広報・広聴活動

赤ちゃんは金色が好き!-赤ちゃんの金色選好を世界で初めて証明-

2013年06月27日

 子ども達は、光るものが好きなようです。金色や銀色の折り紙が好きです。男子・女子向けの玩具には、金属の光沢感をもつものやキラキラしたラメ付きのものなどが見られます。いつからこうした金色の存在に気づいて好むようになるのでしょう?

 「金色」は、「黄色」に「光沢感」を付加することによって作られます。実験では“選好が同じ”緑と黄色を並べて見せ、さらにそれぞれの色に光沢感を付けて見せました。つまり、黄色に光沢感を付けて金色になったときの選好を調べたのです。

 実験の結果から、1)生後7-8ヶ月の赤ちゃんは金色への好みを示したこと、2)7-8ヶ月児は大人と同じように「金色」を知覚する可能性が示されました。

 この研究は、中央大学文学部・中央大学研究開発機構(山口真美教授、楊嘉楽機構助教)、日本女子大学人間社会学部(金沢創教授)の共同研究により実施され、PLOS ONE 誌に6月27日に掲載されました。

 

<概要>

私たちの研究グループは、これまで選好注視法※1 を用いて、生後5-8 ヶ月の乳児の「質感」の知覚について調べてきました(Tsuruhara et al., 2009; Tsuruhara et al., 2010)。これら一連の研究から、さまざまな見かけ上の手掛かりから三次元の立体を表象できるのが生後7ヶ月頃、つまり質感の知覚はこの頃に発達する可能性があることが示されました。また本研究の筆頭著者は、「光沢感」への選好が生後7ヶ月に発現することを示しました(Yang etal., 2011)。

これらの研究を踏まえ、外界にある様々な質感の中でも成人にとって最も重要な「金色」への選好と認識がいつ頃発達するのかについて報告します。金色は、黄色に光沢感を付加することによって作られます。光沢感を加えて色の名前が変わるのは、金色と銀色だけです。金色以外の色、たとえば赤色や緑色に光沢感を加えても同じ色のままです。

本実験では、同程度の選好を持つ(Zemach & Teller,2007)黄色と緑色を用い、黄色と緑色に光沢感を付けたときの赤ちゃんの選好の変化について選好注視法を用いて検討しました。実験の参加者は5-8ヶ月児24名です。まず、黄色と緑色を対にして提示します。乳児は黄色と緑色に対して同程度の選好を示すことを確認しました。そこで、この黄色と緑色に光沢感を付加することによって、金色とメタリックの緑色を作成し、対で提示しました。その結果、生後7-8ヶ月児だけが、金色を長く注視し選好することがわかりました。

実験結果をまとめると、

(1) 黄色と緑色を対で提示すると、5-8ヶ月児は黄色と緑色に対して同程度に注視しました。

(2) 黄色と緑色に光沢感を加えた、金色とメタリックの緑色を対で提示すると、7-8ヶ月児だけが金色をより長く注視しました。

 

7-8ヶ月児は黄色と比べ金色に対する選好が強いことから、成人と同じように、金色と黄色を別の色として知覚しすることが示されました。つまり、生後7ヶ月以降の乳児は、金色を認識できることが考えられます。今回の研究は、赤ちゃんの金色選好と金色の知覚を明らかにした世界初の研究となります。

 

※1選好注視法:特定の図形パタンを好んで長く見るという乳児の性質を利用し、同時に見せた対刺激への注視時間を比較することによって乳児の認識能力を検討する手法。

 

【連絡先】

<研究に関すること>

楊嘉楽(ヨウ カラク) 機構助教

中央大学研究開発機構

TEL /FAX: 042-674-3843

E-mail: ning.k2☆gmail.com

山口 真美 (ヤマグチ マサミ) 教授

中央大学文学部・放送大学

TEL /FAX: 042-674-3843

E-mail: ymasa☆tamacc.chuo-u.ac.jp

金沢 創 (カナザワ ソウ) 教授

日本女子大学人間社会学部・放送大学

TEL/FAX: 044-952-6900

E-mail: kanazawas☆fc.jwu.ac.jp

<広報に関すること>

中央大学 研究支援室

加藤 裕幹 (カトウ ユウキ)

TEL: 03-3817-1603、FAX: 03-3817-1677

E-mail: k-shien☆tamajs.chuo-u.ac.jp

 

(注:E-mailの☆は@に変更して送信してください。)