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法学部
【活動レポート】藤 俊哉(法律学科4年)

「やる気応援奨学金」リポート(20) アジアにおける信頼関係構築 HPAIRへの参加を通して

HPAIRとは

HPAIRとは、Harvard Project for Asia and International Relationsの略で、ハーバード大学の学生と教授陣の連携の下、学術的なプログラムとアジア太平洋地域に関係する重要なテーマについて議論する場を提供するものである。HPAIRは、今やアジア地域で最大規模の学生会議となった。毎年8月に、世界中から選ばれた約700人もの学生が、重要なテーマに関して討論やディベートをし、また自分でも深く考える機会を求めて集まる。

このように、HPAIRは国の枠を超えた世界規模での共通理解を築くためのフォーラムであり、現在そして未来のリーダーが集まり、意見を交換し合う場となっている。ちなみに2005年は、HPAIR初の東京での開催だった。

会議開始前

インターナショナルナイトの様子

HPAIRの選考は英語で提出したステイトメント、エッセイを基に行われる。昨年の倍率は約6倍だったらしい。HPAIR実行委員会の審査を経て合否が決定する。
会議前日からホテルに滞在。まだ知り合いもいないので、1人で夕食の店を探す。六本木エリアはおしゃれで高級な店が多いのだが、お世辞にも奇麗とはいい難いそば屋へ。でも、私自身はこういう気取らない店の方が好きである。

そこへ外国人の一行が来店する。片言の日本語は出来るようだが、困っている様子だったので、メニューの説明と注文をしてあげる。その後も「えびの天ぷらをかき揚げに変えてくれ」だとか、「そばじゃなく、やはりカレーうどんが良い」など外国人ならではのわがままな変更も伝えてあげる。そして、食事を共にすることとなった。どうやら彼らはHPAIRのスピーカーらしい。“See you tomorrow!”と握手をして別れる。

そして、翌日のオープニングセレモニー。2人目のおじさんに何か見覚えがある。驚いたことに、前日のおじさんはアセアンの事務局長だった。

更に翌日、夕方着替えにホテルの部屋に戻り、テレビを付けてみると、再びそのおじさんが。何と記者クラブで会見をしていて、「日本はアセアンとの関係をより深いものにしなければならない。私は今日本に来ているのだが、何とマンゴーが9ドルで売られている(彼らにすれば相当高い)。貿易の障壁ももっと取り除いていかなければいけない」と熱く語っていた。そんな偉い人とは知らずに、そば屋では歓談させていただいた。

それはHPAIR会議中も同様だった。ハーバード大の教授でも休憩時間中に気軽に私たち学生と話してくれたのだ。そこでは、日本での学生と教授との距離よりずっと近いと感じた。

アカデミック・ワークショップ・セッション

オープニングセレモニーで

ここで、この会議のテーマを紹介しよう。HPAIRには、「安全保障」「信頼」「高等教育」「ヘルスケア」「移民」「アート」の6つの分科会があり、参加者はいずれかの分科会に属する。会期中のワークショップ・セッションは分科会ごとに行われる。

私の属する分科会は「信頼」だったので、以下に挙げるテーマはどれも信頼に関するものとなっている。「日本の市民社会の信頼」「ビジネスの舞台での信頼の拡大」「中国での市民と政府の信頼-人民の主張と闘争、法と政治」「至福の時への回帰-信頼崩壊後にどうするか?」「韓国での市民社会と民主主義」「国際関係での信頼-日本、中国、韓国」「国際関係での信頼-交渉と外交」。

講師には、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者として知られるエズラ・ボーゲル教授を含め、ハーバードが世界に誇るアジア専門家が7人。更に、ハーバード・ビジネススクールやエール・ロースクール、プリンストン大学、ニューヨーク大学から。東京大学からは藤原帰一教授、そして世界銀行の上級報道官も。以上は、私の分科会にかかわった方々の一部なので、HPAIR全体ではもっと多くの講師が参加されていた。

会議初日だが、とても疲れたというのが正直な感想だ。英語での会話はそれほど疲れないのだが、今回はずっとアカデミックな話。ちょっとでも気を抜くとすぐに内容が分からなくなる。ずっと集中して難しい話を聞いていたので、精神的に疲れた。加えて、会議中の連絡や注意事項も当然ながらすべて英語でなされるので、一言も聞き逃すことが出来なかったのだ。翌日は姿が見えなくなった日本人も数人いた。確かにきついが、せっかく選抜されて合格したのだし、参加費も払っているので、そんなに早くあきらめてしまうのはもったいない。私も初日こそうまく行かずに落ち込んだものの、2日目以降は積極的に議論に入っていけただけでなく、楽しむことすら出来た。

スピーカーの話を聞いていて驚いたのは、ハーバードの先生が日本についてとてもよく知っていることだ。私はFLPで副専攻として開発経済学を学んでおり、途上国開発の際のコミュニティーの重要性については認識していた。更に、犯罪学でも同様にコミュニティーが注目されていることも知っていた。

しかし、「世界で最も進んだコミュニティーは日本のムラです」と言われた時ははっとさせられた。かつての日本でコミュニティーが発達していたなんて考えたこともなかったからだ。ひょっとしたら、私の目が外に向き過ぎで、日本についてよく知らないだけで、格別驚くことでもないのかも知れない。それにしても、世界中のあらゆる地域研究がしっかりなされているアメリカはやはりさすがであるといわざるを得ない。

ワークショップ・セッションで1番心に残ったのは、「信頼関係が崩壊した後」の時。社会人を経て現在は学生というデリゲイツも多かったので、自分の経験に基づいて話してくれた。信頼していた仲間に裏切られて、ほかの社員に払えるはずだったボーナスを払えなくなったと涙ながらに話した人もいた。講師が「最初にその人と一緒に働こうと思った時の印象は」と聞くと、「とても有能で、彼女となら何でも出来る、と思ったほど良い印象を持った」と言っていた。

そんな相手をいつまでも許さないことによって関係性が悪いままというのはとてももったいない。許さなければその後に良いことはない。許すことは相手にとってプラスになるだけではないし、自分が負けることでもないのだ。むしろ自分自身にとって心の平和と両者の幸せをもたらす。

私はこれまでそれほど大きな裏切りというものを経験したことはないが、この先の人生でも、許さないという態度をずっと続けるということはしないようにしよう、と思った。特に相手がその出来事についてすまなかったと感じているような場合には絶対に許そう、と心に決めた。

南京大学の学生2人と一緒に

最終日にはアジアの歴史問題が話し合われた。南京大学の学生からは「この会議の前に靖国神社に行ってきたのだけれど、そこでは『南京大虐殺の後、南京の人々は幸せに暮らしました』という記述があったが、日本人は本当にそう思っているのか」とか、「前々から聞きたいと思っていたのだが、日本人は歴史教科書について本当はどう思っているんだい」といったたぐいの質問が日本人に対して次々となされた。

数日間一緒に過ごして、それなりに人間関係を築けた後だったので、必要以上に感情的になることはなかったが、なかなか厳しい時間だった。このような国際的な場所に出るたびに思う。「日本人は、もっと歴史を学ばなくてはいけない」と。

会議以外の時間

HPAIRではワークショップ・セッション以外でも、各国からのデリゲイツと過ごす時間がとても重要なものだった。中でもルームメートの存在は大きかった。一言でいうと、私のルームメートはめちゃくちゃナイスガイだったのだ。

ほかの日本人デリゲイツと話したところによると、「ルームメートとは思ってたより話さないよね」という声も多かったのだが、私たちはしゃべりまくった。会議は夕方に終わり、その後は御飯を食べに行ったり、飲みに行ったり、カラオケに行ったり、クラブに行ったり、翌日のプレゼン準備をしたりして、部屋に戻るのは深夜になるのだが、私たちは毎晩2時間くらいは話していた。ルームメートのキャロリスはリトアニア出身。英語の習得にも苦労したようだ。でも今ではネイティブ同様完璧に話している。新聞は好きだから4紙くらいはチェックするという。雑誌もよく読む、と。私が「新聞は読むけど、雑誌は新聞に比べて硬いし難しいからあまり読まないなぁ」と言うと、「練習だよ」とすてきな笑顔で答えられてしまった。やられた。確かにそのとおり。実際に自分でも努力した人の言葉だから素直に聞ける。

色々話す中で、「ハーバードはすべてが最高だよ」と何度も聞いた。「シュンヤもぜひ来ると良い」と。今までは行けたら良いなと漠然とは思っていたが、遠い目標だった。しかし今回の会議のおかげで、身近で具体的な目標になった。

参加者たち

分科会での講師のレクチャー風景

HPAIRは主催のハーバードはもちろん、プリンストン、エール、コーネル、デューク、スタンフォード、UCバークリー、ケンブリッジ、LSE、清華、シンガポール国立、ソウル国立……といった世界中の一流大学の学生たちの集まりだった。

彼らの言動は、常に世界を見据えたものだった。「舞台は世界。自分は近い将来当然グローバルに活躍する」という考えが根底にあるのだ。日本ではそんな集団の中に身を置いたことがなかったので、とても新鮮だったし、わくわくした。今でもあの興奮は忘れられない。

そして、強く印象に残ったのは中国人の優秀さである。あれだけの人口なので、出来る人間の数もけた違いなのだ。そして、当然のようにアメリカやヨーロッパを舞台に活躍している。一緒にカラオケに行った時のこと。彼らは中国語を話し、英語で議論が出来、何と日本の歌まで歌えるのだ。恐るべし。韓国のトップ層も同様だった。

大学レベルでは日本は完全に中国、韓国に負けている。本当に危機的状況だと思った。そして、私自身もっともっと頑張らなくては、と心から思った。

今回のHPAIRでは、生まれて初めてドレスコードありのパーティーというものに参加した。欧米の人は、いや、中国や韓国の人も、すごく奇麗に着飾ってくる。これも良い経験となった。

それにしてもHPAIRはスケールが大きかった。一昨年のスポンサーはノキア、CNN、ダイムラークライスラーやフィリップス。昨年は大和証券、ダイムラークライスラー、JAL、三菱商事、森ビルなど。そして、とにかく豪華に行うというのがHPAIR流。最終日に行われるパーティー会場は、一昨年は上海のシャングリラホテルで、昨年は東京全日空ホテルだった。

会議後

会議終了後には清華大学の学生やスタンフォード大学に行っている中国人の学生と新宿を歩いたり、都庁に上ったり、築地にすしを食べに行ったりした。観光のみならず、日中関係、歴史についても深い話が出来た。お互いが思っていることを率直にいい合えたのだ。

最後には、「清華大学には14,000人の学生がいるが、この会議には14人しか参加していない。今回の滞在中、日本人にはとても親切にしてもらった。礼儀正しくて、教育のある人々だよね。HPAIRの参加者で日本に対して悪いイメージを持った者はだれもいない。大学に戻ったら、クラスメートに日本の良いところをたくさん伝えたい。僕たちの手で未来を築いていこう」と言ってくれた。

オーストラリアの学生とは靖国神社、原宿に行った。彼女のおじいさんは日本兵と戦って亡くなったらしい。私の祖父は三菱造船に勤めていて、設計をしていた。人間魚雷の設計にも携わったらしい。靖国には人間魚雷が展示してあるのだ。私はそこに行くたびに何ともいえない気持ちになる。逆に彼女の方に「シュンヤ大丈夫?」と何度も心配されたほどだった。でも、「私たちの祖父の世代では戦争があったけど、私たちは友達だよね」と言ってくれた。

恐らくこの文章でその時のことを伝えるのはとても難しいと思うが、お互いにしっかりと歴史について考え、分かり合えたと感じることが出来る時間だった。

評価と今後に向けて

ルームメイトのキャロリスと共に

今回のHPAIRへの参加によって、とても多くの刺激を受けることが出来た。と同時に、自分の勉強不足も痛感した。そのおかげで、会議後は英語で受けているアメリカ法の授業に対しても、以前にも増して身が入っている。エールのロースクールを出て、アメリカの弁護士資格を持つ、中大ロースクールの教授であるダン・ローゼン先生が担当している。

アメリカで出版されているテキストを使い、1回分の予習は30頁ほど、その中に4、5ケースの連邦最高裁判例が収録されている。将来のロースクール留学の準備にと思って受講しているのだが、始めのころは法律の専門用語が全く分からないこともあり、予習が朝方まで掛かっていた。が、今では慣れてきたので、以前よりはずっと容易に読めるようになった。

国際会議などでは何か発言するにしても自分の専門に基づいたものでなければ聞き入れてはもらえない。もっと精進しなくてはいけない。

国際貢献の出来る法律家になることが私の目標である。法科大学院への進学を視野に入れ、大学での4年間は国際的視野と語学力を磨くよう努めてきた。FLPでは開発経済学を学び、そのFLPでの活動の一環としてブータンで現地調査を行い、その結果を論文にまとめ、ゼミナール連合主催のプレゼンテーション大会で参加43チーム中優勝することが出来た。

学外では、国際学生シンポジウムで教育について一カ月ほど研究した後、政策提言を行ったり、ジャパンコリア学生交流シンポジウムに参加したり、社会人の英語サークルに所属したりしている。そのようなさまざまな活動のいわば総仕上げとしてこの学生会議に参加した。今回の会議の経験が、人と人、国家と国家との信頼関係構築に役立ち、より良いコミュニケーションに生かしていくことが出来ればと念願している。

4月からは、大阪大学高等司法研究科(法科大学院)で学ぶことになっている。夢に向かって頑張ろうと思っている。

草のみどり 194号掲載(2006年3月号)

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