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法学部
【活動レポート】野間 恵莉 (2008年度法学部法律学科卒)

「やる気応援奨学金」リポート(52) ロシアの文化認識と語学研修 短期留学を経験し自分に自信

はじめに

私は、「やる気応援奨学金一般部門」をいただいて、この2月にロシア短期留学を行いました。今回のロシア短期留学について御報告いたします。まず、ロシアでの短期留学を考えた動機と目的、次に留学の内容を体験と共に述べていき、最後に今回の留学の成果を述べたいと思います。本報告書を通して、多くの方にロシアという国の魅力を少しでも知っていただければ幸いです。

なぜロシアを選んだのか

ロシアでの短期留学の目的は、ロシアの文化認識とロシア語能力の向上でした。なぜそのような目標を立てたかというと、将来弁護士として中央アジア(ここで言う中央アジアとは、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタンの5カ国とします)での法整備支援活動を行う際の基盤を作っておきたいと考えたからです。法整備支援とは、簡潔に言うと、開発途上国が行う法整備のための努力を支援することで、主に、具体的な法令案作成に対する支援、法令の執行・運用のための体制整備に対する支援、法律専門家などの人材育成に対する支援の3つがあります。当初、日本の法整備支援は東南アジアの国を対象としていましたが、近年は中央アジアにも範囲を広げています。中央アジアの場合は、前記3つの支援方法の中では後の2つがなされています。例えば、ウズベキスタンでは、2005年から2007年にかけて「倒産法注釈書作成支援プロジェクト」が行われました。ウズベキスタンでは、ソ連崩壊後に制定した倒産法が機能しておらず、その状況を改善する必要があったので、日本が協力をしてこのプロジェクトが実施されました。中央アジア諸国では社会変容に伴い、ウズベキスタンのような新たな法の課題を抱えており、今後も日本は中央アジアの国での法整備支援を続ける可能性は高いと言えます。
法整備支援を行う時に必要となることは、法律知識、語学力、文化認識であると考えています。私は4月から法科大学院へ進学することになっているのですが、4年の冬に3年間の法科大学院生活では出来ない、語学力の向上と文化認識をしておくことが必要だと考え始めました。中央アジアでは、まだロシア語を使用しているので、ロシア語を学ぶ必要性には納得されると思いますが、なぜ、ロシアの文化認識をする必要があるのかを不思議に思う方もいるでしょう。本来なら、中央アジアへ行くべきなのかも知れませんが、なぜ私はロシアへ行くことにしたのでしょうか。法律は、その国の文化の影響を大きく受けています。中央アジアの法律はロシアの法律の流れをくむものであり、ロシアの文化を知ることで中央アジアの法律を理解しやすくなると考えたからで、そのことがロシアを選んだ理由です。また、小学生のころよりロシアに魅了され、大学入学後は3年次・4年次のゼミ論でロシアに関するものを執筆しており、現地を実体験して知りたいという気持ちが大きくなったことも、もう1つの理由でした。雪が降る2月のロシアが非常に寒いということも考えることが出来ないほどに、私はロシアに行きたいという思いが募る中で、計画を立て始めていました。

活動内容

今回の短期留学では、地域としては、モスクワに3週間、サンクトペテルブルグに1週間滞在しました。モスクワでは、モスクワ大学文学部国際ロシア語コースで語学研修を行い、授業のない時には市内周辺を探索しました。サンクトペテルブルグでは市内探索を継続し、自分のロシア語の達成度を測るように行動しました。文化認識の内容としては、教会、文学者の博物館、美術館、宮殿を巡り、音楽鑑賞を行うことです。私の考える文化認識とは、その土地の風土との関連で醸成されてきたものを自分で実体験することであり、現地に行き、現地の人々と交流し、芸術鑑賞などをすることで可能となることでした。

出発前の不安と到着後の不安

ロシアに行く際にビザの取得は不可欠です。留学ビザであれば、受け入れ先からの招待状を受け取り、大使館に申請するだけなので非常に簡単です。しかし、何カ月も前から頼んでも、受け入れ先から招待状が届くのは直前であるらしく、旅立つこと自体が不可能なのではないかと、1月の中旬まで不安な日々を送りました。ビザを取得したことで、旅に対する不安の50%は解消したと思えました。

ライトアップ時のモスクワ大学

安心したのはつかの間で、ロシアに到着後も不安なことばかりでした。モスクワ大学の周りは建物ばかりでどこに何があるか全く分からず、最初は両替さえ出来ませんでした。しかし、慣れてくると、大学の建物内でクリーニングを頼むことや食物・雑貨を買うことが出来ることが分かりました。近くの駅までは歩いて15分ほどでしたが、小型バスのようなものに乗ると5分程度で駅に行けるので、比較的便利な環境であったかと思います。この小型バスはロシアではよく利用されるもので、停留所でない所でも乗り降りが出来ます。バスよりも運転手との距離が近いので場所が分からないと気軽に質問することが出来、私は頻繁に利用しました。
ロシアでは働く女性が多く、売店のほとんどは女性が仕切っています。大学に入る時や寮に入る時には警官がおり、学生証などを見せる必要があるのですが、その警官の中にも女性が必ずいます。私は、これらの女性が働いている所で物を買ったり、質問するのは苦手でした。なぜなら、女性の対応が怖いからです。何を聞いても怒っているように聞こえて、間違ったことが言えません。ロシアにおける日常生活でかなりのプレッシャーでした。大学の中でも、怖そうでない人がレジをしている食堂や売店を探して利用するようにしました。

授業の内容

モスクワ大学には大学内に寮があり、寮は理系の学部があるメーンビルディングに近接しています。文系の学部はメーンビルディングから少し離れた所に建っています。私は寮に住み、文学部の校舎で火曜日から金曜日の午前9時30分から午後2時に授業を受けました。授業は会話中心で、文法も随所で教える形式でした。生徒は、最初の1週間はスウェーデン人1人と日本人3人でした。私を除く日本人の2人は外務省関係の方で半年以上モスクワに滞在しており、1人のスウェーデン人は母親がロシア人であったので、非常にレベルの高い会話の授業が私の入った初日から繰り広げられました。そのおかげで、毎日、ロシア語をシャワーのように浴びることが出来ました。授業では、ほかの日本人の方が日本の文化をロシア語で非常にうまく説明出来ることに驚きました。自分の国の文化を外国語で説明出来ることは外国語を学ぶ時に重要なことであると実感しました。

クレムリンを背景に

残りの2週間はスウェーデン人3人と日本人1人(私)での授業でした。初めの1週間は日本人が多かったので、日本文化を嫌というほど話すことを余儀なくされましたが、後の2週間は、スウェーデン文化をかなり知ることが出来ました。3週間の授業での人種構成から、私はスウェーデン人のロシアへの関心度は高いものだと思いました。しかし、実際はそうではなく、スウェーデンでもロシア語を学ぶ人は少なく、ロシアでスウェーデン人留学生と会ったというのは珍しいことだったようです。

苦痛の10日間

ロシアに渡ってから最初の方に、私は3人の日本人と出会いました。その時に、3人とも口をそろえて、最近のモスクワ情勢について注意をしてくださいました。アジア系の顔の人を狙った犯罪が去年の12月ころから多発しており、殺人事件も起きているということでした。モスクワ大学の近くでも事件があったとのことです。ロシア内での失業率が高くなっており、なぜかその不満のはけ口がアジア人へと向かうということを聞きましたが、真実は分かりません。その話を聞き、どのように気を付ければ良いのか分からず、最初の10日間はほぼ大学と寮の往復でした。その間に授業の復習をし、ロシアの新聞や雑誌を読み、ロシア語の訓練を続けました。大学周辺については詳しくなったのですが、街へ出る第一歩を踏み出せないままもやもやしていました。今思えば惜しいことをしたと思います。ただ、単調な生活のように思えますが、ロシアという国に自分がいることを考えると、いつも興奮した状態であったと思います。しかし、このまま今回の留学を終わらせるわけにはいかない、自分には使命があるのだと考える日々が続いていました。

厳かな雰囲気のセルギエフ・ポサード

その突破口を開いたのは、クラスメートのスウェーデン人でした。最初の1週間で出会ったクラスメートは週末も忙しく、残念ながら一緒に外出することが出来ませんでした。しかし、2週目にして街への同行者を見付けることが出来、やっとクレムリンに行くことが出来ました。1度外に出てしまえば、ロシアは意外と安全だと気付きました。そして、その後の私の生活は急激に変化し、毎日市内周辺を歩き回る日々が続き、さまざまなロシアの雰囲気を吸収していったのでした。ロシアで歩き回る際に大変だったのは、地図では短く書かれていても、土地が広いため実際に移動するのにとても時間が掛かったことや、日本の地図には詳しく記されていない所も多いことでした。しかし、迷うような所に行くことで、道行く人々に目的地への行き方を聞けましたし、恐らく電車に乗ろうとしていたのでしょうが、そのことも言わずに15分ほど掛かって道案内をしてくれるような人にも出会えました。そこで、ロシア人の親切さを知ることが出来たのでした。

教会・文学博物館・美術館・宮殿巡りとバレエ・演劇鑑賞

モスクワ滞在時に、エレクトリーチカという近郊列車に乗り、セルギエフ・ポサードへ行きました。ここは、黄金の環と呼ばれるモスクワの北東に位置する古都の1部で、ロシア正教会の中心の1つです。観光地化されている場所のはずでしたが、寒さが厳しいということもあって、観光地としての明るさはありませんでした。教会の周りには、雪が積もっているのにもかかわらず、地面に座り込み、物ごいをしている親子がいました。教会の中には、熱心に祈っている貧しそうな人々がいます。出入り口ではお金をねだる老女がずっと声を掛けてきます。ここで初めて教会のある種の怖さのようなものを知りましたし、またロシアの格差問題を目の当たりにしました。厳かな教会の雰囲気は、自分のような者が入ってはいけない空間ではないかと思い、戸惑うばかりでした。これは、その後訪問したほかの教会でも同じでした。ロシアの地における、宗教の存在の大きさを認識しました。
文学は、その書かれた時代の様相を反映しているものです。そのことを詳しく知るために、文学博物館も多く訪れました。ロシアの文学者の博物館というと、1人の文学者につき2つの建物がある場合が多いです。例えば、トルストイならばトルストイ博物館とトルストイの家博物館があります。前者は主要作品の詳しい紹介がされており、作家の生涯の資料なども置いています。後者は、前者と同様に作品もありますが、作家が住んでいた当時を再現したり実際の書斎などを残しており、見学が出来るようにしています。ロシアの文学というと、暗く難しいというイメージがあるかと思いますが、これらを見学すると、子供好きな人であったという一面など、その作家の人間味が見えてきて、また時代背景も理解することが出来ます。それらの時代背景を踏まえて存在するのがロシアなのだと考えると、ロシアに対して今までと違った見方が出来るようになりました。
美術館と宮殿は同じようなものと考えることが出来ます。美術館に行っても、絵を見ると同時に建物も芸術品として鑑賞する必要があります。宮殿にも絵や多くの芸術品を展示しています。美術はロシアでは基礎教養とされており、文学作品と同様にその時々の歴史を反映しています。郊外の有名な宮殿にも行きましたが、湖は完全に凍り、噴水は動かない状態でした。冬に行く場所ではないのだと認識しましたが、それでも冬の風情を感じることが出来ました。

授業最終日に先生とクラスメートと

2作品のバレエと演劇を1作品見ることも出来ました。ロシア芸術の素晴らしさを実感したのは当然ですが、チケットを買うことも良い勉強になりました。希望する席を指示することが出来なかったので、言葉のみで行います。普段使わない言葉を使わなければならないので、望みの席を確保するまでに苦労しました。ロシアで上演されるコンサートや演劇は、1回から2回の休憩が入ります。バレエを見た時は、その休憩の間もオーケストラの数人がバラライカの演奏をしていました。演劇の場合は、始まるまでの間に手品などをしていました。普段はあまり感じないのですが、ロシアの人々はサービス精神が旺盛なのだと思いました。
多くの施設では、学生証を持っていたのでほぼ無料で入館することが出来ました。また、冬ということもあって、あまり入場者もいない場所もあり、有意義に過ごすことが可能でした。見学施設には各部屋に監視人(多くはおばあさん)がおり、冷たい視線を向けてくるので、あまり良い感じはしませんでした。しかし、監視する人の存在やコートを預けるクロークを設けたり、館内がぬれないように靴にビニール製の簡易スリッパを履かせるようにしていることから、非常に芸術品を大切にしていることが分かりました。

活動成果

今回の短期留学は、自分にとって非常に良い経験となりました。結果として、行く前よりもロシアという国への興味が更にわいてきました。今回得たことは、大きく分けて3つ、ロシアへの認識、コミュニケーションの取り方、自分への自信です。
現地へ行き、人々と触れ合い、街を歩き回ったことでロシアの良さや悪さを実感し、以前よりはロシアという国を理解することが出来るようになったと思います。英語がほとんど通じずロシア語で通しましたが、分からないこともどうにか説明することで、どのようにしたら言葉が通じない時でも人は理解を示してくれるのかを学びました。そして、自分で計画を立てそれを実行すること、未知の国で1カ月の生活を送ったことで自分でも出来ることはあるのだと、自分に自信を持つことが出来ました。また、人に頼ることの大切さも学びました。今回の留学では、私が留学をしたいと言うと、先生や友人が協力してくれ、知人を紹介してくれたりもしました。今まで私は自力でやろうとすることが多かったけれど、人に頼っても良い部分はあるのだと実感しました。大学生最後に良い経験をすることが出来、今後の教訓を得ることが出来ました。

終わりに

今回の短期留学は、ロシアへの認識、コミュニケーションの取り方、自分への自信ばかりでなく多くの刺激も得ることが出来、掛け替えのない経験となりました。この経験は将来の人生のためだけでなく、この4月からの法科大学院での生活にも役立つと考えます。
最後になりましたが、奨学金手続きなどの援助をしてくださっている先輩方、小杉先生を始めとするやる気応援奨学金委員の先生方、ロシア語の藤井先生、リソースセンターの方々、最終的には留学を許可してくれた両親、そして私の今回の留学にかかわってくださった多くの人々に感謝の念を記して、終わりといたします。

草のみどり 226号掲載(2009年6月号)

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