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法学部
【活動レポート】渡邊 浩一 (法律学科4年)

「やる気応援奨学金」リポート(18) 東ティモールの独立に学んで 理念と現実を結ぶ過程が重要

私は、「やる気応援奨学金」を頂いて、今世紀最初の独立国である東ティモールの国連事務所で昨年の8月21日から27日までインターンシップを行い、東ティモールの現場検証並びに今後の同国の発展の考察と提案をしてまいりました。以下では、私が東ティモールで行った活動の報告及び活動の成果とそこから考えたことや感じたことなどを記したいと思います。
まず、日本からは東ティモールへ行く直行便が出ていないため、私はバリ島を経由して東ティモールへ入国しました。私は今回、法学部のインターンシップ「国際-外交と国際業務」の授業の一環としてほかの8人のインターンシップ生と共に東ティモール国連事務所(UNOTIL)でインターンシップを行いました。
私たちが入国すると、UNOTILの平井さんという方が出迎えてくださいました。当初のスケジュールでは到着した初日はまだ本格的な研修は始まらないはずだったのですが、平井さんを始めとしたさまざまな方の御尽力もあって、到着直後にUNOTILの長谷川代表を訪問し、東ティモールでの国連の役割を中心に現地の生活水準や今起こっている問題やそれらの対策など、多岐にわたるお話をお伺いする機会を持つことが出来ました。
私たちは、入国前に日本で自発的に東ティモールについて勉強していったのですが、やはり、現地で実際に国連を総轄している方のお話はとても新鮮で、日本で勉強した時には気付かなかった問題も多く、ここでのお話がこの日以降のインターンシップでも生きていた、とインターンシップを終えた今でも強く感じます。
例えば、東ティモールでの言語の問題がさまざまな分野での活動でネックになっていることなどが挙げられます。これはどういうことかというと、東ティモールでは全部で4種類の言語が使われており、統一を図るもののなかなかうまくいっていないのです。
具体的にいうと、東ティモールで使われている言語は、公用語とされるポルトガル語、地元の人々の言葉であるテトゥン語、多くの人が使うことの出来るインドネシア語、そして国連公用語の1つでもある英語の4つの言語です。
しかし、ポルトガル語は現時点では国民のうちのほんの1握りの人しか使えず、インドネシア語も何年にもわたるインドネシアの占領や騒乱などから公用語として使うには抵抗があるため、現在テトゥン語を公用語にしようという動きもありますが、テトゥン語は時制がなかったり語いが少なかったり話し言葉に過ぎなかったりというように、文法としても言葉としても公用語とするためには長い時間が掛かる、と私は考えています。
私たちは、UNOTILで東ティモールの警察、人権、政治問題、そのほか重大な犯罪などについてのさまざまな説明を受け、ほかにも国連開発計画(UNDP)や国連児童基金(UNICEF)、日本大使館、JICA事務所などに赴いてお話を伺う中で、独立して間もないこの国の問題を多角的な視点から検証する切っ掛けを得てきましたが、それ以外にもさまざまな活動をして色々と考えることがあったので、幾つか取り上げて報告したいと思います。
まず、私たちは大統領府を訪問し、シャナナ・グスマン大統領と面会することが出来ました。大統領府は別名「廃墟の宮殿」と呼ばれており、インドネシアとの騒乱で破壊された状態をそのままにしてあります。大統領府だけに限らず、後ほど述べる東ティモール国立大学でも1999年にあった騒乱の傷跡がありありと残っていました。

ほかのインターンシップ生と共に

私たちが訪れた時点では最貧国の1つといわれながらも治安は意外と安定していたのですが、数年前まではそうした惨事が起こっていたことを考えると、現地の人々の心の傷跡もまたいえてはいないのだろうということは容易に想像出来ました。そのため、今回のインターンシップの中で現地の大学生と話す機会があったのですが、そのような騒乱や惨事のことを聞いてしまっても良いのかということに戸惑いを覚えました。
実際、多くの学生たちから、そうした騒乱で家族のだれかが目の前で死んだり行方知れずになったりという話を聞くことになったのですが、それを聞いて彼らにどういう言葉を掛ければ良いのか、それを聞いて私たち外国人は何を思ってどういう働き掛けをすることが出来るのかなど、私は東ティモールで彼らと接していた時もそして今でもまだ明確な答えを出せずにいます。
ただその悲劇に共感し同情するだけなのか、あるいは多くの犠牲者の死を悼んで2度とこのような悲劇を繰り返さないために何か行動を起こすことが出来るのか、出来るとしたらそれはどういうことなのか……。
恐らくこれは、この地を訪れた人、あるいはこれから観光業の発展などに伴いこの地を訪れるすべての人が自ら体感し、自らの頭で考えていくことだろうと思います。少なくとも、この地に来てこうした問題を考えることは、それを歴史の教科書などに載る1事実として、つまりただの知識・情報としてのみ認識するのではなく、そこから学び取り感じ取ることによって体験・現実として実感することが出来るという意味で重要であると思いました。
そして、先ほども少し触れましたが、現地の大学生との交流プログラムもありました。私たちが訪問したのは、Universidade Nacional de Timor Leste(ポルトガル語で東ティモール国立大学の意)の5学部のうち唯一ディリ市内ではなくHeraという所にキャンパスを持つ理工学部でした。
彼らと自己紹介などをした後、相互のコミュニケーションを図るために日本語とテトゥン語の簡単なあいさつなどをお互いに教え合いました。昼食を食べながらも現地の学生と色々な話をして相互理解は深まりましたが、彼らから家族のだれかがインドネシアとの騒乱で犠牲になっているという話を幾つも聞き、ここでも騒乱の傷跡を強く感じました。
また、この交流プログラムの最後に感謝の気持ちを込めて、それぞれの国の歌を歌いました。東ティモールに行く前に、現地の方は五輪真弓さんの「心の友」という歌をみんな知っていると伺っていたので、前日までインターン生全員で歌の練習をしていきました。そのかいもあって、交流プログラムは大成功だったと思います。また、現地の活動に参加するプログラムも研修の中で行いました。
具体的には、現地で行われているRESPECTという「東ティモールでの元兵士及びコミュニティーのための復興・雇用・安定プログラム」の一環であるUNDPの植林プログラムへの参加とHADADINという現地の女性団体の民芸品制作の現場の視察を行いました。HADADINでまだ小さい女の子が機織りの技術を覚えて民芸品の制作を行っている現場を見て、少しでもこの子たちの力になりたいと思い、私たちは全員そこで売っている民芸品を幾つも購入しました。
現地の活動に参加するプログラムの中でも一際印象に残っているのは、Liquicaという所にあるOISCA(日本の環境NGO)を訪れて、そこで現地の人たちと一緒に農作業をするというものでした。
私たちは3つのグループに分かれてそれぞれ異なる作業をしたのですが、私が担当したのは、肥料を詰める作業と種をまく作業と苗木を植える作業でした。普段都会で生活していてはめったに体験することがないこうした作業が出来たことは自分の中ではとてもうれしかったのですが、やはり現地の土壌の質の悪さなどから育ちにくい作物も多いというお話を伺って複雑な心境でした。
このような活動の締めくくりとして、研修の最終日である26日には、午前中にCareer Consultationを行い、午後に現地での活動を基にプレゼンテーションを行いました。
Career Consultationでは、これまでお世話になった諸機関の中から3人の方々にUNOTILにお越しいただき、それぞれどのような経緯で国連機関に勤めることになったのか、将来国連機関に勤めたいと思っているのなら今のうちからどういう準備をしておいた方が良いかなど、実体験を基に詳しくお話しいただきました。

東ティモールの海岸の風景

色々とお話を伺っていく中で、国際連合(UN)へのアクセスの方法は本当に人それぞれで、自分に合ったやり方、自分がやろうとしていることの方向性から妥当と思われるやり方をすれば良いということが分かりました。
プレゼンテーションでは、私たちは3つのグループに分かれてそれぞれの観点から東ティモールの今後について検討して提案をしました。
現地の大学生との交流会の様子当初の予定では、このプレゼンテーションで①このインターンシッププログラムで何を学んだか②東ティモールの発展には何が必要なのか③もしあなたが東ティモールの首相ならどのようにして東ティモールに平和と進展をもたらすか、について発表することになっていましたが、学生の自由な視点からこの国の将来のための提案をしてほしいというUNOTILからの期待もあって、3つのグループそれぞれが東ティモールの今後の発展のために必要と思われる政策を自分たちなりに考えることになりました。
私たちのグループは、この国の人たちが、UNなどの力によってよりも自分たちの力で生活の改善、更には平和と進展をつかみ取ることを目指した時に、この国だからこそ出来ることとしてエコツーリズムを提案しました。そして、エコツーリズムを検討した時に、歴史と文化とレジャーという3つのカテゴリーでの意義と目標を考えました。
すなわち、歴史では、過去の悲劇を忘れないこととツーリストたちにその歴史を認識してもらうことという観点から、国立図書館や記念館の構築及びそれらの建物や悲劇の傷跡の残る現場を訪れるツアーを企画すること、文化では、この国独自の文化の確立及びそれに伴う国民性の意識の高まりをもたらすことと人材育成によって多くの国民に仕事をもたらすことという観点から、民芸品を国レベルでの産業に発展させることや教育の体制を充実させることなどです。
そして、レジャーでは、環境保全と産業の両立という観点から、陸の自然を生かしたサファリパークや果樹園の体験ツアーや海の自然を生かしたダイビングやウォッチング、そして空の自然を生かしたハンググライダーや展望台とそこへ行くためのロープウエイなどを提案しました。
なお、プレゼンテーションでの東ティモールの今後の政策に関する提案については、UNOTILの職員の方から発表後にある提案がありまして、今回のプレゼンテーションで提案した内容を1枚の紙にまとめて近いうちにマリ・アルカティリ首相に提言してみるということになりました。
大変多忙な1国の首相に私たちの提言に目を通していただけるかどうかは分かりませんが、日本では考えられない「首相への直接の提言」という形での意思表明は、日本にいて英語でのプレゼンテーションを行うことに不安を抱いていたころには予想すらしていなかった大きな成果といえるでしょう。
私が今回の活動を終えて最も強く思ったことは、日本で文献やインターネットなどで調べた情報は現地へ行ってみると必ずしもその状況を適切に伝えるものではなかったり、実際の状況は1つ1つ個別に発生しているのではなく各々が複雑に絡み合ったりしているため、やはり、本当に問題を検討しようと思ったら現場へ赴いてその現状をしっかりと把握しなければいけないということです。
具体例としては、日本でのマラリアに対する警告と現地で働く日本人の職員の方が話す実例との食い違いや、法律文書などに用いられるポルトガル語の問題など、現地に行ってみて分かることが多く、そして問題の解決が1朝1夕には出来ないことも多いということなどが挙げられます。
私は今回の活動で初めて発展途上国に行ったのですが、現状の問題の解決の困難さは想像以上でした。なぜなら宗教、言語、教育、開発と環境などそれぞれ重大な問題が並存し、時には複雑に絡んでくるからです。
今回私たちは、発展途上国の人たちが自分たちの力によって生活を改善し平和をつかみ取るためにはどうすべきか、ということを中心として問題の解決を模索しました。確かにそれは理念としては尊重すべき考え方ですが、現実にはそう簡単に解決は出来ないということは否定出来ません。
実際、東ティモールは2002年に独立を果たしましたが、独立を果たしたから問題は解決したということは決してなく、むしろ独立してからが本当の意味での苦労の始まりであるともいえると思いました。
また、私たちがインターンシップを行ったUNOTILは2006年の5月に活動を終えて撤退してしまいます。しかし、現実にはUNの力なしに自分たちの力だけで東ティモールが国として国際社会の中で生きていけるレベルには達していません。その分UNDPやUNICEFなどの機関に任せることになるのですが、運営面などそれでやっていけるかどうかは定かではありません。今後の東ティモールの発展の動向に注目していきたいと思います。

フィールドワークで訪れた塩田

それと同時に、今回の活動のように理念と現実とをいかに結び付けるか苦心して考えるプロセスは、今後自分がどのような国際問題を扱うにしても重要になってくると思いましたので、今後はより深く国際問題を考えていきたいと思います。
最後に、今回の活動に多大な御支援を頂いたUNOTILを始めとする現地で御活動中の皆様や横田先生、そして私たちとずっと現地で行動を共にしてくださった香川さんに改めて感謝の意を示したいと思います。こうした皆さんのサポートと奨学金という形で御支援いただいた学員の方々のおかげで、このように内容の濃い素晴らしいインターンシップで色々なことを学び取ることが出来ました。本当にどうもありがとうございました。

草のみどり 192号掲載(2006年1月号)

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