのため、子供を救助するためには、補償金のほかに彼らが親元に帰った後の金銭的サポートもしなければいけません。もっとも、これらを考えると金額として大き過ぎ、実現は不可能です。そこで、この町で人身売買がどのような形で、どれほど起こっているかということをリポートにしてまとめ、ガーナの厚生労働省に送るという活動に変更しました。滞在期間が限られていたため、私は活動の途中で日本に帰国しなければなりませんでしたが、現在もほかのボランティアによって続けられています。ガーナに行き、今の自分は無力だということを痛烈に感じましたが、子供が1人でも幸せになれば良い、と心から思います。
人身売買の背景には貧困があります。この村の人々は1日100円ほどしか稼ぐことが出来ません。この町は漁業を営んでいる人が多く、取った魚で物々交換などが行われているため、彼らの活動をすべて金銭に換算することは出来ないのですが、それでも子供を育てる余裕はありません。私がインタビューした母親はHUMAN TRAFFICKING ACTを知っていて、警察に逮捕されることを覚悟のうえで貧困のため子供を売ったのだと言っていました。彼女の話によると、約3000円で子供を売り、月に約700円がマスターから送られてくるのだそうです。そして、子供がどのような労働をさせられているかは分からないということです。
私は漁村の人身売買の現状について調べましたが、最初に述べましたカカオ農園でも同様のことが行われています。

ガーナでの休日

ボランティア仲間との休日

今までのガーナについての記述を読まれると、ガーナは大変暗い国なのだと思われるかも知れません。しかし、ガーナの方々はフレンドリーですし、日本ではありえないような大変奇麗な景色もたくさん存在します。週末はボランティアの仲間とバスに乗って旅行に行きました。観光地ではないので自然がそのまま残されています。
ガーナにも西洋風のバーがあって、仕事が終わった後はヨーロッパ人の友達とサッカーを見たり、ビリヤードをしたりと休みの時間は楽しむことが出来ました。

終わりに

私がガーナで1番感じたことは子供が希望を持てる社会が1番良いということです。人が集まって生活をしていると、それぞれが自己の利益を追求し、結果として人権侵害は確実に引き起こされます。貧困などがあり自分の生活に余裕が持てなくなると、その度合いは一層強くなるのだと思います。人権侵害のため、子供たちは劣悪な環境に置かれますが、人間、特に子供はそのような環境でも適応することが出来てしまいます。私は人として扱われていないような子供をガーナでたくさん見てきました。そして、劣悪な環境に置かれている彼らには希望がないということも感じ取ることが出来ました。彼らには自信がなく、毎日人から命令されているだけで、自分は思うことを主張する権利すらないのだと思い込んでいるからだと思います。
日本国内で法律実務を経験したわけでもなく、一司法試験受験生の私がこのようなことを言うのは大変恐れ多いことなのですが、そのような子供たちに、人間は生まれながらにして人権を有していることを気付かせ、人権侵害を防止し、皆が安心して生活出来る社会を作ることは、法律そして法律家の大事な役割だと思います。前述のように、社会は法律で取り締まっていかないと弱者である子供は虐げられてしまい、子供が次の社会を担うのだから、結局は将来的にも健全な社会というものは作れなくなってしまいます。正しいかどうかは分かりませんが、ガーナに行くことで法律家の役割、魅力の一端を感じ取ることが出来たような気がします。
わざわざ、アフリカに行かなくてもたくさんの人権侵害が日本にも存在します。日本にいる間はなかなか気付くことが出来ませんでしたが、ガーナでの活動を経てそのようなことにも目を向けることが出来るようになりました。
法科大学院受験を控えている時期にこのような挑戦をする決断には勇気が要りましたが、現時点では行って良かったような気がしています。
最後に、両親、先生方、この無謀な挑戦を応援してくれたすべての方にこの場を借りて深い感謝を申し上げます。

草のみどり 232号掲載(2010年1月号)

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