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商学部
ロシア語

Здравствуйте! ズトラーストヴィチェ! こんにちは!
楽しく学ぶロシア語

どこで話されている言葉?

ロシア語が使われている国はロシアだけではありません。ロシアは20 数年前まで、ソビエトという巨大な連邦国家の中心でした。ソビエト連邦には、ロシアの他にベラルーシやウクライナ、北のバルト3 国(ラトビア、エストニア、リトアニア)、中央アジアの5 か国(カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、キルギス)、さらに南のグルジア、アゼルバイジャン、モルドバ、アルメニアが含まれていました。これらの国々におけるロシア語の現在の立場や通用度は、歴史的な経緯や政治的理由から実にさまざまで、一概には言えませんが、今でも多数のロシア人が居住し、ロシア語で生活している地域が少なくありません。ベラルーシやカザフスタンなどのように、自国の民族語とともに、ロシア語を公用語としている国もあります。正確な言語人口は把握しにくいのですが、ロシア連邦(ここにも民族的にはロシア人でなくてもロシア語を使用している人々がたくさんいます)の人口1 億4000 万余りの他に、主要言語あるいは第2、第3 言語としてロシア語を用いている人の数は相当数にのぼると言えるでしょう。

日本語・英語とはどんな関係?

もともとロシア語は、インド・ヨーロッパ語派の中でも有力な派であるスラブ語派という大きなグループの中のひとつで、ベラルーシ語やウクライナ語とはとくに近い関係にあります。ポーランド語やチェコ語などもスラブ語派に属しますが、ポーランドやチェコでは英語と同じラテン文字が使われています。ローマ字を見慣れた私たちの目にはロシア文字は少々変わっていて、絵文字のように見えるものもあります(実際、日本でロシア文字をそんなふうに使っているのを見かけたことさえあります)。同じスラブ語なのにどうして文字が違うのでしょう?そこには歴史的なキリスト教伝播の経緯が深く関わっています。ロシア語の文字はギリシア正教の学僧キュリロス(ロシア語ではキリール)がスラブ人の間に東方教会のキリスト教を普及させるために、スラブ人の発音に合わせて考案した文字がもとになっているのです。これがのちにキリール文字として、ロシアをはじめ正教を受け入れた国々で発達をとげました。

一方スラブ語派の国であっても西方教会のキリスト教を受け入れた国々ではラテン文字が用いられることとなり、両者は別の文化圏に属する、時として対立する関係になったこともありました。キリール文字については次の項で詳しく解説します。じつは、ラテン文字もギリシア文字がもとになっていますので、ロシア語には英語と共通のラテン文字も入っています。ロシア語と英語はインド・ヨーロッパ語派に属する点はいっしょですが、キリール文字を用いるロシア語とはかなり遠い関係にあります。

文法や単語にも種々違いがあります。例えば、大学、学生、学校などは英語と共通の単語なのですが、university=университет(ウニヴェルシチェート)、student=студент(ストゥジェーント)、school=школа(シュコーラ)とロシア風に変貌し、別の単語のように感じられるかもしれません。ラジオやコンピューター、コーヒー、テニスのような新しい外来語はрадио(ラーヂオ)、компьютер(カムピユーテル)、кофе(コーフェ)、теннис(テーニス)となり、これらは英語のみならず日本語でもすぐわかりますね。

さて、そんなロシア語ですが、実は私たちの周りにもロシア語由来の言葉が結構あります。
例えば、「イクラ」はロシア語で「魚卵」を意味するикра(イクラー)から来ています。また、女性が髪に着ける「カチューシャ(катюша)」もロシア語が語源で、元々は「エカチェリーナ」という女性の名前の愛称です。この他にも、「寄付」を意味する「カンパ」や「秘密基地」を意味する「アジト」、「知識階級」を意味する「インテリ」などがあります。

音と文字

ロシア語のアルファベットには33 個の文字があります。その内2 個はそれ自体は音を表さない単なる記号ですので、音は31 ということになります。そのうち母音を表す文字は次の10個です。

а(ア),ы(ウイ),у(ウ),э(エ),о(オ);я(ヤ),и(イ),ю(ユ),е(イエ),ё(ヨ)

カタカナで記した音を見てください。8 個の母音は日本語のア、イ、ウ、エ、オ、ヤ、ユ、ヨとよく似ています。実際少し強めに発音するだけでok です。ы(ウイ)とе(イエ)だけはあらたに覚える必要があります。さらに子音は21 個、そのうち12 個は6 種類のペアーのような関係です。

б(ブ),в(ヴ),г(グ),д(ドゥ),ж(ジュ),з(ズ)
п(プ),ф(フ),к(ク),т(トゥ),ш(シュ),с(ス)

詳しくは授業で解説しますが、これらは口の形が同じで、上の音は有声音(濁音)、下の音は無声音といって空気が抜けている音です。残りの9 個の子音は次の文字と音です。

л(ル),м(ム),н(ヌ),й(イ),р(ル),х(フ),ц(ツ),ч(チ),щ(シィ)

すぐ前の項でもお話ししたようにスラブ人の発音に文字をあてていったわけですから、これらの文字はロシア語の音を表すのにとても合理的にできています。例えば先ほども例に挙げた英語のschool はつづりを覚えなければ読めませんが、ロシア語ではшколаとなり、シュ+コ+ラと日本語のローマ字の要領で読んでいくことができます(日本語では子音だけの音は「ん」くらいですが、ロシア語には多々あります。子音の読み方は上記のままです)。また母音を含む単語には必ず一か所アクセントがありますので、そこをやや伸ばして発音します。地図はкарта=カールタ、本はкнига=クニーガ、鉛筆ならкарандаш=カランダーシュ、という具合です。ニャ、ニュ、ニョのような音も2文字で書くことができます。няня=ニャーニャ(保育士)、мяч=ミャーチ(ボール)、Таня=ターニャ(女性の名)というように。アルファベットの数こそ33 個と英語より多めですが、31 種類の音とちょっとした記号の使い方、それにいくつかの音の変異さえ覚えれば読むことができます。はじめて見るロシア文字に「難しそう」と感じる人も多いようですが、誰でもわりあいすぐに拾い読みができるようになるので、見かけほど単語を読むことは難しくありません。ただ、РやНのように英語と共通の文字を使いながら、ロシア語ではそれぞれ、ル、ンと発音しなければならないところが少しややこしい点です。とくにРはルルル~と舌を震わせる、いわゆる巻き舌です。中にははじめからロシア人以上に上手な人もいますが、不得意な人も練習でかなり出せるようになります。ロシア人の子供だって31 音中これが1番難しいとされ、一生懸命練習して習得しているのですから、すぐにできなくてもあきらめる必要はまったくありません。

ちなみにモンゴルでは表記のために文字だけロシア文字を使用しています。伝統的なモンゴル固有の文字がとても難しいので、友好国であったロシアのアルファベットを借用したのですね。

日本人にとって学びやすい点/学びにくい点

すでに見てきたように、文字の形が変わっているわりには、ローマ字読みに慣れている私たち日本人には、一字一音対応が徹底しているので読みやすいことがあげられるでしょう。ただし、アクセントの位置は単語によってばらばらなので、単語を覚えるときは意味を確認するだけではなく、どこにアクセントがあるかチェックする必要があります。そのためには黙読するのではなくて、かならず声に出してみる習慣をつけましょう。

それからロシア語には名詞一語文というのがあって、「春です」はВесна.(ヴェスナー=春)と一語でりっぱな文になります。「寒いです」もХолодно.(ホーラドゥナ=寒い)とやはり一語で表現します(*アクセントのない0はアーと発音します)。英語なら It's cold. となるところですが、自然現象などには主語を入れない言い方をするのがふつうなのです。こんなところも日本語の感覚からすると親近感がわくような気がしませんか。

またロシアはあれほど広大な国であるにもかかわらず、方言の差がほとんどありません。

大学で勉強するのは標準語的位置にあるモスクワの中部方言ですが、北部とも南部とも大きな違いはないのです。

大変な点は語尾変化を身に付けなければならないということでしょう。名詞には男性、女 性、中性と3 つの性の区別があり、さらに単数、複数の区別がありますが、実はもうひとつ、格変化というのがあります。

(1a)Я(ヤー) студент(ストゥジェーントゥ).(я=私は/студент=学生です)
(1b)Я(ヤー) знаю(ズナーユ) студента(ストゥジェーンタ).(Я=私は/знаю=知っている/студента=学生を)

「私はその学生を知っている」と言うときは(1b)のように学生という単語の語尾にひとつだけa をつけて「学生を」と表現します。これが格変化です。ちょうど日本語で「を」という助詞をくっつけるのと似ています。

ロシア語豆知識

日本ではロシア人の名前というと「イワン」が有名ですが、実際ロシアにはイワンがたくさんいます。歴史上もイワン大帝とかイワン雷帝などが有名ですね。ロシア正教が国教であった革命前まで(あるいはそれ以後も)、ロシア人は子供が生まれると教会の聖者の名を記した暦からわが子の名前をつけていました。教会暦には一日に数名の男女の聖人の名が記されているのですが、イワン聖人は170 回も登場するので、イワンがふえてしまったのです。ロシア人の名前にあまりバリエーションがないのもこのためです。

ロシアの小説を読んでいて、長い名前が出てきたり、呼び方が変わってしまったりしてとまどったことはありませんか。ドストエフスキーの代表作『カラマーゾフの兄弟』にはドミートリー、イワン、アレクセイという3 人の兄弟が出てきますが、親しい人はドミートリーをミーチャ、アレクセイはアリョーシャというように愛称で呼ぶのが普通です。一方、あらたまった場合や敬愛をこめる場合は、イワン・フョードロビッチのように呼びかけます。フョードロビッチは苗字ではなくて父親フョードルの名前からきた父称というもので名前の後ろにつけられます。つまりロシア人の正式な名前は、名前+父称+苗字(例=イワン・フョードロビッチ・カラマーゾフ)という構成になっているのです。

苗字は名前に比べるととても種類が豊富です。スミルノフ、イワノフ、クズネツォフなど古くからある伝統的な名前も存在する一方、新しく作られたような苗字もたくさんあります。文学はそういう苗字の宝庫で、作家が発明した姓であふれています。すぐ上で取り上げたカラマーゾフも「黒+塗る」という意味のロシア語からドストエフスキーが考え出した、とする説が有力です。

最近のトピック

名前についてもう少し。今述べたようにロシアには伝統的な名前があり、現在でもその伝統が生きているようです。2012 年のある統計によると、この年つけられた名前のうち一番多かったのは、女の子ではアナスタシーア(全体の9.5%)、以下、エレーナ、オーリガ、エカチェリーナと続きます。男の子はアレクサンドル(10.1%)、セルゲイ、ドミートリーの順でした。

でもこうした命名はもちろん法律で決まっているわけではありません。20 世紀初頭にはロシア革命の指導者レーニンにちなんでヴラドレン(レーニンの名前ヴラジミールと苗字レーニンから合成)、ニーレニ(レーニンのもじり)といった名がはやったそうです。さらに「ヴラジミール・イリイッチ(レーニンの父称)は祖国を愛する」という文を略してビリュールという名前まで作られたというから驚きです。

1928 年にはモスクワで17 か国7 千人以上が参加して大スポーツ大会が開かれましたが、その大会名であるスパルタキアーダと名付けられた少女もいます。彼女はこの名を生涯誇りにしていたようですが、インテルナツィオナール(=インターナショナル)と名付けられてしまった彼女の弟は後年、改名を願い出たそうです。