経済学部

公開授業『若き日のNGO職員の肖像 ~国際協力分野のキャリアについて考える~』を行いました

2017年01月14日

特定非営利活動法人ブリッジ エーシア ジャパン 新石 正治氏

 経済学部の「国際公共政策」(担当:佐々木創准教授)の授業の一環で、特定非営利活動法人ブリッジ エーシア ジャパン(BAJ)(※1)事務局長補佐 新石 正治氏をお招きし、12月15日(木)に公開授業を行いました。
 講義の冒頭、日本において国際協力分野で活動する人は25,740人、そのうちNGO(Non-Governmental Organization)正規職員は2,400人程度。その中で6割が有給職員でありその年収も高くはない。にもかかわらず、必要なスキルとして、語学力、専門性、コミュニケーション力、心構えなど盛り沢山であるが、「やりたい」という気概が最も重要であると強調していた。
 「関わらない理由など、いくらでもある。でも、そこに困っている人達が居て、自分たちが状況の改善に役立てるなら行動するしかない」これは、BAJ立ち上げメンバーだった講演者の父の言葉。新石氏は民間貿易会社に勤務後、親子2代でBAJに関わっている。
 1993年に国際協力の任意団体として発足したBAJは、ベトナムやミャンマーの貧困地域の生活改善事業を進めている。新石氏も2013年から2年間、ミャンマー中央乾燥地域のマグウェ事務所駐在員として生活用水の供給事業を担当。
 同活動の柱は「深井戸建設」「既存井戸の修繕」「村の人達へのトレーニング」の3つである。深井戸から水をポンプで汲み上げるために燃料や電気、メンテナンスが不可欠となる。したがって、村人による運営管理が重要となり、井戸の掘削から村人に手伝ってもらいオーナーシップを醸成することが肝要であると報告した。
 15年にも渡るミャンマーでの生活用水の供給事業で、新規深井戸建設125本、既存井戸の修繕は600本以上、裨益者数およそ40万人。BAJのプロジェクトに関わった人が地域のキーパーソンになったり、地質調査専門家やローカルメンテナンスチームとして育ったりしている。
 他方で、ミャンマーの民政移管後、急速に発展しており、水や電気といった基礎的なインフラがない中で、タブレットを使用するなどアンバランスな発展も課題であると最後に指摘していた。
 講演後の質疑応答においては「日本で寄付が根付くためには?」という質問に対し、世界有数の寄付文化があるミャンマーと日本の違いを触れ、BAJでは古着のリサイクル「フルクル」(※2)やBAJカフェなど気軽に参加しやすいイベントを実施し、NGOの活動に興味を持ってらうことが寄付の契機になるのではないか、と回答していた。
 2015年の国連総会で、2016年から2030年までの新たな国際開発目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」が採択された。SDGs実現には各国政府、企業、市民社会組織だけでなく、市民一人ひとりの行動を変えることによって地球社会全体を「変革 (Transformation)」することが必要とされ、NGO活動が国際機関・援助機関の国際協力を補完・協働する上で不可欠となっている。

(参考)